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ドローンから“江戸城再建”まで、五輪ビジネスに中小企業も熱いまなざし

東商主催の交流会に定員の4倍の応募
ドローンから“江戸城再建”まで、五輪ビジネスに中小企業も熱いまなざし

SIX VOICEの水中ドローン

 2020年の東京五輪・パラリンピック開催まで3年を切った。“オリンピック”の経済効果は約3兆円とも、7兆―12兆円はあるとも言われる。チャンス獲得は早い者勝ち。東京商工会議所が初めて開催したビジネスチャンス発掘交流会の申し込みは定員の約4倍にも達した。中小・小規模企業の熱も入る。目立つのが、ドローン(飛行ロボット)ビジネスに参入しようとするIT関係の中小企業だ。

 ドローン関係をターゲットとした交流会参加社の1社がSIX VOICE(東京都渋谷区)だ。それも普通の空中を飛ぶドローンではなく、水中ドローンで世界的企業になろうと考えている。同社は13年4月創業し、調査コンサルティング事業・標準化支援事業と、インターネットサービス事業を手がける。資本金は1000万円、従業員4人、年間売上高約7500万円の若い小規模企業だ。

 社長の土生修平氏は無類の釣り好き。「なぜ釣れないのか、どうしたら釣れるのか知ろうと水中ドローンを使って調べているうち、ビジネスとして水中ドローンの可能性の大きさに気がついた」と話す。

 昨年夏から手始めに一般コンシューマーを対象として水中ドローンを輸入し、カスタマイズして販売したが、お客はトヨタ自動車、名古屋市などほとんど大企業、自治体ばかり。そこで、「本年度からは大手企業、自治体をターゲットに、客の個別問題に対応できるような拡張できるアプリを開発しソリューションカンパニーを目指している」。

 「日本は類いまれな海洋国家。18年度は水中ドローン関係で機器販売・ソリューション提供含め1億円、20年度には3億円の売り上げにしたい」とし、「水中ドローンで世界有数の企業になりたい」と夢を語った。

 蒼空(同新宿区)は20年に向けてドローンとセンサーを使ったインフォメーション・サービスを展開する計画。個別・具体的な提案活動を進める一方、一緒に取り組む協業企業を募集している。

 同社も資本金500万円、従業員10人の小規模企業で年間売上高は1億円弱。営業支援や製品開発用のビジネスアプリケーションを中心に、各種モバイルアプリの企画開発や緑化事業なども展開する。現在、IoTの製品開発に注力しているが、「IoTを進めようとするとドローンとセンサーは見逃せない。20年に向けてドローンとセンサーを使ったインフォメーションサービスの本格展開を考えている」(林健一郎社長)という。

 「農業分野や建設分野で今、ドローンの活用を提案している。五輪に向けて利用範囲は広がり、ビジネス規模も拡大する。チャンスをつかみたい」と話す。

 すでに五輪に向けてはドローンに限らず、各種センサーをうまく活用する事で環境整備などの建設工事の効率化を提案。また、外国人訪問者に向けたナビゲーション素材支援や、大会に向けて変化していく映像記録も提案する。加えて、仙台市のトライポッドワークスとはIoTアプリの開発やドローン事業で協業、実施事例を積み重ねている。

 アクシンク(同文京区)もドローンで飛躍を夢見る1社だ。「オリンピック・ビジネスは一過性だが、一つの節目である。いろいろなこと、モノが動きだす。ドローンの活躍の場も広がる」(廿楽勝彦社長)と期待を寄せる。

 同社はホームページの制作や、ウェブプログラムの制作をメーンとする資本金100万円、従業員3人の小規模企業だ。「ドローンは単に映像を映したりするだけでなく、コンピューターと隣接する事業領域が増えてくる。例えばセンサーを積みデータをとるようにすれば解析し、見える化する仕事ができる」と受注獲得を夢見る。

 だが、「数年後の目標は頭にあるが、今は準備段階。ドローンを取り入れたいという人へのアドバイス、サポートや、撮影の相談に乗っている程度」とし、「五輪がらみで整備も進む。チャンスはある」という。

ポスト五輪にも照準


観光スポットとしての人気も高い東御苑には天守閣再建の計画もある

 すでに、ポスト東京五輪に向けて交流会に参加した経営者もいる。旅行業を営むトラベルジャパン東京本社(同大田区)の井上悦治代表は「大会後、観光客は大幅に減る。江戸城再建の動きがあるので、実現するように協力したい。同志を求めて参加した」という。

 50年近い業歴を持つが、観光客は減少の一途。外国人客は増えても、国内客の減少は止まらない。そこで大きな団体旅行から中小・家族向けの旅行に戦略転換。ハイヤー・タクシー会社と提携し、営業活動を開始した。続く戦略が“江戸城再建”だ。

 建材販売のコヤナギ(同文京区)はALC(軽量気泡コンクリート)などを使った工事の受注を狙いに参加した。既に駅入り口や競技場のオリンピック関連工事を受注、今後に期待が持てるからだ。

 同社は資本金3000万円、従業員22人で、年間売上高7億円の規模。都内および周辺を含め工事量は減少、主力販売先の工務店も減少中。そこでワンストップ発注の要望も多いことから、今後は自らも工事を本格実施する方針だ。20年に向けては、五輪がらみの外壁工事、内装工事などのほか、不動産屋と連携し空き家住宅や空き店舗の有効活用を促進する。

東商、企業間連携・コラボ促進


 20年の東京大会開催に向けてさまざまな製品・技術・サービスの提供が求められ今後、官公庁や民間企業から本格的な発注がされる。そこで東商は意欲ある中小企業が他社の取り組みなどに触れることで企業間連携やコラボレーションを行い受注できるようにしようと「20年に向けたビジネスチャンス発掘交流会」を開いた。

 募集は60社程度だったが、申し込みは220社を超えるほどの人気に。結局、64社約90人が参加し開催。大会の準備状況を説明、全国の事業者が利用できる「ビジネスチャンス・ナビ2020」の紹介をした後、参加企業がごく簡単な会社案内を実施し、続いて交流会に入り名刺交換・情報交換を行った。

 来場者の目的は事業連携企業の開拓、新規取引先の開拓、人的ネットワークの構築が主。初めての交流会だけにほとんどの人が初対面で「商談ができた」「商談の約束ができた」まではいかないが、「人的ネットワークができた」「情報交換できた」とする人は多かった。中には「事業提携の可能性がある企業に出会えた」ケースもあった。
(文=石掛善久)
日刊工業新聞 2017年8月28日
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
 今回惜しくも参加できなかった企業のためにも、交流会が第2回、第3回と続くことを期待したいです。

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