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微細な亀裂を自動計測、金属疲労の検証技術に

物材機構が開発、作業が大幅に軽減
微細な亀裂を自動計測、金属疲労の検証技術に

写真右側の二つの円柱に挟まれているのが金属試験片(自動計測システム=物材機構提供)

 物質・材料研究機構(物材機構)構造材料研究拠点の西川嗣彬研究員と古谷佳之主席研究員らは、金属疲労で発生する微細な亀裂を自動計測する技術を開発した。作業者が1週間付きっきりだった計測実験が、無人で一晩で完了する。作業が大幅に軽減できるほか、データの大量収集が簡易化できるためデータベースの構築につながる。

 金属疲労試験は引っ張りや曲げなどの力を金属試験片に繰り返し与えて、亀裂の成長などを観察する。今回、疲労試験中の試験片を光学顕微鏡で自動計測するシステムを開発した。試験片の全面を高倍率で撮影して、画像をつなぎ合わせる。

 試験片に微小な亀裂が入り、さらに力が加わると、亀裂が開閉するように変形し始める。この変化を画像処理で検知する。0・5マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の変形を計測できた。

 亀裂が発生する引っ張り回数や微小亀裂の成長速度、試験片の変形と微小亀裂の分布などを自動計測できる。金属疲労は1000万回程度引っ張りを繰り返すため、亀裂を目で観察するのは作業者の負担が大きくデータを集めにくかった。

 計測システムでは光学顕微鏡と試験片を50ミリメートルほど離して撮影できるため試験片を加熱して加速試験が可能。従来は対物レンズを1ミリメートル以内に近づける必要があり、全面計測や加熱が難しかった。
日刊工業新聞2018年2月15日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
鉄道車両の保守現場では亀裂が10ミリメートル以上に伸展しないと、打音検査しても発見が難しいとされている。微小亀裂が発生して成長し、部品が割れるまでの過程を詳細に検証できると、製品の信頼性向上につながる。

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