費用対効果良くても「薬価上げぬ」?新薬評価の枠組みで激しい議論

 医薬品や医療機器の費用対効果評価のあり方をめぐり、激しい議論が続いている。論点の一つは、費用対効果が良いとされた品目の扱いだ。中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)の委員からは、評価結果が良い場合も薬価を引き上げるべきではないとの意見が出た。一方、製薬業界では、革新的な新薬を評価する枠組みが必ずしも十分ではないとの不満がくすぶる。医療費抑制と生命科学産業の発展を両立させるための施策があらためて問われている。

 「評価が良かったから薬価を引き上げる、との選択肢はない」。4日の中医協で、支払い側委員の幸野庄司健康保険組合連合会理事はこう述べた。

厚労省も想定外


 この日は、医薬品と医療機器13品目を対象に費用対効果評価を試行導入する際の価格調整方法が検討された。比較対照品目と比べて効果が増加または同等であり、同時に費用が削減される品目の扱いが焦点となった。

 厚労省はこうした品目のうち、一定の条件を満たすものは価格の引き上げがあり得ると考えていた。2016年12月に発表された「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」にも、「(後発薬のない新薬の価格を実質的に維持する)新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度をゼロベースで抜本的に見直すこととし、これとあわせて、費用対効果の高い薬には薬価を引き上げることを含め費用対効果評価を本格的に導入する」との記載がある。

「見直し」けん制


 しかし幸野委員は、「そもそも対象品目の加算率が高く、保険財政に影響を与えるから真の価値を見極めるのだと理解している。一定の価値が認められるものは薬価が維持され、価値が低いならば引き下げるのが趣旨だ」と主張。基本方針の記載内容についても「今の新薬創出加算の検討状況を見ると、とてもゼロベースで見直されているとは思わない」とけん制した。

 幸野委員は、業界団体からの意見聴取が行われた17年10月11日の中医協でも同様の意見を繰り返した。これに対し日本製薬団体連合会(日薬連)の多田正世会長(大日本住友製薬社長)が、「(従来の薬価制度とは)違った角度で薬の価値を評価するのだから、高いことも低いこともあってしかるべきだ。下げるしかない、という議論は理論的におかしい」と語気を強めて反論する場面があった。

革新性どう測る


 さらに多田日薬連会長は議論の終盤で、「こういう評価をする時にイノベーションが話題にならないことは不自然。政府はこの産業を国の基幹産業に育てる方針を出している」と指摘。その上で「イノベーションの評価が今の薬価制度で十分にされていない部分もある。費用対効果評価は、そういうものをもう一回見直せる機会だ」と述べた。
(文=斎藤弘和)

日刊工業新聞2017年10月24日

日刊工業新聞 記者

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10月24日
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費用対効果評価の試行的導入における評価基準の設定方法や価格調整方法については、10月中にとりまとめを目指す方針が掲げられてきた。中医協は25日に費用対効果評価・薬価・保険医療材料の3専門部会の合同部会を開く予定で、議論の行く末が注目される。
(日刊工業新聞編集局・斎藤弘和)

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