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ご当地ブームはいつまで?「十六茶」地域オリジナルブレンドの裏側

ご当地ブームはいつまで?「十六茶」地域オリジナルブレンドの裏側

7地域別の十六茶

**7地域に分ける
 アサヒ飲料が、清涼飲料「十六茶」ブランドで、地域性と希少性を武器に、十六茶全体の売り上げ拡大と知名度アップを図っている。北海道、東北、関東・甲信越、中部・北陸、関西、中国・四国、九州・沖縄と全国を7地域に分け、それぞれの地域でご当地素材をブレンドしたオリジナルの十六茶を販売する。

 アサヒ飲料が十六茶ブランドでご当地素材商品を販売するのは、2016年に続き、2回目。「今回はご当地素材の特徴を、よりパワーアップした」とマーケティング本部の庄司弘佐課長は語る。商品開発で本社主導の色彩が強かった昨年に対し、今年は7地域の支社と議論を重ね、ブレンドする独自素材を決めた。「その地域の嗜好(しこう)性やご当地素材は、現地の営業担当者が一番良く知っている」(庄司課長)と、昨年と比べ使用素材の一部を変え、ご当地の味わいを強化。北海道商品はコーン、東北商品は宮城県産ササニシキ米、中部・北陸商品は静岡県産ミカンの皮、九州・沖縄商品は大分県産シイタケなどを新たに採用した。
シイタケやコーンなど、ご当地の素材をブレンド

愛される味


 茶の嗜好性で、北海道は甘さや香ばしさ、関西はうまみや後味を求めるなどの違いがある。営業担当者から聞いた、地域の好みの違い情報をもとに商品設計を行い、愛される味を目指した。地域料理や独自の食関連行事でも、お供の飲料として利用できるようにした。加えて、パッケージデザインもご当地のおみやげのような“特別感”を表現し、みやげ需要を狙った。「里帰りした時のみやげや遠方の家族とやりとりする需要が予想以上に多かった」(同)。ビールと違ってノンアルコール飲料なので、父親の健康を気遣う娘がプレゼントとして送るなどのケースにも対応しやすい。

 今年はさらに、ご当地と別に、東日本と西日本の味めぐりパックも発売。東日本では北海道と東北、関東・甲信越、中部・北陸、西日本は関西と中国・四国、九州・沖縄と標準品の4本が飲み比べできるようにした。

昨年実績見据え


 地域限定商品はキリンビールが「一番搾り」ブランドで、47都道府県それぞれのオリジナルビールを発売している。アサヒビールも第三のビール「クリアアサヒ」で、関西や九州商品を発売。地域限定商品は地元消費者や小売店の支持を得られやすく、売り上げ増加が期待できるが、工場の生産効率からすれば単一商品をつくり続ける方が圧倒的に有利だ。物流で品番増加による手間も、無視できない。それでもアサヒ飲料が前年に続いてご当地商品の発売に踏み切ったのは、発売しても十六茶本体の売り上げが落ちず、ブランド全体の底上げに寄与した実績があったからだ。

 昨年は発売した6月に十六茶全体の販売数量が42%増、7月と8月も10%以上の増加を見せた。暑い6―8月の時期は、清涼飲料のかき入れ時だ。そうした重要な時期に売り上げ増を果たした実績を今回も再び―。そんな狙いが透けて見える。
(文=編集委員・嶋田歩)

<「47都道府県の一番搾り」が当初目標より2倍も売れてるワケ>
日刊工業新聞2017年6月30日
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
チョコレートやコーヒーなども産地を限定したものが注目されています。「限定への興味」×「地域愛」という好みを上手く突いた企画だとは思いますが、飽きやすい日本人のこと、ブームはいつまで続くでしょうか。

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