西武も2016年に観光列車を導入!秩父や川越へ食事を楽しみながら
車内には演奏会や映画上映、結婚式などを開くスペースも
「九州の水戸岡」と「東日本の奥山」、そしてJR西日本は?
水戸岡デザインの観光列車を導入する動きは地方の鉄道会社にも広がっている。これまでにも、05年に井原鉄道の「夢やすらぎ号」(岡山県)、09年にくま川鉄道「KUMA」(熊本県)、11年に富山地方鉄道の「アルプスエキスプレス」(富山県)と、全国各地で観光列車でデザインを手がけてきた。
13年以降は、北近畿タンゴ鉄道「あかまつ」「あおまつ」「くろまつ」(京都府)、薩摩おれんじ鉄道「おれんじ食堂」(熊本県)、JR四国「しまんトロッコ号」(高知県)と、相次ぎ運行が始まるなど、ななつ星の話題性も誘ってラッシュの様相も呈しており、さながら、水戸岡ブームが巻き起こっている。
水戸岡デザインで最新の観光列車は、7月に運行を開始したしなの鉄道の「ろくもん」だ。ろくもんは、しなの鉄道沿線の人気レストランの料理を提供するレストラン列車で、週末など休日を中心に軽井沢―長野間を運行する。
しなの鉄道は長野新幹線の開業に伴い、並行在来線を運行する事業者として設立された第三セクター。北陸新幹線の延伸開業により、首都圏からの観光客が、軽井沢など、しなの鉄道の沿線を通過して、北陸に吸い込まれてしまうことを懸念して、観光列車の導入に踏み切った。
ろくもんの改造費は約1億円。出発式であいさつに立った水戸岡氏は「ななつ星の30分の1の予算で、ななつ星に負けない電車を作った」と話した。ろくもんの製作にあたっては、水戸岡氏がななつ星の職人を呼び集めるなど、低予算ながら高いクオリティーを堅持した。
地方の鉄道会社は、厳しい財政事情の第三セクターなどが多い。水戸岡氏がデザインし、1月に運行を始めた富山地方鉄道の市電「レトロ電車」(富山県)の事業費は730万円。このうち240万円は県からの補助だ。北陸新幹線の開業を前に、観光資源を作り出す目的で、厳しい予算をやりくりして、富山市内を走る市電の観光列車を運行した。
「自分の仕事は、列車に乗って良い思い出を残すための時間や空間を作ること」と水戸岡氏。厳しい予算やスケジュールでもデザインを引き受け、集客効果も出す。今後も全国に「水戸岡列車」が誕生しそうだ。
JR東日本は17年春に運行開始予定の豪華寝台列車の列車名を「四季島」に決定した。四季島をデザインする奥山氏は秋田新幹線「E6系」をはじめ、JR東日本の新型車両の開発を手がけてきた。観光列車では、山形新幹線の車両「E3系」に足湯を設置した「とれいゆつばさ」、釜石線の「SL銀河」、八戸線のレストラン列車「TOHOKU EMOTION(東北エモーション)」など、全て奥山氏のデザインだ。
JR東日本で最新の観光列車となる「とれいゆつばさ」は、5億円を投じてE3系を改造。足湯をはじめ、車内の内装は山形の特産品「紅花」をイメージした赤が基調となっている。JR九州とJR東日本は、それぞれに車両のデザイナーを統一しており、「九州の水戸岡」、「東日本の奥山」と「お抱えデザイナー」となっている。
一方、JR西日本は列車ごとにデザイナーが異なる。15年10月から、七尾線の金沢―和倉温泉間で運行する観光列車「花嫁のれん」は、近畿日本鉄道の車両などを手がけてきた山内陸平氏などを中心に開発。また17年春に運行開始予定の豪華寝台列車は建築家の浦一也氏や日産自動車出身で東海道新幹線のN700系などを手がけた福田哲夫氏らがデザインする。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2015年06月17日 建設・エネルギー・生活面