「資本主義の仕組みが変わってきた。モノがなくなることでも実は豊かになる」

KAIZEN PLATFORM・須藤社長に聞く、コネクテッドな社会の考え方

KAIZEN PLATFORM 須藤憲司社長インタビュー「コネクテッドな会社と、そうでない会社は、絶望的な差が付く」

 リクルートの新規事業開発部門で数々の伝説を残し、2013年にウェブサイトの改善を簡単に計画・実行できるサービス「KAIZEN PLATFORM」を立ち上げた須藤憲司氏。今、日本で最も注目される起業家からみえる「コネクテッドな社会」とはどんなものなのか。   ―須藤さんはもともとリクルートの執行役員でしたが、起業してから何が大きく変わりましたか。  「一番大きく感じるのは、周りのしがらみがないってことです。今はリクルートという看板で活動をしていない。大きな組織だと、入ってくる情報にすごくバイアスがかかる。特に競合する会社の情報は全くフラットに受け取れなかった。今は、フラットにいろいろな方の話を聞けて楽しいですよ。自分たちがやっている事業がユニークだということも大きいですね」  「最大のしがらみは、人が自分をどう見ているかですよね。私が『リクルートやめます』と言ったら、楽天、グーグル、ヤフーの人達が『ちょっと相談にのってよ』と話を聞きに来ました。彼らは僕と友人関係でもあるのに、話したいけど話せないジレンマを抱えていたんですよ。要は僕がリクルートの執行役員だったので、話せることが限られていたようです。自分が思っている以上に気を遣われていたんだとリクルートを辞めてから気付きました」  ―もともとコミュニケーション好きなんですか。  「僕が仕事をする動機でもあるんですが、分かることが好きなんです。正解か間違っているかは、とりあえずどっちでもよくて、新しいことを発見できることが喜びです。発見したことはすぐ人に話したくなりますね」  ―最近、「これは」という発見はありましたか。  「資本主義やマネーの仕組みが変わってきていると改めて感じますね。モノを生産することで豊かになる社会が変遷を遂げているということです」  ―その仕組みとは?  「モノを生産するということに対して相対的な価値が減っています。GDP(国内総生産)はすでに豊かさを図る指標ではない。例えば、CEO(最高経営責任者)は辞任したが、配車アプリの米ウーバーの企業価値が自動車メーカーを超えている。これが何を意味しているかというと、自動車を作った会社よりも、効率よく有効活用している会社の方にマーケットはお金をつけているわけです。モノを作る価値よりも、その後の循環とか利用とかに価値が移ってきている」  「『CtoC(一般消費者間の取引)』を見ると分かりやすいです。大量に売買が行われているけど、GDPには乗っかっていない。この前、ゴールデンウィーク中にいらないものを、メルカリで大量に売りました。家も綺麗になるし、相手に喜んでもらえるし、良い活動だなって(笑)。モノが生まれるだけではなくて、モノがなくなることでも、実は豊かになる。GDPではそれを捉えられない」  ―変遷した社会と、以前の社会の大きな差はなんでしょう。  「ソーシャルでコネクテッドされちゃっている、ということだと思います。例えば、食品メーカーで考えると、製品に虫が入っていたらSNSでシェアされて大問題になりますよね。事実とは関係なく会社の評判に関わってしまう。製品を生産してデリバーした後でも責任を担保していかなければならない」  「つまり、顧客とのコミュニケーションがずっと続いているわけです。売り切りじゃなくて付帯サービスがずっと続く。いかに体験を売るかが重視される社会になっています。『モノを売って、はい終わり』の企業は苦しい」  ―個人が強くなりすぎると企業にとっては窮屈になるのでは?  「それを上手く活用していく企業が生き残ると思います。例えば、「DtoC(ダイレクトトゥコンシューマー)」は強いですよね。米国でDollar Shave Clubというカミソリを販売するベンチャー企業が快進撃を見せています。毎月、アプリやメールで通知が来て、今月はカミソリを送るか送らないかが選べます。その時に、一緒にヘアジェルはどうですか?おむつはどうですか?ウエットティッシュはどうですか?と勧めてきて、カミソリは要らないけどウエットティッシュは欲しい時があるじゃないですか。店頭での購買ではなくても、顧客と常にコネクテッドしてるから、いつでも販促・広告ができるわけです」  「顧客とダイレクトにつながっていると、一人ひとりに対していろいろな仕掛けを投じることができますよね。例えばグーグルとフェイスブックだと、どちらがコネクテッドか。