ソフトバンク、パナソニック、東京海上、ライオン...企業が「マインドフルネス」に大注目のワケ

point 0 marunouchi、トライ&エラーで新しい価値創造

伊藤園とコラボしたお茶体験のワークショップイベント「OCHA.0」

近年、リモートワークやフリーアドレス、フレックスタイム制度など、それぞれのライフスタイルに合わせた自由な働き方が推進されている。働く場所や時間を選べる制度は、会社の規定に縛られていた人々に自由を与えるようにみえるが、実はこれまで以上に厳しい環境下に身を置くことになるかもしれない。自由な選択肢が増えるほど、これまで以上に状況を見極め、的確に選択する力が必要となる。とはいえ、様々な情報に溢れる現代。一つの行動をしながらも別のものに目がいったり、気がつけば他のことを考えていたりと、注意力が散漫になりがちで、なかなか一つの物事に集中できないことはないだろうか。 そんな中、いまこの瞬間に起きていることに意識を向ける“マインドフルネス”という考え方が注目を浴びている。瞑想やその他の訓練を通して精神力を発達させることができるとされ、GoogleやYahoo!、Sansanなど、数々の企業でマインドフルネス研修が行われるなど、今、ビジネスシーンに積極的に導入されている。人々の意識を向上する取り組みは、働き方にどのような影響をもたらすのか。その実情に迫る。(取材・梶田麻実) 会員型コワーキングスペース東京駅前の「point 0 marunouchi」(東京千代田区)では、「未来のオフィス空間の実現」をテーマに日本の最前線を走る15社の企業が一つの場所に集まり、日々実証実験が行われている。「効率・創造・健康」という3つのキーワードを掲げ、各社独自の最新技術を駆使しながら新しいソリューションを一緒に考え、サービスの開発に繋げていく試みだ。快適空間の実現を目指す各社の取り組みをはじめ、マインドフルネスを意識した瞑想スペースの設置、集中ブースや仮眠室の導入により、利用者の意識を高めることで仕事の効率性・生産性向上を図る。 2019年7月にオープンしてから半年、会員数は延べ1,300人を超える。個人利用も可能で、一般の利用者は大企業が開発する最先端の技術やサービスをいち早くこの場で体感できる。参画企業は、自社の人間に限らずに検証の効果や反応をみることで、新しい角度で課題を捉えられる。一般利用者も企業側も、それぞれがモチベーションを上げて働ける空間となっている。株式会社point 0の社長・石原隆広氏は「新しい価値創造について、積極的にトライ&エラーできることがこの場の強み。PDCAのサイクルを短時間でリーズナブルに回す仕組みを作れるということから、この場所が生まれました」と話す。 point 0が空間作りで重要視しているのは、選択肢の多様性だ。ソファ席や、ローデスクローチェア・ハイデスクハイチェアの席など、様々なシーンを想定したスペースを作ることで、人のその時の気分やモチベーション、業務内容などに合わせて、働く場所を自由に選択できる空間作りを意識している。 多様性の一環として、オフィスにおけるアルコールの活用も検証している。参画企業の一社であるアサヒビールは、カフェスペースでサービス化前のお酒を提供し、新しいフレーバーへの反響や、働く場にお酒を取り入れた場合の人々の反応を調査している。コンビニやスーパーでは、アルコール度数7%のストロングチューハイが売れていても、オフィス空間になれば、アルコール度数は低いものが人気だ。 「飲食店では一杯分一定量のアルコールが提供されますが、働きながら飲む人にとって適切な量は、お店で提供される一杯分とは違ったりする。そうすると、飲食店のお酒の出杯量と、この場所でカウントしている出杯量のデータは全く違うものになってきます。アサヒビールが現在販売している缶ビール一杯分の量は、環境が変われば、多すぎることや少なすぎることもある。それは、オフィス空間という場で検証しなければ分からないことで、アサヒビールにとっては価値のあるデータとなります」(石原氏)。point 0 marunouchiでは、各企業が人々のシーンに合わせた適切を考え、快適な空間を追求するために技術を磨いている。 作業に集中したい人のために作られた集中ブースでは、当初、部屋の外からブース空間の様子が見えるように設置したところ、ほとんど利用されなかった。