ルネサスが高精細監視カメラセンサー、市場参入の勝算
先行するカメラ各社に対抗できるか
ルネサスエレクトロニクスは、4K対応の監視カメラ向け相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサー市場に参入すると発表した。848万画素の新製品を開発し、月内にサンプル出荷を始める。量産開始は12月を予定し、2018年12月に月産7万個を計画する。同製品で20年に28億円の売り上げを目指す。
今後はマイコンと組み合わせた監視カメラ向けソリューションを拡充する。カメラモジュールメーカーと連携し、オートフォーカスや手ぶれ補正といった機能を搭載したカメラモジュールの提供も順次始める。
開発したセンサー「RAA462113FYL=写真」は、月明かり程度の明るさでも鮮明なフルカラー映像を撮像できるほか、4K画像を毎秒60フレームで高速に出力することで、電子ズームをしても明瞭な画像をとらえられる。
明暗差が大きくても撮像できる「ハイダイナミックレンジ」機能を搭載。同センサーを搭載したリファレンス(参照設計)ボードも同時に提供する。
監視カメラの用途が新技術との組み合わせで広がっている。映像を解析して事件や事故、危険行動などを自動で見つけるといった技術は、監視カメラの用途をマーケティングや工場の生産効率化へも広げる。技術変化を機に、日本メーカーは「賢い」監視カメラ市場で主役の座を狙う。
「人工知能(AI)の進化で監視カメラでの映像解析は加速するだろう」と、三菱電機の西村隆司常務執行役は話す。同社はAIを使い、灯油缶など危険物を持つ人を見つける技術を開発中だ。
AIによって学習用画像データから自動的に人や物を見分ける特徴点を抽出する。人が特徴点を設定する従来技術に比べ、短期間でシステムを構築でき、一つのシステムで複数の対象を検出できる。
AIに限らず、映像解析や他の技術と組み合わせた賢い監視カメラの開発が活発だ。パナソニックは警備員が装着したウエアラブルカメラと監視カメラを連携した防犯システムを提案。ソニーは複数のカメラで追跡し、低解像度の広域監視カメラで個人を認証できる技術を開発した。
こうした賢い監視カメラは、先進国や重要施設を中心に設置増加が見込まれる。日本メーカーの多くは監視カメラ専業ではないため、電子技術や一般カメラの技術を応用できるのが強みだ。
市場拡大をにらみ、キヤノンは、監視カメラ世界最大手のアクシスコミュニケーションズ(スウェーデン)などを買収し、事業拡大の布陣を整えた。「伸び率の高い産業へ転換する」(御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者)柱の一つ。ソニーも独ボッシュ子会社との協業を決めた。
監視カメラから取得できる情報は、消費者の行動を解析すればマーケティングに、工場内の作業者の動きを解析すれば生産効率化に使える。顔認証技術も、見つける対象が常連客であれば、おもてなしを向上できる。ビジネスチャンスは多い。
2016年10月に開催されたJリーグYBCルヴァンカップ決勝戦では、事前に顔画像を登録しておけば“顔パス”で入場するサービスの実証実験が実施された。入場ゲートに設置した監視カメラで本人確認し、ゲート通過後に顔写真入りの入場証を手渡して、観戦の記念にしてもらう。キヤノンやキヤノンマーケティングジャパン、NECが技術提供した。
安全で安心、そして便利な社会へ向けて、監視カメラはより身近な存在になる。日立製作所がレンズのいらないカメラ技術を開発するなど、より多くの場所に設置しやすいカメラの基盤技術も生まれてきた。過度な監視社会にならないか懸念材料は残るが、日本メーカーは変化の波に乗る時が来ている。
今後はマイコンと組み合わせた監視カメラ向けソリューションを拡充する。カメラモジュールメーカーと連携し、オートフォーカスや手ぶれ補正といった機能を搭載したカメラモジュールの提供も順次始める。
開発したセンサー「RAA462113FYL=写真」は、月明かり程度の明るさでも鮮明なフルカラー映像を撮像できるほか、4K画像を毎秒60フレームで高速に出力することで、電子ズームをしても明瞭な画像をとらえられる。
明暗差が大きくても撮像できる「ハイダイナミックレンジ」機能を搭載。同センサーを搭載したリファレンス(参照設計)ボードも同時に提供する。
日刊工業新聞2017年8月31日
用途広がる監視カメラ
監視カメラの用途が新技術との組み合わせで広がっている。映像を解析して事件や事故、危険行動などを自動で見つけるといった技術は、監視カメラの用途をマーケティングや工場の生産効率化へも広げる。技術変化を機に、日本メーカーは「賢い」監視カメラ市場で主役の座を狙う。
「人工知能(AI)の進化で監視カメラでの映像解析は加速するだろう」と、三菱電機の西村隆司常務執行役は話す。同社はAIを使い、灯油缶など危険物を持つ人を見つける技術を開発中だ。
AIによって学習用画像データから自動的に人や物を見分ける特徴点を抽出する。人が特徴点を設定する従来技術に比べ、短期間でシステムを構築でき、一つのシステムで複数の対象を検出できる。
AIに限らず、映像解析や他の技術と組み合わせた賢い監視カメラの開発が活発だ。パナソニックは警備員が装着したウエアラブルカメラと監視カメラを連携した防犯システムを提案。ソニーは複数のカメラで追跡し、低解像度の広域監視カメラで個人を認証できる技術を開発した。
こうした賢い監視カメラは、先進国や重要施設を中心に設置増加が見込まれる。日本メーカーの多くは監視カメラ専業ではないため、電子技術や一般カメラの技術を応用できるのが強みだ。
市場拡大をにらみ、キヤノンは、監視カメラ世界最大手のアクシスコミュニケーションズ(スウェーデン)などを買収し、事業拡大の布陣を整えた。「伸び率の高い産業へ転換する」(御手洗冨士夫会長兼最高経営責任者)柱の一つ。ソニーも独ボッシュ子会社との協業を決めた。
監視カメラから取得できる情報は、消費者の行動を解析すればマーケティングに、工場内の作業者の動きを解析すれば生産効率化に使える。顔認証技術も、見つける対象が常連客であれば、おもてなしを向上できる。ビジネスチャンスは多い。
2016年10月に開催されたJリーグYBCルヴァンカップ決勝戦では、事前に顔画像を登録しておけば“顔パス”で入場するサービスの実証実験が実施された。入場ゲートに設置した監視カメラで本人確認し、ゲート通過後に顔写真入りの入場証を手渡して、観戦の記念にしてもらう。キヤノンやキヤノンマーケティングジャパン、NECが技術提供した。
安全で安心、そして便利な社会へ向けて、監視カメラはより身近な存在になる。日立製作所がレンズのいらないカメラ技術を開発するなど、より多くの場所に設置しやすいカメラの基盤技術も生まれてきた。過度な監視社会にならないか懸念材料は残るが、日本メーカーは変化の波に乗る時が来ている。
日刊工業新聞2017年2月1日