来年度の科技関連予算、官の投資拡大進まず
研究開発589億円増も目標届かず
政府が第5期科学技術基本計画に掲げた研究開発投資の増額目標が実現困難な状況にある。2018年度の科学技術関係予算は3兆8396億円で、17年度当初予算に比べて2504億円増加した。しかし、増分には既存事業を新技術の実用化推進予算に付け替える「イノベーション転換」分を1915億円含む。これを差し引けば実質的な増分は589億円に留まる。第5期計画で官民をあげた投資目標を掲げたものの、官の投資拡大が思うように進んでいない。
「麻生太郎財務相にかなりしつこく協力要請を重ねてきた結果。一定の評価はできる」と松山政司科学技術政策担当相は説明する。この16年間の増分は297億円で、平均すると年間20億円も増えていない。このため18年度の589億円増は一定の成果といえる。
松山科技相は、「目に見えて増額。来年度以降さらに転換していく。初年度としては良い数字ではないか」と評価する。
第5期計画は16年1月に閣議決定され、官民合わせて対国内総生産(GDP)比4%以上の研究開発投資を目標に掲げた。政府投資分としては対GDP比1%、20年度までに9000億円増を目指している。
ただ16―17年度は大きな増額は実現せず、18―20年度の単年度目標が3000億円増に積み上がっていた。結果として一定の成果が出た格好だ。この589億円の内、45%の266億円を経済産業省が占めた。
イノベ転換は1915億円の内、国土交通省が1000億円、農林水産省は422億円を確保した。公共事業に新技術導入を促す施策が中心だ。
一方で課題は実証で得られた知見を体系立てて、研究開発に役に立つ形でフィードバックできるかどうかにある。例えば公共工事では施工結果だけでなく、運用性や改良点を要素技術ごとに分けて示す必要がある。プロジェクトの管理主体に、より高度な研究開発管理能力が求められる。
また各省の投資配分機関が扱う予算が増えるため、長期的には体制整備が必要になる。
研究開発投資拡大に向け、歩調をそろえることを求められてきた産業界にとっては、政府投資が計画通りに伸びない中、公共事業などが新技術の実証事業に転換された形になったといえる。
内閣府の生川浩史官房審議官は、「転換は科学技術イノベーションにとってプラスにこそなれ、マイナスには絶対ならない」と断言。その上で「できることはなんでもやりたい」と強調する。
今回、2年間の有言不実行を経て3年目に一定の成果が得られた。残りの2年間、引き続きこの姿勢を堅持できるか政府の本気度が試されている。
(文=小寺貴之)
「麻生太郎財務相にかなりしつこく協力要請を重ねてきた結果。一定の評価はできる」と松山政司科学技術政策担当相は説明する。この16年間の増分は297億円で、平均すると年間20億円も増えていない。このため18年度の589億円増は一定の成果といえる。
松山科技相は、「目に見えて増額。来年度以降さらに転換していく。初年度としては良い数字ではないか」と評価する。
第5期計画は16年1月に閣議決定され、官民合わせて対国内総生産(GDP)比4%以上の研究開発投資を目標に掲げた。政府投資分としては対GDP比1%、20年度までに9000億円増を目指している。
ただ16―17年度は大きな増額は実現せず、18―20年度の単年度目標が3000億円増に積み上がっていた。結果として一定の成果が出た格好だ。この589億円の内、45%の266億円を経済産業省が占めた。
イノベ転換は1915億円の内、国土交通省が1000億円、農林水産省は422億円を確保した。公共事業に新技術導入を促す施策が中心だ。
一方で課題は実証で得られた知見を体系立てて、研究開発に役に立つ形でフィードバックできるかどうかにある。例えば公共工事では施工結果だけでなく、運用性や改良点を要素技術ごとに分けて示す必要がある。プロジェクトの管理主体に、より高度な研究開発管理能力が求められる。
また各省の投資配分機関が扱う予算が増えるため、長期的には体制整備が必要になる。
研究開発投資拡大に向け、歩調をそろえることを求められてきた産業界にとっては、政府投資が計画通りに伸びない中、公共事業などが新技術の実証事業に転換された形になったといえる。
内閣府の生川浩史官房審議官は、「転換は科学技術イノベーションにとってプラスにこそなれ、マイナスには絶対ならない」と断言。その上で「できることはなんでもやりたい」と強調する。
今回、2年間の有言不実行を経て3年目に一定の成果が得られた。残りの2年間、引き続きこの姿勢を堅持できるか政府の本気度が試されている。
(文=小寺貴之)