日立が考えるエネルギービジネスの新たなトレンドとは?

「サステナブルという概念に『分散』、『デジタル』、『省エネ』の技術を組み合わせ、イノベーションを実現する」

 英仏がガソリン車の販売禁止を打ち出した。環境などに配慮した「サステナビリティ(持続可能)」が世界で大きなキーワードになり始めている。エネルギー分野でも変革は避けられない。長く電力・エネルギービジネスに携わってきた日立製作所は、新しい社会課題にどう向き合おうとしているのか。エネルギーソリューションビジネスユニットCEOで執行役常務の野本正明氏に聞いた。

 -サステナビリティが社会や産業を動かす駆動役になっています。
 「そこに『分散』、『デジタル』、『省エネルギー』という三つのトレンドが組み合わさってきています。この方向は今後も変わらない。みなさんがいろいろトライされていますが、新しい技術のイノベーションがもっと必要です。電気自動車(EV)が単独で走っただけでは生まれる価値も限られてしまいます」

 「サステナブルな社会を考える時に、化石燃料で作った電気でよいのか、という議論になりますね。その時に天候に左右されやすい再生可能エネルギー、EVなどの分散電源をどのように結びつけていくのか。電源を分散化することで安くなるメリットは出ますが、個々の分散電源のパワーは小さい。であれば、デジタルで地域内に点在する電源を束ね、あたかも一つの発電所のように使うVPP(仮想発電所)が必要になります。従来のプロダクト中心ではなく、システム全体で効率的なソリューションを提供するという発想が欠かせません」

 -新電力が数多く誕生するなど顧客側も変わってきていますね。
 「主軸の電力会社さんのほかに、新電力やドイツの『シュタットベルケ』(※)のような都市公社ともお付き合いがでてくるでしょう。サステナブルを求めるなら、単にCO2削減にとどまらず、“心地よいサービス”を提供することが重要になります。でも日立だけでそれを創り出すのは難しい」

 「なぜか。例えば、電力会社さんは利用者ごとの電力のデータを持っていますが、それをみんなで活用することは現状では無理です。でもドイツでは“データバンク”の議論も始まっています。電力のデータだけでは価値を生み出せない。EVの走行データや家庭の蓄電池と組み合わさって初めて最適なエネルギーソリューションの提供が可能になります」

 「では家庭における充電量をスマートメーター(次世代電力計)で計測するのか、それともHEMS(家庭用エネルギー管理システム)なのか。住宅メーカーさんがアグリゲーター(電力会社の仲介業者)になるのか、ブロックチェーンで一軒一軒個人と取引をするのか、という決済の議論にも発展していきます。銀行が新電力に投資したり、電力会社がフィンテックベンチャーに投資したり。特に海外の地方公社は、電力に限らず水道もガスもまとめて取り扱っている事業体もあります。日立のエネルギーソリューションからみてもフィンテックは無縁のテクノロジーではありません」

 -日立の情報部門は長く金融機関や官公庁向けの基幹システムの事業がメーンでした。IoTプラットフォーム「Lumada(ルマーダ)」ができて、社会イノベーション全体に広がっている印象があります。
 「IT(情報技術)とOT(制御技術)の境目がなくなりつつあるのは間違いありません。日立のITの強みを最大限発揮するため、先日、米国の二つのIT子会社を統合した新会社『Hitachi Vantara(日立ヴァンタラ社)』が発足しました。ここが日立のIoT事業のグローバル展開をリードしていきます。ビッグデータや人工知能(AI)など『Lumada』のコアな部分は新会社が担って、こちらはその上にエネルギー向けのアプリケーションを載せていく形です」

 「我々のビジネスユニットはプロダクトを持っていません。コモディティー化が速く、価格競争も激しいビジネスにあまり目を奪われないよう、ソリューションだけの組織として経営トップが設計したと思っています」
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