ノーベル生理学医学賞で話題の「体内時計」、不眠・うつ病治療に期待

製薬メーカーなども注目

 ノーベル生理学医学賞で話題となった“体内時計”の研究が進めば、不眠やうつ病などの治療に貢献する可能性がある。国内でも、概日リズムと睡眠障害の関係を示す研究成果が発表されている。製薬企業も以前から睡眠障害関連の薬を開発しており、その動向があらためて注目されそうだ。

 2017年のノーベル生理学医学賞は、ショウジョウバエを使った実験で、遺伝子が体内時計を制御する仕組み「概日リズム」を発見した米研究者3氏に贈られる。体内時計の発見は、睡眠障害などの疾患との関連が注目される。

 国立精神・神経医療研究センターの肥田昌子室長らは睡眠時間帯が夜間から大きくずれて社会生活が困難になる睡眠障害の研究について5月に発表した。睡眠障害の患者の皮膚細胞では、体内時計の周期が延長していることを明らかにした。

 また、気分障害やアルツハイマー病などの認知機能障害にも影響があると報告されている。概日リズムと健康の関連について肥田室長は「代謝異常やがん、認知機能などに関係している研究成果は多くある」と話す。

 早稲田大学の柴田重信教授は「これから健康への影響を調べる臨床研究が本格化する。体内時計を計り、一番良いタイミングで栄養をとり、運動して健康につながるか研究が進んでいる」と説明。ノーベル賞受賞は「基礎研究を健康増進につなげる良い機会だ」と期待する。

 企業では睡眠障害の研究が進む。エーザイは、アルツハイマー型認知症に伴う不規則睡眠覚醒リズム障害(ISWRD)の治療剤「レンボレキサント(一般名)」を開発中。19年度に日本と米国での承認申請を目指す。

 認知症になってしまうと、徘徊や暴力といった周辺症状が現れる場合が多い。睡眠と覚醒の出現が昼夜を問わず不規則になるISWRDも周辺症状の一つだ。よく眠れていない患者は認知機能も低いと考えられており、レンボレキサントが実用化されれば患者の認知機能低下を遅らせる効果も期待できそうだ。

 体内時計の研究によって睡眠の重要性はこれから広く再認識されそうだ。慢性的な睡眠不足は日中の眠気や起床時の頭痛だけでなく、高血圧や高脂血症、糖尿病といった生活習慣病とも深い関わりがある。

 特に夜間に血圧が下がらず、脳卒中や突然死を発症するリスクも高める。医療機器メーカーでは対策器具の開発が進む。一般企業でも健康経営の視点で対策に取り組む企業も出始めている。
(文=斎藤弘和、安川結野、村上毅)

日刊工業新聞2017年10月4日

明 豊

明 豊
10月04日
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職業柄、自分も睡眠障害に悩まされている一人。先日、働き方改革を睡眠改善で支援するサービスのスタートアップベンチャー、O:(オー)という企業の谷本代表と話す機会があった。同社のサービスでは欧米における主流の不眠症療法である「CBT-I療法」を導入しているのが特徴。谷本さんいわく「体内時計」には個人差もあって、必ずしも画一的な「朝ビス」がよいわけではないという。国によっては学校や会社で始業時間を遅らせるケースも出てきているそうだ。

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