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約5500万人にリスク!知っているようで知らない心不全

怖さは予後の悪さ、生存率を比べるとがんより悪い可能性
約5500万人にリスク!知っているようで知らない心不全

埋め込み型補助人工心臓(ニプロ)

 心臓病の死因で最も多いのが心不全だ。患者数は全国100万人以上で、高齢化により年々増加している。発症リスクの高い“隠れ心不全”も多い。疾患の普及・啓発に向け、関係学会は10月末、心不全について新たな定義をまとめた。正しい理解とともに、早期発見、適切な治療を行うことが肝心だ。
 心不全は心臓のポンプ機能が低下し、心臓から十分な量の血液を送り出せなくなった状態。虚血性心疾患や高血圧症、弁膜疾患など多様な病気が原因で「全て心臓疾患の終末像」(絹川弘一郎富山大学付属病院循環器センター長)だ。

 日本の心不全患者数は120万人超と推定され、増加傾向にある。予備軍を含め約5500万人に心不全のリスクがあるという。

 この傾向を受け、日本循環器学会と日本心不全学会は10月末、心不全を「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり生命を縮める病気」と定義し、理解の浸透を図っている。

 心不全の怖さは予後の悪さだ。発症後は完治せず、短時間で急変することも多い。「生存率を比べると、がんより悪い可能性がある。がんと同様のケアが必要」(同)だ。

 診断には心電図検査や胸部X線検査などのほか、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)と呼ばれるホルモンを測定する血液検査が有用だ。心不全の治療薬で心機能の低下を防げるほか、経皮的冠動脈形成術(PCI)や大動脈弁置換術(TAVI)など非薬物療法も豊富。食事管理や禁煙・節酒、適度な運動といった生活習慣の改善も欠かせない。

 心臓移植の選択肢もある。ただ、最適な臓器提供者(ドナー)を待つまで3年以上がかかり「移植まで長い道のり」(同)だ。移植までの橋渡しとして埋め込み型補助人工心臓(VAD)もあり、保険適用もされている。
(文=編集委員・村上毅)

富山大学付属病院循環器センター長・絹川弘一郎氏「適正治療の見定め重要」


 心不全は多くの人が名前を知っているが、正確に認識されておらず、啓発が行き届いていない。全国100万人以上の患者がいて、高齢化で増え続けている。心不全や高血圧、糖尿病、肥満といった心不全になりやすい人も多い。診断には採血だけで可能性がわかる血液測定が有用だ。

 早期に疾患のリスク因子を管理し、発症を予防することが重要だ。発症した場合も悪化を防止するため薬物治療や冠動脈形成術(PCI)などの非薬物療法も確立しており、内科医の手で治療も可能になっている。

 特に重症患者には心臓移植や埋め込み型補助人工心臓(VAD)治療などもある。

 だが、高齢者は加齢とともに衰弱する。治療による改善効果が読みにくい。患者の運動機能や認知機能、社会的背景などから、治療が適切かを見定めることも重要になる。(談)
日刊工業新聞2017年11月9日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
がんに続く、日本人の死因第二位が「心疾患」。普段もくもくと働き続ける心臓ですが、リスクが高そうな方はたまには気にしてあげてください。

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