宮崎駿監督を激怒させた「人工生命観察」、技術を開発した企業の正体

中村社長の開発デスク。画面は障害物競走の学習

アトラクチャー(東京都中央区)は「人工生命」の技術やコンテンツを開発する。ここでの人工生命とは、物理シミュレーター上で動くバーチャルな生き物を指す。ユーザーが餌や訓練環境を与えると、試行錯誤しながら動作を学習していく。 ユーザーとリアルタイムにインタラクション(相互作用)でき、なついたようなしぐさもする。そのため育てたキャラクターに愛着がわく。育成ゲームや人工知能(AI)を学ぶ教材などに提案していく。(取材=小寺貴之) 「半年でサービスを終えたが、確かなニーズがあると確信できた」と中村政義社長はドワンゴの人工生命観察プロジェクトを振り返る。ドワンゴでは「ARTILIFE」として人工生命の学習や進化を見守る観察ゲームをリリースした。 開発チームのエンジニアが、自分で育てた生命を自慢する姿に「ニッチだが、ハマる人は深くハマる」と自信をもった。サービス自体はドワンゴの経営立て直しの一環で終えたが、手応えは大きかった。 中村社長は学生時代から人工生命の研究を温めてきた。計算資源などAIを支える環境が整い、人工生命もサービスとして成り立つようになった。 人工生命は動作生成と学習を組み合わせ、新しい動作を獲得する。動作の目標や体、訓練環境をユーザーが変えるとリアルタイムに応答するため、言葉ではないコミュニケーションが可能だ。ボールのドリブルや卓球の打ち返しなど、訓練次第で新しい動作を学習していく様子は愛らしい。 ただ観察にハマる人は少数派だ。そこで「動物園のように、さまざまな人工生命を見られるようにしたい。一つひとつはコンテンツとしては弱くても多様性で魅力を出したい」と説明する。 同時に技術のライセンスも進める。すぐに実装できるのはゾンビの動作生成だ。ゾンビの手や足が吹き飛んでも、身体に応じてにじり寄る動作をリアルタイムで生成する。 ペット育成ゲームでは開発者が作り込んだ成長シナリオではなく、自然発生的な成長を描ける。 ソーシャルゲームでは、収入やコミュニティーを支えるコア層の確立がカギになる。モンスターや名前を持たないモブキャラクターとして自分の育てた人工生命がデビューすることは、ペットが国際大会で表彰される栄誉に近い。作品の登場人物や物語のファンとは違う、新しいコア層になりえる。バンダイナムコグループのアクセラレータープログラムに採択された。 「当面は売り上げよりもファン作りを優先する。類似の競合が世にないため時間はかけられる」と長期戦を戦う覚悟だ。人工生命をめでる―。少数派であってもコアなファンは計り知れない力を秘めている。

続きを読む

関連する記事はこちら

特集