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開発が進む超小型衛星、ビジネスにどう活用する?

東京大学教授・中須賀真一氏インタビュー
 小型かつ低コストである重さ100キログラム以下の超小型人工衛星の開発に各国がしのぎを削っている。超小型衛星は地上観測や小型小惑星の探査など、従来の大型衛星では難しい種類のミッション実行が期待される。2003年に世界で初めて手のひらサイズの超小型衛星「キューブサット」を打ち上げ、日本の超小型衛星開発をけん引してきた東京大学の中須賀真一教授に展望を聞いた。

 ―今後の衛星開発は小型化の方向に向かうでしょうか。

「数キログラム程度の超小型衛星は安価で作れるので教育や実験などで役立ってきたが、きちんとしたビジネスや研究では50キログラム級の衛星が必要だ。逆に言えば、50キログラム級の衛星なら著名な学術誌に投稿できるレベルの研究成果を出せる。光学系を構築する観点で言えば、50キロ―100キログラム級の衛星が作りやすい」

―超小型衛星をどうビジネスに活用しますか。

「例えば複数の衛星を連携し運用する『フォーメーションフライト』が挙げられる。各衛星で同時に地球を観測し、情報を得て必要な機関にデータを販売するといったビジネスが考えられる。日本では宇宙ベンチャーのアクセルスペース(東京都中央区)が22年までに50機を宇宙軌道上に打ちあげようと計画している」

―超小型衛星ビジネスに必要な要素は。

「地球観測衛星などの衛星画像データに付加価値を付けられるかが大きなポイントだ。さらに衛星から地上局への通信速度、衛星製造の低コスト化などが重要になる」

―宇宙ビジネスを育てようと、米国では富裕層がベンチャーに投資する文化が根付いています。

「投資した企業がすべて成功するわけではないが、少しでも生き残ればいいという考えだ。日本でも政府系ファンドからリスクマネーがつくようになり、投資環境が整いつつある。ただ、日本にはまだ宇宙ビジネスのユーザーが少ない。そのため日本の宇宙企業は将来のユーザーとなる企業などに、『宇宙ではこのようなことができる』とメリットを説く必要がある」

【略歴】なかすか・しんいち 88年(昭63)東大院工学系研究科博士課程修了、同年日本IBM東京基礎研究所研究員。93年東大講師、94年助教授、05年教授、12年内閣府宇宙政策委員会委員。工学博士。大阪府出身、56歳。

(文=冨井哲雄)
日刊工業新聞2017年10月20日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
17年は日本版全地球測位システム(GPS)を構成する政府の準天頂衛星「みちびき」3機のほか、キヤノン電子が超小型衛星を打ち上げるなど、民間の宇宙利用の場が広がりつつある。宇宙ベンチャーによる超小型衛星の打ち上げも控える。日本での宇宙開発の『ビジネス化元年』とも言える17年を機に、日本の宇宙開発はさらに高みを目指していく。 (日刊工業新聞社編集局科学技術部・冨井哲雄)

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