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民間の学童保育は「小1の壁」を突破できるか

利用児童は126万人、公設では限界あり

女性就業率の上昇と共に学童保育需要が高まっている。学童保育は主に小学校1―3年生を対象に、放課後に親が仕事等で不在の家庭の子どもを預かるサービスである。保育所の待機児童問題が注目されがちであるが、保育所の利用児童268万人、待機児童約1万7000人に対し、学童保育の利用児童は126万人に上り、待機児童もまた1万8000人と過去最高を更新した。

保育所を卒業した子どもが学童保育に入れなかったり、入ることができても、預かり時間が短く、働く親が退職を迫られたりすることが、「小1の壁」として問題になっている。保育所に通う子どもの増加は、将来的に学童保育に通う子どもの増加につながる。2013年からの「待機児童解消プラン」により政府主導で保育所の開設が急速に進んだ。13年に0歳だった子どもは19年に小学校1年生となった。今や5歳児の約半数は保育所に通っており、今後、中期的に学童保育のニーズが高まることが予想される。

現状の学童保育は公設(公設民営も含む)が8割を占めている。あくまで見守り、預かり所としての性格が強く、預かり時間は18―19時までで、特別なサービスの提供はない。学童保育のニーズが高まる中で、行政の規制に縛られることなく、預かり時間中に各種のサービスを提供できる民間(民設民営)の学童保育にビジネスチャンスがあると考えられる。

民間学童各社は、預かり時間中に英語等の教育プログラムや、宿題の指導、自宅までの送迎、22時までの預かり、夕飯などを提供している。その分、利用料金は公設と比べ高額である。しかし、習い事へ通わせるための月謝や、働く親が送迎する負担等を考慮すれば、一定の需要はあろう。

例えば、都心部に展開するウィズダムアカデミーは、ヤマハなど外部企業と提携し、預かり時間中にピアノ、空手、そろばんなど約40種類の習い事を提供している。利用料金は月6万円で、公設の月6000円と比べ高いものの、店舗数を伸ばしている。10月には保育所と幼稚園の保育料が無償化となり、子どもにかける教育費の一部が塾や習い事に回りやすくなるだろう。長期的に少子化が進む中でも、民間学童は、公設の学童保育とサービス内容で差異化することで、シェアを伸ばしていけるであろう。

(文=杉本佳美<野村リサーチ・アンド・アドバイザリー ヘルスケア/小売サービスセクター>) 
日刊工業新聞2019年12月11日

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