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北陸新幹線「親不知」、もう一つの開通

携帯電話が通じるように
北陸新幹線「親不知」、もう一つの開通

北陸新幹線

 新潟と富山の県境近くの海岸「親不知」は古代の北陸道である越路(こしじ)の最大の難所として知られる。飛騨山脈の北端が海にまっすぐ落ち、断崖を波が洗う。人々は越後と越中の国境を越えるため、この崖と波のはざまを通った。

 日本海の荒波が寄せる狭い岸を駆け抜けるのはまさに命がけ。壇ノ浦の合戦後に平清盛の弟、頼盛の妻が越後に逃れた夫を追い、ここで愛児を波にさらわれたとの伝承がある。彼女が嘆き詠んだという歌も残る。「親知らず 子はこの浦の波枕 越路の磯の泡と消え行く」。

 今は国道8号線をはじめ旧北陸本線、日本初の海上高架橋による高速道、北陸新幹線の「新親不知トンネル」が走る。海に迫る山肌に道や線路がうがたれた眺望に、技術の力で天険を開き、交流を広げてきた先人の労苦と英知が映る。

 今月、残された親不知の“不通”がひとつ解消した。新親不知トンネル内の富山側で携帯電話が通じるようになったのだ。内部に複数のアンテナを張る工事を実施。来年度中に新潟側も開通するという。

 古来、往来を阻み、人々を波の泡に変えた冷厳な姿をあらためて思い起こしてみる。それを乗り越えていく技術の力の凄味とありがたみが、より強く感じられた。
日刊工業新聞2018年3月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
地元が石川県なので子どもの頃、父親のクルマで親不知を通ったことがある。よくまぁ、こんなところを運転できるものだと思ったことを思い出す。冬の日本海の荒波を見みると気分は暗くなるし、海岸沿いの高速道路でも横風などで不安になる。便利になるのはいいのだが、一方で情緒がなくなっていくのも少し寂しい。

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