東京スカイツリー、実は世界が注目する観測拠点だった!

250m地点、497m地点、458m地点で雨や雷、温室効果ガスなど

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東京スカイツリーの「天望回廊」での窓清掃は地上445―450メートルで行われる(写真・森住貴弘)
 634メートルと自立式電波塔としては世界一の高さを誇る東京スカイツリー(東京都墨田区)。東京の新しいランドマークとして人気だが、この高さを生かして雨や雷、温室効果ガスなどの観測が行われていることはあまり知られていない。防災科学技術研究所などの研究機関が参加しており、ここで得たデータを基に、首都圏のゲリラ豪雨予測や落雷対策などに生かそうとしている。

 458メートル地点では、防災科研や国立極地研究所が50マイクロメートル(マイクロは100万分の1)―3・2ミリメートルほどの霧粒や雨粒の大きさや個数を観測している。雲や大気中の微粒子(エアロゾル)の現状を分析することで、東京の上空を覆う雲の特性を調べる目的だ。

 2本のレーザー光源を向かい合わせ、幅1センチメートルのシート状に光線を発する降水粒子計(MPS)を野外に設置。霧粒や雨粒が光線を遮断することで、単位体積当たりの数を計測している。
MPSで単位体積当たりの数を計測

 防災科研によると、ここで観測した雲粒の個数は1立方センチメートル当たり約1800個と判明しており、水・土砂防災研究部門の三隅良平部門長は「非常に多く、濃密な雲だと分かる」と指摘する。

 ここで集めたデータを利用し、首都圏の積乱雲の発生を予測する手法を開発しており、研究が進めばゲリラ豪雨の予測精度向上につながるかもしれない。

 497メートル地点では、電力中央研究所が雷を観測中だ。ここでは「ロゴスキーコイル」と呼ぶ電流センサーが鉄柱の周囲を囲み、観測した雷の電流を変換装置で電気信号から光信号に変換。300メートル付近に置く波形記録装置へ伝送する。

 光信号に変換して伝送する理由を「施設内の物が壊れるのを防ぐほか、混ざってしまうノイズをカットする」と電中研の三木貫(とおる)主任研究員は説明する。

 例えば、高さ333メートルの東京タワー(東京都港区)での雷の観測は、年1回程度しかできないという。これに対し、スカイツリーはその高さ故、完成から6年間で62回の雷を記録した。このうち、「上向き」が37回、「下向き」が25回だったことが分かっている。

 三木主任研究員は、「高さ553メートルのCNタワー(カナダ・トロント)で観測した雷は上向きだけだが、ここでは下向きが多かった。

 日本がカナダより暖かくて夏が長いのが1番の要因なのでは」と考察する。実は雷研究は世界的にあまり進んでいない。1970年代のスイスで観測したデータがいまだに使われているのが現状だ。「どのような雷が落ちるか統計処理した上で、対策にどこまでコストを抑えられるかを突き止めたい」(三木主任研究員)。

 250メートル地点では、国立環境研究所が大気中の二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスと、炭素同位体や一酸化炭素などの関連物質を計測する。世界最大級の都市圏である東京からのCO2排出量が植物の呼吸からなのか、化石燃料の燃焼由来なのかをここで見極めている。

 国環研の寺尾有希夫主任研究員は、「2018年度に打ち上げ予定の温室効果ガス観測技術衛星『いぶき2号』による地球の観測データと組み合わせ、温室効果ガスの吸収・排出量のデータ精度を向上したい」と今後の展望を話している。
足元中央を走るロゴスキーコイルは鉄柱を囲む

(文=高橋沙世子)

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634メートルの高さを利用した研究施設には、月1回の頻度で研究員たちがデータや試料回収に訪れる。どの観測も国内では前例がなく、世界的にも珍しいものばかり。特に雷研究などは世界から注目されている。観測・分析データを今後さらに集め、我々の生活に役立つ日は遠くない。 (日刊工業新聞東京支社・高橋沙世子)

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