ロボットが採用面接官になる日。AIは質問と意図を間違えない
タレントアンドアセスメントがサービス開始、隠れた資質見抜く
人工知能(AI)・ロボットの面接なら、隠れた資質を見抜けます―。タレントアンドアセスメント(T&A、東京都港区、山崎俊明社長)は、AIによる採用面接サービス「SHaiN(シャイン)」の提供を8月にも始める。同社独自の面接手法とAI・ロボットの長所を組み合わせた。どこでも面接できて1人当たりの面接時間も増え、的確に応募者の能力を探れる。
「人の資質は氷山と同じ。一般的な面接で『見える』部分はほんの少し。大部分の『見えない』ところを見るにはノウハウが要る」。山崎社長はこう主張する。T&Aは企業が求める人物の資質や能力を的確に見抜く面接手法「T&Aメソッド」を6年ほど前に開発した。担当者がどう質問すれば相手の資質を見抜けるかのノウハウを持ち、企業に提供している。
このノウハウをAIに落とし込むことで、より手軽で大規模に実施できるようする。T&Aメソッドは、似たような質問もその人の伝える力、積極性など「何を聞きたいか」が違う。何を問う質問で、どう聞けば良いか。人ではなかなか難しい。だがAIは質問と意図を間違えない。
AIの質問を実行する“面接官”はソフトバンクのコミュニケーションロボット「ペッパー」もしくはスマートフォン(スマホ)。双方、音声対話による面接で進め、カメラ動画で表情を確認する。表情変化で分かる資質もあるそうだ。時間はいくらでもかけられ、質問の答えを深掘りすることもできる。
ロボットやスマホなら、24時間場所を選ばず面接することが可能だ。採用担当者は長い時間を面接に割く必要や、面接の担当者を集める手間がなくなる。圧迫面接で企業イメージを下げることもないし、担当者ごとに評価がばらつくこともない。ロボットは突っ込んだ質問をしても、応募者に抵抗が少ないことも利点という。
遠方に住む応募者にも、交通費をかけて指定の場所へ出かけることがなくなる。スマホなら自宅でも良い。時間制限がないのでいくらでも自分を主張できる。T&Aは地方都市ごとに、ペッパー数台を置いた面接会場を設ける「面接カフェ」のような施設も構想している。
山崎社長によると、採用活動のうち筆記試験と1次面接をT&Aが請け負う形になる。AIによる質問と録画した動画から、面接した応募者の詳細なリポートを作成して担当者に報告。2次面接に進む人材を選ぶ参考にしてもらう。2次面接以降は「社風や企業文化に合うか、といった会わないと分からないことを見極めてもらう」(山崎社長)ことになる。リポート作成費用は面接1人で1万円ほどという。
国内の採用活動でのAI活用を見ると、三菱商事は2016年夏から、活躍できそうな人材の選考のためにシャインなどデータベースをAIに学ばせる研究を進めている。ソフトバンクは過去データを学んだワトソンがエントリーシートの内容を認識し、合否判断に活用する取り組みを始めた。
また、リクルートはSPIなどの適性検査や面接の受け答えのテキストデータをAIが学び、入社5年後に活躍する人材を予測する研究をしている。NECは15年にAIを使った採用システムを開発した。過去の履歴書データや合否結果をもとに、採用方針に合致した人材を選ぶ。AIを活用した採用の取り組みは今後、本格化していきそうだ。
(文=石橋弘彰)
「人の資質は氷山と同じ。一般的な面接で『見える』部分はほんの少し。大部分の『見えない』ところを見るにはノウハウが要る」。山崎社長はこう主張する。T&Aは企業が求める人物の資質や能力を的確に見抜く面接手法「T&Aメソッド」を6年ほど前に開発した。担当者がどう質問すれば相手の資質を見抜けるかのノウハウを持ち、企業に提供している。
このノウハウをAIに落とし込むことで、より手軽で大規模に実施できるようする。T&Aメソッドは、似たような質問もその人の伝える力、積極性など「何を聞きたいか」が違う。何を問う質問で、どう聞けば良いか。人ではなかなか難しい。だがAIは質問と意図を間違えない。
AIの質問を実行する“面接官”はソフトバンクのコミュニケーションロボット「ペッパー」もしくはスマートフォン(スマホ)。双方、音声対話による面接で進め、カメラ動画で表情を確認する。表情変化で分かる資質もあるそうだ。時間はいくらでもかけられ、質問の答えを深掘りすることもできる。
ロボットやスマホなら、24時間場所を選ばず面接することが可能だ。採用担当者は長い時間を面接に割く必要や、面接の担当者を集める手間がなくなる。圧迫面接で企業イメージを下げることもないし、担当者ごとに評価がばらつくこともない。ロボットは突っ込んだ質問をしても、応募者に抵抗が少ないことも利点という。
遠方に住む応募者にも、交通費をかけて指定の場所へ出かけることがなくなる。スマホなら自宅でも良い。時間制限がないのでいくらでも自分を主張できる。T&Aは地方都市ごとに、ペッパー数台を置いた面接会場を設ける「面接カフェ」のような施設も構想している。
山崎社長によると、採用活動のうち筆記試験と1次面接をT&Aが請け負う形になる。AIによる質問と録画した動画から、面接した応募者の詳細なリポートを作成して担当者に報告。2次面接に進む人材を選ぶ参考にしてもらう。2次面接以降は「社風や企業文化に合うか、といった会わないと分からないことを見極めてもらう」(山崎社長)ことになる。リポート作成費用は面接1人で1万円ほどという。
国内の採用活動でのAI活用を見ると、三菱商事は2016年夏から、活躍できそうな人材の選考のためにシャインなどデータベースをAIに学ばせる研究を進めている。ソフトバンクは過去データを学んだワトソンがエントリーシートの内容を認識し、合否判断に活用する取り組みを始めた。
また、リクルートはSPIなどの適性検査や面接の受け答えのテキストデータをAIが学び、入社5年後に活躍する人材を予測する研究をしている。NECは15年にAIを使った採用システムを開発した。過去の履歴書データや合否結果をもとに、採用方針に合致した人材を選ぶ。AIを活用した採用の取り組みは今後、本格化していきそうだ。
(文=石橋弘彰)
日刊工業新聞2017年7月12日