世界最大級出力の水中モーターポンプ、荏原が米水道局向け出荷
2500キロワット、全長約130メートル
荏原は、出力で世界最大級となる2500キロワットの水中モーターポンプを完成し、米国のネバダ州水道局向けに出荷したと1日発表した。
5・2メートルのつり下げ管24本をつなぎ合わせた構造で、全長約130メートルを実現しており、同社の水中モーターポンプでは最長の製品。受注額は明らかにしていない。
同クラスのポンプでは複数の羽根車で構成する多段構造が一般的。これに対して今回の製品は同社のハイドロ技術を活用し、広い運転範囲に対応する単段構造の羽根車で要求性能を達成した。シンプルな構造で部品点数を減らし、メンテナンスコストの低減が可能になる。
同ポンプが設置されるダム湖は、ネバダ州最大の都市ラスベガスから48キロメートルの距離にある。そこから生活用水を供給する。
荏原は1912年の「ゐのくち式ポンプ(世界的に認められた井口在屋博士の渦巻きポンプの理論に基づいた製品)」から始まり、25年の水道ポンプの国産化、68年の国産初の火力発電所向け超臨界圧用給水ポンプなど国産初の各種製品を開発してきた。現在は世界トップクラスの流体技術をベースにポンプ、コンプレッサー、半導体向け真空ポンプなどへ製品展開している。
同社は3事業から構成される。事業別売り上げ構成比(2016年3月期)66%の風水力事業ではポンプ、コンプレッサー・タービン、同14%のエンジニアリング事業では国内の環境プラント(ゴミ焼却施設)の建設から運転管理・メンテナンス、同19%の精密・電子事業では半導体製造装置のCMP(化学的機械研磨)装置、真空ポンプを提供している。
高い競争力を有する同社主要製品は長年の豊富な実績で顧客から高く評価されている。液化天然ガス(LNG)受け入れ基地などでLNG移送に使用されるクライオポンプは世界シェア約5割、半導体製造装置のCMP装置は同3割強である。
17年3月期の営業利益は、原油価格水準の低下などを背景に主力の風水力事業において石油・ガス向けコンプレッサー・タービンやポンプの需要減少、メンテナンス売り上げの減少などの影響を受け、前期比12%減益の335億円になったと推定する。17年度は決算期を3月から12月へ変更する予定だが、比較可能な18年3月末までの12カ月間では主力3事業がそろって営業増益を見込むことで、前期比17%増益の393億円と営業最高益の更新を予想する。
風水力事業では受注が石油・ガス市場向けに底打ち、緩やかな回復が見込まれる。その中でアフターサービス売り上げ増による収益性改善、標準ポンプの機種統廃合による効率化、自動生産ラインを含む生産体制の見直しなどにより収益性改善を進める計画である。
エンジニアリング事業では国内のゴミ焼却施設の老朽化が進み、施設の更新や延命化改造工事の堅調な需要が見込まれる。精密・電子事業ではCMP装置を中心に受注が増加基調にある中で、藤沢工場と熊本工場の2工場体制から、16年11月に熊本の新工場が完成したことで生産・サービス体制も強化される。
19年12月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「E‐Plan2019」では風水力事業を中心とした収益性改善に取り組む方針である。(水曜日に掲載)
(野村証券エクイティ・リサーチ部・田崎僚氏)
※内容・肩書は当時のもの
5・2メートルのつり下げ管24本をつなぎ合わせた構造で、全長約130メートルを実現しており、同社の水中モーターポンプでは最長の製品。受注額は明らかにしていない。
同クラスのポンプでは複数の羽根車で構成する多段構造が一般的。これに対して今回の製品は同社のハイドロ技術を活用し、広い運転範囲に対応する単段構造の羽根車で要求性能を達成した。シンプルな構造で部品点数を減らし、メンテナンスコストの低減が可能になる。
同ポンプが設置されるダム湖は、ネバダ州最大の都市ラスベガスから48キロメートルの距離にある。そこから生活用水を供給する。
日刊工業新聞2017年8月2日
風水力事業で収益性改善か
荏原は1912年の「ゐのくち式ポンプ(世界的に認められた井口在屋博士の渦巻きポンプの理論に基づいた製品)」から始まり、25年の水道ポンプの国産化、68年の国産初の火力発電所向け超臨界圧用給水ポンプなど国産初の各種製品を開発してきた。現在は世界トップクラスの流体技術をベースにポンプ、コンプレッサー、半導体向け真空ポンプなどへ製品展開している。
同社は3事業から構成される。事業別売り上げ構成比(2016年3月期)66%の風水力事業ではポンプ、コンプレッサー・タービン、同14%のエンジニアリング事業では国内の環境プラント(ゴミ焼却施設)の建設から運転管理・メンテナンス、同19%の精密・電子事業では半導体製造装置のCMP(化学的機械研磨)装置、真空ポンプを提供している。
高い競争力を有する同社主要製品は長年の豊富な実績で顧客から高く評価されている。液化天然ガス(LNG)受け入れ基地などでLNG移送に使用されるクライオポンプは世界シェア約5割、半導体製造装置のCMP装置は同3割強である。
17年3月期の営業利益は、原油価格水準の低下などを背景に主力の風水力事業において石油・ガス向けコンプレッサー・タービンやポンプの需要減少、メンテナンス売り上げの減少などの影響を受け、前期比12%減益の335億円になったと推定する。17年度は決算期を3月から12月へ変更する予定だが、比較可能な18年3月末までの12カ月間では主力3事業がそろって営業増益を見込むことで、前期比17%増益の393億円と営業最高益の更新を予想する。
風水力事業では受注が石油・ガス市場向けに底打ち、緩やかな回復が見込まれる。その中でアフターサービス売り上げ増による収益性改善、標準ポンプの機種統廃合による効率化、自動生産ラインを含む生産体制の見直しなどにより収益性改善を進める計画である。
エンジニアリング事業では国内のゴミ焼却施設の老朽化が進み、施設の更新や延命化改造工事の堅調な需要が見込まれる。精密・電子事業ではCMP装置を中心に受注が増加基調にある中で、藤沢工場と熊本工場の2工場体制から、16年11月に熊本の新工場が完成したことで生産・サービス体制も強化される。
19年12月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画「E‐Plan2019」では風水力事業を中心とした収益性改善に取り組む方針である。(水曜日に掲載)
(野村証券エクイティ・リサーチ部・田崎僚氏)
※内容・肩書は当時のもの
日刊工業新聞2017年5月3日