落語と寅さんでつながる「令和の人情劇」

「兵隊寅」と志ん生の生涯の友だった

間もなく公開される『男はつらいよ お帰り寅さん』(写真は柴又の銅像)

葛飾・柴又に「兵隊寅」という気っぷのいい名物男がいた。彼はびんぼう自慢と破天荒な半生で知られる昭和の落語名人・古今亭志ん生の生涯の友であり支援者だった。結城昌治の評伝小説『志ん生一代』(朝日文庫)に詳しい。 巻末で映画の山田洋次監督が解説している。『男はつらいよ』を作り始めた頃、何度か柴又の住人に「寅さんのモデルは兵隊寅ですか」と聞かれた。実在の寅という偶然に奇縁を感じたそうだ。 映画の主演男優・渥美清の他界から23年。シリーズ50周年を記念した第50作『お帰り寅さん』(松竹)が年末に封切られる。キャストを再結集し、幾度もマドンナを演じた後藤久美子が、こちらも23年ぶりに銀幕復帰した。 故人が人工知能で登場するわけではなく、あくまで回想シーン。かつてのタコ社長の町工場はアパートに変わり、国際結婚や脱サラなどの現代生活を送る縁者が、寅さんを忍びつつ滑稽と情愛に満ちたドラマを繰り広げる。 落語を下敷きとして『男はつらいよ』は出来上がっている―と山田監督。江戸の庶民の笑いを全国民が共感できる物語へ昇華した寅さんは、平成の国民栄誉賞を得た。令和の時代に、変わらぬ人情に酔えることを奇跡のように思う。

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