そこで、廊下側から利用者が見えないようにレイアウトを変更したところ、集中ブースの利用率は急増。集中するために、人の視線が大きく影響することが分かる。また、集中ブースの6席のうち、半分を白色の照明、もう半分をオレンジ色の照明にしてみると、一般的には白い照明の方が集中できる印象があるものの、オレンジ色の照明を設置した席の方が利用率が高かった。こうして従来のイメージに囚われずに試すことで、新しい気づきはある。 「導入したシャワー室は、想定の倍以上の利用がありました。気分転換のための利用や、勤務前に皇居ランをしてシャワーを浴びてから働いたり、勤務後に皇居ランをしてシャワーを浴びてから帰ったり、夜出かける前にシャワーを浴びるなど、予想以上に活用されています(石原氏)」。働く環境における気分転換は、私たちが思っている以上に必要とされているかもしれない。 マインドフルネスを意識した取り組みについて、株式会社point 0社長の石原隆広氏に話を聞いた。 ―瞑想スペースを導入した経緯は。 「もともとここのスペースは、空間の多様性を意識して作っています。働くために集中できるスペースも大切ですが、リフレッシュやリラックスできる空間は絶対に必要です。そして、これからは集中とリフレッシュをコントロールをできる人が優秀層になると考えています。ホワイトワーカーの人たちは、アウトプットとして、1時間で資料を何枚作ったらよしという考え方ではなく、資料を短時間で作れれば作れるほど価値となります。そのためには、仕事に集中しやすい空間だけでなく、それ以外の要素を持ってくることで、移動時間を減らしたり、リフレッシュをして頭を切り換える仕組みを作ることが大事です。その取り組みの一環として、瞑想ルームを取り入れています」 ―瞑想をしたことがない人は多いですよね。 「瞑想ルームの使い方が分からないという人に向けて、月に1~2回、ヨガの先生を呼んでイベントを開催しています。忙しいのでヨガスタジオに通うほどではないけれど、先生が来てくれて30分~1時間の空き時間でやってくれるなら試してみようという人は多いです」 「伊藤園とコラボし、お茶体験のワークショップイベントを開催したこともあります。お茶を飲みながらお茶の歴史を学びました。伊藤園には、全国各地で水の味が違うために、各地の「おーいお茶」をピックアップして味を確認している人がいるそうです。こうした新しい知識を得ることも面白く、自分が今まで経験したことがない新しい体験を通して、様々な気付きを得られる空間になればと考えています」 ―利用状況は。 「今は利用者が固定されていますが、もっとみんなに使っていただきたいと思っています。そのために、まずはコンテンツ化が必要だと考えています。現在はヨガのイベントが中心ですが、働く中での重要要素の一つとしてウェルネスの価値を高めるため、新しいコンテンツを検討しています」「瞑想ルームでは靴を脱いで畳に上がります。オフィスで靴を脱ぐことはあまりないと思いますが、脱いでしまえば気持ちが良いんです。ただ、やったことがないという最初のハードルをどう突破するかが大きいので、ライトに参加できるイベントを催すことから、気軽に利用する人が増えていけばいいなと思っています」 ―ウェルネスを意識した取り組みは。 「point 0には仮眠室に出張のドライヘッドスパが来ています。私は仕事中と仕事後、1日2回施術を受けたことがあり、面白いことに気がつきました。仕事後に受けるドライヘッドスパではリラックスを意識しますが、仕事中に受けるヘッドスパではリフレッシュを意識していたんです。気分転換のために施術を受けると、体は寝ていても脳はぼんやりと起きている状態になりました。私は何度か瞑想経験がありますが、遠くから自分を見つめているようなこの状態は、瞑想体験に近いんです。近しいことが仕事中に受けたドライヘッドスパで起きていました」 「施術者は寝ているといいますが、自分の中ではうっすらと起きています。そしてこれは私の個人的な感覚ではありますが、頭全体から左右をほぐしていく中で、頭の右側を刺激すると左脳が働くので、自然と直近のTO DOの整理が始まりました。次に左側が刺激されると右脳が働くので、すると中長期の大きなビジョンについて自然と整理し始めていたんです」 ―ハッキリ分かるものですか。 「はい。