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JR東海社長、リニア談合事件、新幹線事故を語る

柘植康英社長「ハード面で安全検査徹底」
 ―リニア中央新幹線への談合事件の影響は。
 「現在進めている工事は予定通り進める。2027年の開業に向け、工事に最優先で取り組む。工事の契約方式を見直すとしても、見直しが工期に影響を与えるとは考えていない。我々が採用する公募競争見積方式と指名競争見積方式が前提で、それを根本から変えるわけではない」

 ―事件の印象は。
 「東京地検特捜部による捜査の進展を見守るとしか言えない」

 ―契約額が非公表であるなど、選定過程が不透明との指摘が出ています。
 「ある工区の契約額を公表すれば、各工区の契約額の相場がわかってしまう。当社は民間会社なので、よりコストを下げたい。非常に難しい工事なので、各社の技術提案と合わせ、総合的に判断する。応募企業を開示する考えはない」

 ―17年12月にJR西日本の新幹線車両の台車に亀裂が生じ、新幹線の安全に厳しい目が注がれています。
 「日本の新幹線は本当に安全かという懸念が生じているのは事実だ。我々も重く受け止めなければいけない。車両や構造物などハード面で取るべき対策がないのか検討する必要がある。検査という観点では、台車の空洞を調べる超音波技術など勉強することがある。着実に緊張感を持って取り組みたい。大きな教訓とすべき事象だ」

 ―鉄道の安全を守るために、どのようなことが必要ですか。
 「ハードとソフト両面で取り組む。ハード面では、この30年間の設備投資額の約6割は安全関連。脱線防止ガード、保線管理などで安全の品質をこれからも高める。ソフト面では、安全に対する感性を高めること。感度、気付き、警戒心などマインドの問題だ。事故の原因分析と再発防止にも取り組む」
(聞き手=戸村智幸)
日刊工業新聞2018年1月10日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
東海道新幹線では17年6月の京都―新大阪間の架線断線もあった。新幹線の安全神話が崩れつつある一方、リニアにも不安が生じている。リニアには輸送能力向上のほか、土木建設技術を引き上げる側面もある。談合事件に真摯(しんし)に向き合いつつ、工程管理能力を発揮し、開業時期を守ることに期待する。 (日刊工業新聞社 名古屋支社 編集部 戸村智幸)

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