グーグルのサービスはログインしなくても使えて、フェイスブックのサービスは全てログインしないと使えないですよね。フェイスブックは『誰が、何を、いつ、どこで、どうやって』という、サービスを利用しているユーザーの細かな情報が分かります」  「コネクテッドじゃないと、たくさんのお客がきているのに誰が何をしているのかが分からない。もったいないでしょう。これからコスト構造がさらに変わっていって、ドローンで商品が運べる、3Dプリンターで製品を作れるとなった時に、さらに顧客体験に価値が置かれるようになります。コネクテッドな会社と、そうでない会社は、絶望的な差が付くと思います」  ―日本は顧客体験を作るサービスは弱いと感じますか。  「グランドデザインを描く力は弱いと思います。ウーバーや(民泊サービスの)エアビーアンドビーなどは現状のしがらみを逸脱してもやってくるじゃないですか。『今の法規制こそ間違っている』って勢いで(笑)。ただ日本だからダメだという感覚は無いです。ある局面、ある時代で、大胆な構想をした人がいる。トヨタ自動車やソニーだってそうやって大きくなってきた会社ですよね。なぜ今の局面で大きな発想ができないのか、が重要な問題」  ―今の局面でできない壁は何でしょう?  「一つは言語だと思います。日本語を使っているユーザーは限られている。もう一つは日本的資本市場、マネーの質。日本の機関投資家のお金はお年寄りのお金なので、未来のイノベーションに関心が低い。短期の利回りを重視することに投資が流れてしまう。東証にアマゾンとかテスラが上場しても、おそらくあれ程の時価総額になりません」  ―その意識を取り払う必要があると。  「言語もマネーの質も問題ではありますが、それを超えるためにビジネスを考えるのは本末転倒。今、本当に世界で困っていることは何なのか、どういうニーズがあるのか。日本の市場だけでなくて、世界の市場を考えることが大事だと思います」  ―ではコネクテッドになってくる社会の中で、どういう人材を育てて行くべきでしょうか。 「今は転換期なので課題解決よりも課題設定ができる人が重要です。難しいのは、今からその教育をしていて間に合うのかどうか。しかも、時間が経つと今度は課題解決できる人材が必要になってくるかもしれない。こうすればいいという教育のパターンはないと思います」  「ただベーシックなところはこれから先もっと重要になってくる。コミュニケーションをしっかりとれるとか、人に親切にできるかとか。コネクテッドな社会になるということは、どんどん会社や組織の中が顧客に対して透明になっていきます。そうすると、嫌なやつってすぐに排除されますよね。『あの社員やばいよ』って(笑)。コネクテッドな社会って、倫理性とか性格の良さっていうのが、もっと重視されてくるでしょうね」  ―須藤さんもそこは意識しているんですか。  「やっぱり愛嬌がないと話を聞いてもらえないですよね。可愛がられないと。能力とか頭の良さとかよりも、優しさとか愛嬌さとかが、コネクテッドな社会になってしまっているからこそ重要になる。正しいことだけ言ってる奴って嫌じゃないですか(笑)。コネクテッドな社会を乗り切る知恵は愛嬌だと思っています」 ※内容は当時のもの 【略歴】 須藤憲司(すどう・けんじ)1980年生まれ。2003年に早稲田大学を卒業後、リクルートに入社。マーケティング部門、新規事業開発部門を経て、アドオプティマイゼーション推進室を立ち上げ、リクルートマーケティングパートナーズ執行役員として活躍。2013年にKaizen Platform, Inc.を米国で創業。現在はサンフランシスコと東京の2拠点で事業を展開。すでに大手企業250社、40カ国3,000アカウントの利用がある。 『スマートファクトリーJapan2018』  日刊工業新聞社は「スマートファクトリーJapan 2018」を2018年5月30日(水)~6月1日(金)の日程で、東京ビッグサイトにて開催します。本展示会は、製造工場においてスマートファクトリーを実現するうえで、欠かすことのできない「IoT」や「インダストリー4.0」を搭載した情報管理システムをはじめ、製造設備・装置、その他、生産工場に関する技術・製品を展示公開いたします。  3回目を迎える今回は「スモールスタート支援ツール」の展示分野を設けたほか、また、同時開催の「2018防災産業展in東京」との連動企画として『スマートファクトリーを支える防災産業ゾーン』、昨年開催した「IoT・AI Innovation Forum」を『IoT・AI Innovationゾーン』として、新たに2つの特設ゾーンを設けます。

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