日産×イチゴ農家 車づくりのノウハウ提供で“カイゼン”支援

イチゴ農家に導入した宙に浮く台車

日産自動車が、イチゴ農家の作業改善支援に取り組んでいる。車づくりのノウハウを生かしたコンサルティング事業の一環で、お金をかけない簡素な「カラクリ改善」の手法を導入するのが特徴の一つだ。イチゴ農家では“宙に浮く”台車が活躍する。(取材・後藤信之) 甘いだけでなく、ルビーのような美しい見た目の良さもイチゴ栽培には求められる。ただ外観を保つのは簡単ではない。イチゴは、高い熟度で収穫しなければならない。おのずと表面は柔らかくなり、傷付きやすい。 農家の作業負担を軽減し、イチゴの傷付きリスクも抑える―。こんな改善目標を掲げ、日産はイチゴ農家のGRA(宮城県山元町)と取り組みを進める。農林水産省の助成を受け2018年度に着手し、19年12月からは実証試験を始めた。 改善工程は二つ。一つ目は収穫だ。従来、作業者は片方の手でイチゴをもぎ、もう片方に抱えたカゴに収めていた。台車を使うと振動でイチゴが傷付いてしまうためだ。カゴはいっぱいになると約3キログラム。年配者や女性には負担が大きい。 そこで日産が考案したのが宙に浮く台車。鉢の側面に台車が滑走するレールを取り付け、振動が起きないようにした。日産APW推進部APW改善コンサルティング室の瀬戸口慎氏は「作業が楽になったと評価いただけた」と手応えを得る。費用は台車が2万円程度、レールが1メートル当たり3000円程度に抑えた。カラクリ改善のノウハウを生かした。 もう一つの改善工程は、農場から中間流通施設までの移動だ。これまでは一般的なバンに積載して運んでおり、移動中に表面に傷ができる難点があった。 問題解決に向け日産は、冷やすと実が引き締まり傷が付きにくくなるイチゴの特性に着目。冷蔵機能を持つ電気自動車(EV)バンを農場に乗り入れ、収穫直後から低温保存できるようにした。排ガスが出ず、音も静かなEVの強みを生かした。定量的な評価はこれからだが、移動中に生じる不良品を減らせる可能性はある。 今回の実証試験は収穫期が終わる5月頃まで実施する。成果を得られれば、その後、導入エリアを拡大していく方針だ。また「宙に浮く台車は、同じような栽培条件の果物の収穫にも使えると思う」(瀬戸口氏)と話し、イチゴ以外の農業分野への応用も探る。 日産はコンサル事業を11年に始めた。製造業や農業、ホテルなどのサービス業も顧客で300件以上の実績を持つ。もっとも同事業で大きな収益を上げようとは考えていない。「社会貢献の側面が強い取り組み。日産ファンを増やしたい」と比留間将長IPプロモーショングループ日産コンサルティング課長代理は説明する。 車業界の改善では「トヨタ生産方式」が有名だが、日産は「顧客の能力を引き出す。コンサル契約が終わっても顧客が自身で改善を重ねられるようにする」と差別化の方向性を示す。子どもから大人まで愛されるイチゴのように身近な存在になろうと、地道にコンサル事業に取り組む。

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