年100億km超、ホンダは車両走行情報をどう生かす
地域の交通安全対策や災害時の救済支援にも広がる
ホンダはビッグデータを使って、安全な社会基盤作りを支援する取り組みに力を入れている。カーナビゲーションシステムで収集した車両走行情報(プローブデータ)を元に、交通情報の高度化を実現。収集データは自治体などにも提供し、地域の交通安全対策や災害時の救済支援につなげるなど、活用範囲を広げている。
ホンダは2003年に、プローブデータを使ったカーナビシステムを自動車メーカーで初めて開発。車の速度や位置情報を収集し、「道路交通情報通信システム(VICS)」情報と合わせ、渋滞予測精度を向上させた。
10年には自社のスポーツカー「CR―Z」向けに、プローブデータを活用した最新の交通情報や天気予報を確認できる無料データ通信サービスを開始。「データ取得の障壁がなくなった」(モビリティサービスグループの菅原愛子チーフ)ことで、データの収集量を増やすことができた。
その後もサービス適用車種を順次拡大し、現在は全車種に対応している。登録車両は217万台に上り、データの年間収集距離を11年の10億キロメートル未満から、16年には122億キロメートルと大幅に伸ばした。
収集量が飛躍的に増えたことで、データ活用の領域が拡大。11年3月の東日本大震災は東北地方を中心に甚大な被害を与え、被災地への道路も一部遮断された。
そこでホンダは、プローブデータから災害発生後も通行可能な道を表示する「通行実績情報マップ」を震災発生翌日に公開。被災地の避難・救援ルートを見つけ出すための支援ツールとして大きな役割を果たした。
もともとは、04年に「新潟県中越地震」が発生した際、防災推進機構から、災害時に通れる道路の把握のためにプローブデータ活用の要望を受けたことがきっかけだ。
両者で共同研究を開始し、07年の「新潟県中越沖地震」の発生翌日に公開できた。利用者からは「非常に助かった」という声や「マップのおかげでスムーズに移動できた」との評価を得られたという。
プローブデータにより、急ブレーキを踏まれた場所なども特定できる。そこで交通安全対策の支援ツールとして、地方自治体や国交省にもデータを提供している。
埼玉県庁ではデータを参照して車の急減速の多発地点を特定し、路面標示や街路樹の剪定(せんてい)を実施した。結果として、急ブレーキ回数は7割減ったという。
またホンダのウェブサイト上でも、データを活用して急ブレーキや交通事故の情報を地図上に表示する「セーフティマップ」を公開している。地域住民が危険スポット情報を投稿できるため、ユーザー参加型による交通事故防止のための情報共有ツールと言える。
(文=土井俊)
ホンダは2003年に、プローブデータを使ったカーナビシステムを自動車メーカーで初めて開発。車の速度や位置情報を収集し、「道路交通情報通信システム(VICS)」情報と合わせ、渋滞予測精度を向上させた。
10年には自社のスポーツカー「CR―Z」向けに、プローブデータを活用した最新の交通情報や天気予報を確認できる無料データ通信サービスを開始。「データ取得の障壁がなくなった」(モビリティサービスグループの菅原愛子チーフ)ことで、データの収集量を増やすことができた。
その後もサービス適用車種を順次拡大し、現在は全車種に対応している。登録車両は217万台に上り、データの年間収集距離を11年の10億キロメートル未満から、16年には122億キロメートルと大幅に伸ばした。
収集量が飛躍的に増えたことで、データ活用の領域が拡大。11年3月の東日本大震災は東北地方を中心に甚大な被害を与え、被災地への道路も一部遮断された。
そこでホンダは、プローブデータから災害発生後も通行可能な道を表示する「通行実績情報マップ」を震災発生翌日に公開。被災地の避難・救援ルートを見つけ出すための支援ツールとして大きな役割を果たした。
もともとは、04年に「新潟県中越地震」が発生した際、防災推進機構から、災害時に通れる道路の把握のためにプローブデータ活用の要望を受けたことがきっかけだ。
両者で共同研究を開始し、07年の「新潟県中越沖地震」の発生翌日に公開できた。利用者からは「非常に助かった」という声や「マップのおかげでスムーズに移動できた」との評価を得られたという。
プローブデータにより、急ブレーキを踏まれた場所なども特定できる。そこで交通安全対策の支援ツールとして、地方自治体や国交省にもデータを提供している。
埼玉県庁ではデータを参照して車の急減速の多発地点を特定し、路面標示や街路樹の剪定(せんてい)を実施した。結果として、急ブレーキ回数は7割減ったという。
またホンダのウェブサイト上でも、データを活用して急ブレーキや交通事故の情報を地図上に表示する「セーフティマップ」を公開している。地域住民が危険スポット情報を投稿できるため、ユーザー参加型による交通事故防止のための情報共有ツールと言える。
(文=土井俊)
日刊工業新聞2018年1月15日