夫は1時間早く帰ろう!の理想と現実

妻の就業を継続させる処方箋は? 

 「男性社員のたった1時間の残業をなくすことが女性の活躍推進、ひいては企業の収益力向上につながる」-。  こんな提言を経済産業省の外郭団体である企業活力研究所がまとめた。業務の効率化で削減できるはずの「1時間」が、子育て世代の男性にとって家事・育児への大きな足かせとなっているのが現実で、その結果、配偶者の就業継続を困難にしている。福利厚生やCSR的な観点と一線を画し、ようやく経済成長の視点からワーク・ライフ・バランスやダイバーシティ経営が議論されるようになったいま、企業はこうした現状に目を向け、業務改革に取り組むべきだ。  妻が正社員として働く男性約600人を対象に同研究所が実施した調査によると、8割以上が「仕事や職場の雰囲気に関わらず可能な限り家事・育児を行う」と考えている。だが、実際に行っているのは退社時間に左右されない家事・育児が中心で、時間制約を伴う子供の迎えなどは妻に集中している。所定時間にこなしきれないほどの仕事を抱えているからだ。  今回の調査で目を引くのは、「1時間以下の短時間の残業」の割合が3割に上ることだ。裏返せばあと1時間、早く帰れれば、働き盛りの男性社員が子育てに関わることができ、配偶者の就業継続や出産後の早期復帰が期待できる。1時間程度なら工夫次第で解決できるのではないか。  現実には、長時間労働で子育てに関われない夫を持つ妻は疲れ果て、フルタイム勤務を諦めざるを得ないケースが少なくない。短時間勤務を選択すると、単純業務を任されたり、無条件に評価が下げられキャリアが横ばいになるなど仕事へのモチベーションを保てず離職につながってしまう。企業にとっても意欲と能力ある人材を生かし切れないことは損失だ。  わずか1時間-。だが定時退社の必要性の有無によって「意識ギャップは大きい」。中央大学の佐藤博樹教授は指摘する。であるならば周囲の意識改革を期待するだけでなく、効率的に働くことへの動機付けが重要になる。時間ではなく効率と成果に基づく評価手法の導入はもとより、不要な業務の洗い出しや過剰品質の見直しなど管理職の積極関与も問われる。同時にこうした改革は子育て世代だけの問題ではない。すでに介護で休業する男性社員の数が育児休業中の女性を上回っている企業もある。業務改革を通じた働き方の見直しは、少子高齢化が加速する日本にとって待ったなしだ。  安倍晋三政権は、女性の活躍推進を成長戦略の柱に位置づけ、女性管理職比率の向上などを目標に掲げている。だが、大上段に構えずとも、当たり前としてきた日常業務を疑うことから始まる改革もある。その一歩が大きな成果をもたらす。

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