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アイリスオーヤマ社長「同族経営でも会社は社員が最優先」

【#01】大山健太郎インタビュー
**社員を最優先
 19歳で父から受け継いだ従業員5人の町工場は、グループ売上高4200億円、国内外に約1万2000人の従業員を抱える企業グループに成長した。半世紀近くにわたり、貫いてきた理念は「会社の目的は永遠に存続すること。そしていかなる時代環境においても利益の出せる仕組みを確立すること」―。この軸は時代が変わっても揺らぐことはない。

 企業統治のあり方をめぐっては、さまざまな手法や議論がある。最近では株主との対話重視や社外取締役の積極活用が話題になるが、私はこれらと一線を画し、自ら考える理想の企業像を追求してきた。株式を公開しないのも、短期的な投資判断に左右されたくないからだ。「会社は誰のものか」という古くて新しい問いに対しては、自信を持ってこう答える。「形の上では資本家のものであったとしても、社員を最優先に考えている」。

明確な理念


 日本企業は、日本型経営の良さを捨てるべきではないというのが持論だ。企業統治も欧米の「借り物」でなく、日本の組織風土になじんだ無理のない仕組みの方が経営者も社員も納得できるのではなかろうか。

 こうした理念の背景にはオイルショック直後の苦い経験がある。プラスチック製品の値崩れで経営危機に陥り家族同然の仲間を解雇せざるを得なかった。あのような思いを二度とさせてはならない。だからこそ好不況に左右されない強い収益基盤の構築と、これを支える独自の経営手法を模索し続けてきた。

 非公開の同族経営に否定的な見方があるのは、閉ざされた世界で物事が決められる印象が強いからだろう。しかし、明確な経営理念を持ち、意思決定や人事評価などの面でオープンな仕組みが確立していれば、市場の変化に迅速に対応した目指す経営が実現できる。

22年に1兆円


 中長期的な目標を対外的に公表してこなかった当社だが、2022年に売上高1兆円を目指す事業構想を初めて打ち出したのは、世代交代を機に社員が一丸となって次代を切り開く「旗印」にしてほしいとの思いがある。私が社長を続けるのなら、あえて公表しなかっただろう。

 この7月。社長のバトンを長男・晃弘に託す。今後は新たな視点で社会に貢献したいと考えている。日本が直面する課題を生活者目線で解決するために、私自身の経験と東日本大震災の教訓を生かしていきたい。
日刊工業新聞2018年3月16日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
アイリスオーヤマを興して初めて、社長のバトンが長男に渡ります。今後どのように発展してゆくのでしょうか。

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