3回目の施術で気がつきましたが、マッサージの領域によってコントロールされているように感じました。左側ばかりマッサージされていると右脳がずっと働き、クリエイティブなことばかり考えます。瞑想方法が分からない人は、仕事の合間にドライヘッドスパを受けることでも仮想的に体感できるのではないでしょうか」 「仕事後に施術を受けたときは、一切なにも考えず気持ちよく眠りました。ドライヘッドスパ一つとっても、取り入れるタイミングによって、リフレッシュになったり、リラックスになったりするのは面白いですよね。これはやってみなければ分からなかったし、繰り返さなければ自分の中で発見に辿り着けなかったと思います。そうして定期的に取り入れるようになりました」 ―自然に取り入れるのは難しいですよね。 「習慣化するのは一番大きいと思います。普段から瞑想している人は、瞑想しないと気持ち悪いと言ったりします。そこまでいくには相当続けなければなりませんが、そこまでいかなくても、取り入れることでマインドが変わることはあります」 「ダイキン工業は、point 0にある一番大きなミーティングルームに超高精度の風景が流れるディスプレイを置いています。窓がない部屋に電子的な窓を作ることで、空間の価値がどう変わるかという実験を試みています。例えば、誰かが怒っていたりイラついている時に、電子窓にハワイの風景が流れていたら、本人はそれを見て、なんでハワイの風景が流れているのに怒っているんだろう?という気分になる。すると、気持ちが一瞬ずれるため、アンガーマネジメントに繋がります」 「ライオンは、別のミーティングルームに、人の声の抑揚から感情分析して香りを出す「airmake diffuser」という香りのデバイスを置いています。例えば、誰かが怒鳴っていると、ラベンダー様の香りを出して場の雰囲気を落ち着かせます」 「この2つに共通するのは、人の意識をそらせることです。楽しい状態やポジティブなマインドでなければクリエイティブなことは生まれません。人の意識をプラスに持っていくためにどうあるべきかが重要だと思っているので、こうしたトライはどんどんしていきたいです」 ―ポジティブな空間作りは大切ですね。 「そうですね。point 0には基本的にネガティブな人がいないんです。環境と人から与えられる影響は大きいと感じています」 ―人との関わり合いで意識が変わることもありますか。 「ここにいると色んな人と顔見知りになるので面白いです。カフェで会ったときに会話することもあれば、知り合って仕事に繋がっていくことも多々あります」 ―石原さんは、自分の意識をどうコントロールしていますか。 「働く場所は意識して変えるようにしています。知り合いに話しかけられることも多いため、集中して作業したいときは集中ブースに、集中力が途切れて人と喋りながら作業したいときはオープンスペースにいます。そして糖分が欲しくなったらカフェスペースでドリンクを飲んだり、集中できる場所を選んで行動しています。自分の気分に合わせて、数ある選択肢の中から空間を選べることは、ストレスフリーに繋がります」 ―未来のオフィス空間の実現に向け、マインドフルネスを意識したスペースは必要ですか。 「重要だと考えています。オフィスは、個人で働くというよりも、自分のインプットを増やす場所だと思っています。今の時代はネットがあればどこでも働けますが、カフェで働くのは個人作業で、会社と家の往復となにも変わりません。オフィスの価値は、会社と家の往復だけでは出会えない人たちに出会えたり、得られない経験を得られたりするところにあります。その場所に行く目的や意義がなければ、発展はありません。そういった意味でも、瞑想ルームの使いやすさを追求したり、イベントなどの新しいコンテンツを積極的に検討していきたいです」 ▼point 0 marunouchi 東京都千代田区丸の内2丁目5-1_4F contact@point0.co.jp ※詳細はURL参照: ▼利用料金 個室・月額会員(1人当たり):10万5000円~/月 専用席・月額会員(24席):10万円~ 自由席・月額会員:7万円~ 自由席・月5日利用会員:3万円~ 自由席・都度利用:250円/15分、8000円/日

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