新たな疾患治療「核酸医薬品」の投資活発化

本格的な黎明期へ

 新たな疾患治療として期待がかかる核酸医薬品を巡り、製薬企業の事業展開が活発だ。市場の大幅拡大を見越し、新薬開発や生産設備への投資が加速している。9月には日本新薬が、初の“国産”と呼べる核酸医薬品の承認申請を実施。日系大手も精力的な開発を続ける。核酸医薬品は向こう数年で、本格的な黎明期を迎えそうだ。(取材・小野里裕一)  核酸医薬品はデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)など遺伝情報をつかさどる「核酸」を有効成分とする分子標的薬。低分子医薬品や抗体医薬では狙えなかったメッセンジャーRNA(mRNA)などを創薬ターゲットとすることが可能で、がんや遺伝性疾患など治療が難しい疾患に対する医薬品開発が期待される。作用機序が明確で、特異性や安全性を高められるのも特徴だ。  日本新薬が承認申請した核酸医薬品は、遺伝性筋疾患のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を対象に開発中の「ビルトラルセン(一般名)」。DMDは遺伝子変異で、筋肉細胞の骨組みを支えるジストロフィンたんぱく質が産生されずに筋力が低下する。主に男児が発症するが、進行を遅らせる治療法はステロイド剤の投与以外にないのが現状で、新薬のニーズは高い。  ビルトラルセンは厚生労働省から希少疾病用医薬品などに指定されており、2020年中に発売する見通し。  ビルトラルセンは、日本新薬が国立精神・神経医療研究センターとの共同研究で見いだしたモルフォリノ化合物で合成した核酸医薬品で、国内勢による初の製品として期待は大きい。  市場調査会社のシード・プランニング(東京都文京区)によると、世界の核酸医薬品の市場規模は18年で21億ドル(約2285億円)。現在8品目の核酸医薬品が承認済みで、今後も臨床試験段階にある開発品の市場投入が続くと見ており、30年の市場規模は18年比9・2倍の194億ドルに拡大すると予測する。  これまで核酸医薬品は、早くに開発に着手した欧米勢が中心だったが、日系大手の参入が目立ってきた。必要な部位に核酸を伝達するドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術が不足したことで、核酸医薬品への投資は世界的に一時停滞したが、ブロックバスターと呼ばれる大型薬も登場するなど開発は再度盛り上がりを見せている。  武田薬品工業は18年にシンガポールのウェーブ・ライフ・サイエンシズと提携。希少疾患のハンチントン病を対象に臨床試験を実施中だ。第一三共も新規モダリティ(創薬手法)の研究を推進する戦略の一環で、DMDを対象に開発を進める。  一方、日本の核酸医薬品は独自技術を持つベンチャー企業も有力なけん引役だ。医薬品を成長領域に据える化学会社などがベンチャーへの出資を強化しており、技術や知見の取り込みに躍起だ。  核酸医薬品市場の拡大は、生産側の先行投資も活発化させる。創薬支援事業に乗り出した日本触媒は、数十億を投じた原薬合成施設が1月に完成。ペプチド医薬や核酸医薬品の受託生産を目指しており、商業運転に向けた準備を急ぐ。

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