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伊方原発の運転差し止め、9万年前の阿蘇山噴火から考えるべきこと

火山噴火の危険性に踏み込んだ判決、最高裁の判断を急ぐ必要
 広島高裁が13日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、運転を禁じる仮処分を決定したことで、電力業界に激震が走っている。2011年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故以降、ようやく再稼働の動きが強まってきた原発ながら、今回の高裁決定に電力業界は「再稼働の機運に水を差しかねない」(地方電力幹部)と危機感を募らせる。料金引き上げなど産業界にも多大な影響を与えそうだ。

 四電は原田雅仁常務が会見し、「正直驚き、今でも信じられない」と述べ、異議申し立てする考えを表明した。また運転を停止した場合、燃料コストが1カ月当たり35億円程度増加すると試算。「大きな影響を与える」(原田常務)とした一方、現時点では「料金引き上げはしない」(同)と述べた。

 高裁が原発の運転停止を決定したのは初めて。それだけに、電力業界が受けた衝撃は計り知れない。今後、同様の決定が他の原発に広がる懸念もあり、「原発に対するアゲンストの風が強まる可能性もある」(電力関係者)。原発再稼働が遅れる場合、電力料金の引き上げがささやかれるほか、来夏の電力需給問題にも発展する。

 国の安全宣言を司法が覆すことで、原発の安全性を誰が判断するかという課題が改めて突きつけられている。
日刊工業新聞2017年12月15日
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
 7300年前に起きた九州南方の鬼界カルデラ巨大噴火による火砕流で南九州の縄文文化は壊滅した。人が住めなくなったのだ。その火山灰は遠く秋田県の湖にも堆積している。9万年前の阿蘇4噴火で放出したマグマは600立方㎞以上に達し鬼界カルデラ噴火の5倍以上だ。  130キロ離れた阿蘇山が9万年前と同規模の破局的噴火を起こせば、火砕流の速度は時速100km以上、2時間以内に伊方原発まで届く可能性はある。事態を察知した原発側は運転を止め予備の冷却電源までも準備しても火砕流が覆いかぶさる危険性を否定しえないとして、広島高裁は伊方原発運転差し止め判決をした。  しかし阿鼻叫喚の九州壊滅の風景を想像してほしい。伊方原発の懸念よりも破局的噴火による九州全域の巨大事故対策を考えるべきではないか。その対策を検討しないのなら40年しか運転しない原発の再稼働を差し止めるのはナンセンスだ。火山噴火の危険性に踏み込んだ今回の判決は、この点をどう考えるのか。こうなれば、最高裁の判断を急ぐ必要がある。

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