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「有料動画配信サービスは協業相手」(ジュピターテレコム社長)

ジュピターテレコム・井村公彦社長に聞く次世代放送の焦点
 ―12月に民放やNHKによる4K/8K放送が始まります。
 「スポーツのライブ中継などを高精細な映像で届けられる点は魅力だ。我々としては4K/8K放送に対応した放送受信装置(STB)などが12月に間に合うように準備を着実に進める」

 ―「ネットフリックス」などの有料動画配信サービスが台頭していますが、放送サービスへの影響は。
 「現時点で影響は感じていないが、米国では(ケーブルテレビサービスの顧客を動画配信サービスが奪う)波が起きており、日本でも同様の競合は起きると予想している。ただ、我々は協業相手になると認識している。具体的には次世代のSTBに多様な有料動画配信サービスが視聴できる機能を導入し、顧客が自宅のテレビで楽しめる環境を提供する」

 ―次世代STBの開発状況について教えてください。
 「2019年夏をめどに投入する。視聴履歴に基づくコンテンツの推薦機能や音声認識機能などを新たに導入する予定だ。また、電子商取引(EC)サイトなどと連携し、テレビでECを利用できる機能なども導入の可能性はある。STBが自宅にあればテレビやインターネットの多様なサービスなどが利用できる環境を整えることで、STBの価値が高まる」

 ―親会社のKDDIがホームIoT(モノのインターネット)サービスを始めましたが、ジュピターテレコム(JCOM)としての取り組みは。
 「ホームIoTサービスに関心がある。我々が持つ訪問サポート体制が生かせる分野だと思う。相談窓口を設けて機器のセットアップなどを支援するサービスなどを検討している」

 ―格安スマートフォン事業「JCOMモバイル」の現状をどうみていますか。
 「既存の顧客に他のサービスとのセット利用を提案しており、受け入れられている。JCOMモバイルの加入者は、その他の顧客に比べて解約率が断然低くなる。(今後の顧客拡大に向けて)端末は人気のiPhone(アイフォーン)の認定中古品(CPO)を継続的に提供できる体制を整える。サービス面では放送事業などの資産を生かす形で強化したい」

 ―地域密着を一層強化しています。
 「我々は独自チャンネルなどを通して防災などの重要な地域情報を提供する社会的使命のある企業だと考えている。一方で主力の固定通信は携帯大手などと競合しており、全国区の企業と対抗する際の強みは地域に根ざしている点だ。このため地域密着は事業面でも重要になる。17年に配信を始めた地域情報アプリ『ど・ろーかる』の強化など地域性をもっと打ち出していきたい」
(聞き手=葭本隆太)
日刊工業新聞2018年2月7日
葭本隆太
葭本隆太 Yoshimoto Ryuta デジタルメディア局DX編集部 ニュースイッチ編集長
主力のケーブルテレビサービスの市場は成熟し、すでに低成長の時代だ。一方でSTBは外部の多様なインターネットサービスなどと連携することで利用価値を高められる。井村社長は次世代STBの投入をきっかけに連携を広げる考えを示している。そのための体制作りは今後の成長のカギを握りそうだ。

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