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花王、トイレタリー・化粧品販売のEC比率10%超へ

「動画を使えるのはECのメリット」(澤田社長)
 花王は2020年までに、子ども用紙おむつを除く国内のトイレタリーや化粧品事業における電子商取引(EC)の売上比率を10%以上に高める。同製品群のEC売上比率は5―6%で約2倍に引き上げることになる。18年から、従来のリアル店舗での商品展開を生かすなど花王グループの総合力を生かして、国内ECの販売ウエートを増やす。

 花王はアマゾンや楽天、アスクルなどECサイト経由でも商品を販売し、ほぼ全商品を取り扱う。化粧品や紙おむつなどトイレタリーを含むコンシューマープロダクツ事業の国内売上高は9430億円(16年12月期)。子ども用紙おむつのEC売り上げは好調だが、それ以外で国内のECを推進することが課題。

 澤田道隆社長は「2ケタ台には乗せていきたい。ECであってもリアル店舗と商品の展開方法は同じ」と強調。店舗と同様、18年から売りたい商品を目立たせる工夫や企画コーナーを作って購入へと誘因する施策を進める。

 ECでは動画を活用する。澤田社長は「リアル店舗に設置するモニターとは違って、ECでは動画しか視界に入ってこない。その利点を生かしたい」と話す。洗剤の泡がすぐに消える様子など動画を使い訴求し、購入に結びつける。また従来のテレビコマーシャルだけでなく広告宣伝にECも活用する。

 花王の17年12月期の連結業績予想では、売上高は1兆4700億円、営業利益は2000億円を見込む。

澤田道隆社長インタビュー


 ―インバウンド需要をどう取り込みますか。

 「インバウンドを念頭に置かなければいけない。これまで日本の顧客を中心に価格を設定してきたため、化粧品事業ではインバウンド需要を取りこめていない。訪日外国人は平均して1万―2万円の間の商品を買っている。我々の『KANEBO』『est』は1万円前後でインバウンド客が求める価格帯より低い。『KANEBO』では秋から1万超えの品ぞろえを増やしている」

 「商品を手に取ってもらうためのアピール活動を強化していく。インバウンドを意識してブランドを強化するのではなく、今あるブランドの世界観、価値観を伝える必要がある」

 ―18年1月にソフィーナとカネボウ化粧品それぞれのカウンセリング専門会社を設立しました。
 「カウンセリングの質を上げるためにも人数のメリハリが必要。総合スーパーマーケット(GMS)や百貨店、専門店の美容部員の人数が平均化しているので、比率を変えてアピールすべき店の人数を増やしていく。逆に美容部員が1人しかいない店をセルフ化粧品売り場に変えることも検討する。セルフになるからといって売り上げは落ちても利益はそうでもない。小売店とも話し合いながら現状をふるい分けして、これまでのやり方を変えていきたい」

 ―国内における電子商取引(EC)の対応は。
 「20年までにトイレタリーや化粧品事業(子ども用紙おむつを除く)における売上比率を10%以上にしたい。今はそれぞれ約5―6%だ。リアル店舗と同様にECサイトの中でも売りたい商品を目立たせるなど購入に結びつける施策を進めたい。動画を使えるのはECのメリット。洗剤の泡がすぐ消える様子など動画を活用してEC販売比率を上げていきたい」
(聞き手=高島里沙)
 
日刊工業新聞2018年1月4日/5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
事業全体は好調で17年12月期に営業利益2000億円を見込む。アジアでは好調に推移する化粧品事業。国内化粧品事業の立て直しに注目が集まる中、商品改良をはじめこの数年テコ入れを図ってきた。澤田道隆社長は「手に取ってもらうための価値の伝え方」に力点を置き、販売戦略を変えていく。30年までにどう“変化”していくのか注目したい。 (日刊工業新聞第ニ産業部・高島里沙)

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