COP23で逆風が強まった石炭火力、日本が考えるべき三つの視点

ネットゼロエネルギーソリューションでをインフラ輸出を

 2020年以降の地球温暖化対策の新たな国際枠組み「パリ協定」のルールづくりを進めるため、ドイツ・ボンで開かれた国連気候変動枠組み条約第23回締約国会議(COP23、11月6―18日)は、目に見える成果が乏しいまま閉幕した。合意文書には実施指針(ルールブック)の18年(COP24)採択に向けた作業の加速が盛り込まれたが、同会議では各国の意見をまとめただけにとどまった。トランプ米大統領によるパリ協定からの離脱表明で不透明感が増し、交渉の足かせになっている面も否定できない。

 パリ協定は先進国に温室効果ガス排出削減を義務付けた京都議定書(97年、COP3で採択)に代わって20年以降、すべての国が協調して地球温暖化対策に取り組む国際条約。各国が自主的に温室効果ガスの排出削減目標を策定し、5年ごとに見直して取り組みを徹底するスキームだ。15年のCOP21で採択され、オバマ政権時代の米国と中国が批准の先陣を切り、16年11月に締結国数などの要件を満たして発効した。

 採択後1年足らずでの発効は国際条約として極めて異例。直後にモロッコ・マラケシュで開かれたCOP22に合わせてルールづくりのための会合も開かれたが、準備作業が追いつかず2年後のCOP24までに、検証や報告などの詳細な運用ルールを策定することが決められた。

 COP22で日本など批准が遅れた国を含め、すべての国がルールづくりに参加できる措置が取られ、協定発効の祝賀ムードが広がっていたところに水を差したのが、開幕直後の米大統領選。民主党のオバマ前大統領による温暖化対策を真っ向否定していた共和党のトランプ氏が勝利し、“トランプ・ショック”となった。

 だが、オバマ大統領とともに批准の先陣を切った中国政府は選挙結果を受け「我々は自国で決めた目標に向かって温暖化対策を進めていく」と表明。先進諸国首脳もこぞって温暖化対策に取り組む強い意志を示し、パリ協定を採択したCOP21のモメンタム(勢い)は維持された格好だ。

先進国VS途上国、温室ガス削減目標で溝


 トランプ米大統領が大統領選での公約通り、パリ協定からの離脱を表明したのは今年6月。国際社会は平静を保ったが、最も影響が懸念されていたのが途上国への資金支援。パリ協定では、すでに先進国側で合意した20年までに官民合わせて年間1000億ドル(約11兆円余)をベンチマークに増額する方向だけが示されていたが、当然、米国抜きでの上積みは難しい。

 今回のCOP23で、この懸念が表面化した。途上国はルールづくりに当たり資金支援の増額を担保する仕組みを求め、議論を深めることができなかった。

 長年にわたり先進国が大量に排出してきた温室効果ガスに起因する気候変動による海面上昇(高潮)などで生じた損失・被害への補償問題もくすぶる。

 交渉を見守った名古屋大学大学院環境学研究科の高村ゆかり教授は「COP24でのルールブック合意に向けて、作業は着実に進んだと思う」と前向きに評価する。

 ただ、先進国のみに削減目標を課した京都議定書と異なり、パリ協定は途上国も対象。「その交渉は京都議定書以上に難しいものになる」(高村教授)と合意に向けた作業が容易ではないことも指摘する。

 途上国側が抱く資金面の疑念の払拭(ふっしょく)を意図して、会期後半のハイレベル会合では首脳たちが動いた。冒頭の演説で、マクロン仏大統領は気候変動の科学的知見をまとめる国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)への資金拠出を米国がやめることに言及し、「欧州が米国を肩代わりする」と表明。メルケル独首相も同調した。

 大量の温室効果ガスを排出してきた先進国に対し、歴史的責任を追及する途上国側の姿勢も浮かび上がった。各国がCOP21で提出した温室効果ガス削減目標を達成しても、実際にはパリ協定が描く平均気温上昇を産業革命前に比べ2度C未満に抑えるシナリオとは大きな乖離(かいり)がある。

 20年を待たずに取り組みを進めることが望ましく、途上国側には「先進国が削減量を増やすべきだ」との思いが根強い。パリ協定の実質的な“先行実施”はCOP21からの懸案事項だったが、この点でも米国の離脱表明が途上国側の疑念を強めた。

 COP23では議長国フィジーの提案により、18年初めから削減水準の引き上げを目指す話し合いの場「タラノア対話」が設けられる。タラノアはフィジー語で透明性・包摂性・調和を意味する。高村教授は「20年の各国による目標見直し・再提出に向けたプロセスがこれから始まる」と期待する。
三菱日立PSが南アフリカの石炭火力発電所に収めたボイラ

“石炭火力推進国”


 COP23は温室効果ガスの発生源である石炭火力発電への風当たりが、一段と強まっていることを実感する機会にもなった。

 開催のタイミングに合わせて、英国とカナダが提唱して発足した石炭火力発電所の段階的廃止を進める連合組織「脱石炭加速のアライアンス」にはフランスや、米国を含めた北米の州など27国・自治体が参加(16日時点)し、二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)設備がない石炭火力発電所を段階的に廃止していくことを誓約した。同組織は国や自治体だけでなく、産業界にも参加を呼びかける。

 日本は石炭火力発電を低コストで安定供給できるベースロード電源に位置付け、高効率石炭火力発電設備をインフラ輸出戦略のメニューの一つにする。

 パリ協定からの離脱を表明した米国とともに“石炭火力推進国”として厳しい目が向けられ、会場の外では非政府組織(NGO)や市民団体による石炭火力輸出への抗議活動もあった。高村教授は「世界的潮流を踏まえて、日本の政策も考えていく必要がある」と話す。
                  

(文=青柳一弘)

日刊工業新聞2017年11月22日

江原 央樹

江原 央樹
11月24日
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 温室効果ガスの抑制や大気汚染防止など人間、動物、植物等の生命が持続的に生存していくためには大変重要なことであり、その進行に歯止めをかける世界的な取組みがパリ協定の実行であると認識している。海外の企業は、この動きに合わせ再生可能エネルギーの導入等をビジネスチャンスと捉えているわけだが、日本は、電力を安価にかつ安定供給できる石炭火力発電にビジネスチャンスを見出している。
 これを、エネルギーの政策の三つの基本視点(①安定供給②経済効率性の向上③環境への適合)に当てはめて考えてみよう。産業政策の観点から、日本は①と②を重視、世界の多くの国は③を重視しているということになるわけだが、本来、この三つをバランスさせる視点を加味することが重要だと考える。つまり、石炭火力発電の輸出に特化するのではなく、例えば、エネルギー供給側にて石炭火力発電で①と②を追求しつつも、エネルギー需要側において日本のお家芸である省エネ技術の活用により③をセットで追求するネットゼロエネルギーソリューションを輸出するというような政策を推進するのである。それぞれ、金銭価値と環境価値があり同一の指標で評価するのは難しいかもしれないが、少なくとも三つの基本視点の同時実現を目指すインフラ輸出の取り組みは世界でもプラスの評価がされることは想像に難くないであろう

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