ボッシュが創る、新トレンド「PACE」

連載・車部品の新たなカタチ♯1

CASE・MaaS時代でも存在感を示すボッシュ

自動車部品最大手の独ボッシュはこれまで自動車業界の部品や技術のトレンドを先導してきたと言っても過言ではない。そのため、その存在感は「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」や「MaaS(乗り物のサービス化)」などにより、部品需要や付加価値、産業構造が変化する中でも絶大とされる。M&A(合併・買収)を積極的に仕掛けて、完成車の事業領域も浸食し始めている。 2018年には、米国とメキシコでライドシェア(相乗り)を展開する米SPLTを買収し、通勤・通学に特化したシェアサービスに参入した。フランスなどでは電動2輪車によるシェアサービスも提供する。ボッシュは自前の技術で「ほぼ車を作れる」とされながらも、完成車事業は手がけず完成車メーカーと一定の距離を保っていた。シェアサービスへの参入は完成車メーカーと競合になる可能性がある。 シュテファン・ハルトゥングボッシュ取締役モビリティソリューションズ事業部門長は「車の“パーソナライズ化”に合わせた取り組みだ」とサービス参入の理由を説明する。パーソナライズ化とは、多様化する個人の需要に対して最適なサービスを提供すること。このパーソナライズ化に、自動運転、コネクテッド、電動化の頭文字を加えた「PACE」を新トレンドと位置付ける。 パーソナライズ化は「この2年間で生まれた要素であり、シェアリングに複合一貫輸送や自動運転配車などが拡充された。利用者は自身のニーズに合わせて移動手段を選択している」(ハルトゥング取締役)という。すでにMaaSの分野ではこのパーソナライズ化への対応が問われており、ボッシュは横断的な専門組織を設立。「当社は完成車メーカーに部品やシステムを提供するBツーB(企業間)事業のイメージが強いが、将来的には(車の利用者に対して)サービスを手がけていく」(マルクス・ハイン取締役)構えだ。 これまでも部品群の適合化や技術の標準化を進めることで事業を拡大してきたボッシュ。完成車メーカーごとの需要や地域差から生じる差違を上手に埋め、その“最大公約数”を導き出すことを得意としてきた。そのため、「顧客からどこが標準なのか。何がトレンドなのか。を問われきた」(日本法人ボッシュ(東京都渋谷区)のクラウス・メーダー社長)と“トレンド王”たる所以を語る。 今後もそうした疑問に答えていくことを使命としているが、同社としてもサービスは未知の領域。だからこそ、「最新鋭の技術やサービスを自ら手がけ、理解を深める必要がある」(同)と考える。 グローバル化に合わせた最大公約数の追求だけではなく、パーソナライズ化に伴い、深いニーズを抑えることが求められている。個人や地域から生まれる需要がより多様化しているためだ。ボッシュはその相反する両方のトレンドに応え、最終的にはシステムやサービスを含めた包括的な提案に磨きをかけていく。 自動車業界が100年に一度とされる激動の時代にある中、完成車メーカーだけでなく、サプライヤーも変革が迫られている。「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」や「MaaS(乗り物のサービス化)」などにより、部品需要や付加価値、産業構造が変化しているためだ。それに伴い、圧倒的な存在感で業界をリードしてきた海外メガサプライヤーの戦略や、日本の車産業を支えてきた“ケイレツ”にも変化が生じている。変革に挑むサプライヤーの最前線に連載で迫る。

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