【TPPインパクト】中小企業の輸出、政府が後押し

国、自治体、商工会議所などが年度内に連携組織を設立

町工場を視察し意見交換する林経産相(ダイヤ精機=東京・大田区)

 環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意を受けた政府の対策大綱(TPP大綱)が25日にもまとまる。経済産業分野では「新・輸出大国」を掲げ、中小企業の海外展開支援を柱に据える。政府は「TPPを追い風に商機拡大を」と訴え、少子化で先細る内需をアジアの成長などで補う必要性を示す。大手企業はもとより中小の”稼ぐ力“も高め、経済再生の実現につなげたい意向だ。TPPで変わる中小の輸出環境に政府はどのような対策を講じるのか。課題を交え検証する。  大筋合意したTPPは、中小企業が積極的な海外展開を決断し、これまで以上に攻めの経営に転換できる可能性を示した内容だ。TPPの恩恵は、広範な品目に及ぶ関税撤廃だけではない。中小の海外展開を後押しする参加12カ国共通のルールやサービス・投資分野における新たな約束を数多く含んでいる。  とりわけ部品製造などで独自技術を発揮する中小にとって追い風と期待されるのが、海外生産拠点を増やさなくてもサプライチェーンを飛躍的に拡大できる点だ。生産工程が複数国にまたがっても、TPP参加12カ国で生産した物品なら「メード・イン・TPP」とみなされ、関税優遇を受けられる。コア技術は日本に残しつつ、域内の安価な労働力や資源を活用する形で、より効率的な生産体制を築くことができる。通関手続きの迅速化や模倣品対策の強化などでも参加国が協調することになった。  こうした輸出環境の整備に加え、政府機関による物品調達や公共事業の発注額が一定規模以上の場合は、外国企業にも入札を開放するルールも盛り込まれた。日本はすでに世界貿易機関(WTO)の政府調達協定でこうした措置を講じているが、TPPに参加するマレーシア、ベトナム、ブルネイの3カ国が新たに市場開放に加わる。「インフラ市場や政府調達市場へのアクセスが改善し、中堅・中小企業にもメリットがある」と経済産業省は期待を寄せる。  TPP大綱に盛り込む経済産業分野の対策案によると、中小企業への情報提供および相談体制の整備を進めることから支援を始める。すでに政府は全国各地でTPP説明会を開いているが、今後はビジネスの手引書の作成や輸出する産品が関税優遇を受けるために必要な手続きに関するガイドラインの整備を急ぐことにしている。  例えば輸出産品が相手国で関税優遇の適用を受けるうえで不可欠な「原産地証明書」は、現行の経済連携協定(EPA)では日本商工会議所が発給するのに対し、TPPルールでは輸出業者や生産者が自己申告しなければならない。こうした実務面での相談にきめ細かく対応する方針だ。  また中小の海外市場開拓を支援する連携組織も2015年度内に設立する。国、自治体、商工会議所などが連携し、TPP発効後の新たなルール・規制に関する情報を全国津々浦々に発信し、貿易実務に不慣れな中小が情報を共有できるようにする。製品開発や国際規格の認証取得、知的財産、金融、人材を含め総合的な支援を講じるとしている。金融面では金融機関に公的機関との連携を促し、海外展開を目指す中小への助言と資金供給を円滑に行えるよう配慮する考えだ。  政府はTPP大綱を反映した15年度補正予算案を16年早々に召集予定の通常国会に提出し、協定発効への備えを本格化する。  政府が中小の海外展開を後押しするのは、国内市場が少子高齢化の進展により先細り、事業規模が縮小する事態を回避するためだ。政府機関の試算によると、政府が何ら対策を講じなければ日本の人口は2060年に8000万人台まで減少する。成長するアジアの需要を取り込まなければ、日本経済は新たな成長軌道を描けない。事業所の99%を占める中小には死活問題だ。  すでに1万社を超える中小製造業が輸出や現地拠点を構えるなどの海外事業を展開しており、グローバル化は進んでいる。過去に結んだEPAを活用して輸出する企業の7割は中小が占めるという。  だが、これだけで十分と言えないほど少子化問題は深刻だ。・・  

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