楽しみな購入型クラウドファンディングの広がり
サンリオの夏イベントに活用
サンリオエンターテイメント(東京都多摩市、辻信太郎社長)は、インターネットで不特定多数から資金を調達するクラウドファンディングを活用し、サンリオピューロランド(東京都多摩市)で行う夏のイベント費用の募集を始めた。ファンの参加意識を高め、イベントを盛り上げる狙いだ。10万円の出資で人気キャラクター「ハローキティ=写真中央」とデートができるといった、出資額に応じた特典を設ける。
クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で、6月24日まで資金を募集する。出資金はサンリオピューロランドで7月15日―9月3日まで開催する夏季イベント「夏祭り in サンリオピューロランド」の会場を飾る費用などに充てる。屋内型で国内最大級、50万球の電飾を使ったイルミネーションショーを開催。
お金出せば、特典があるとなると、財力に任せて、子どもより大人の方が優位になってしまう部分もあるかもしれませんが、テーマパークで、よい場所を取るために長時間並んだり、待ったりするのは、結構大変なので、選択肢を広げるという意味ではよいのかなと思います。
(日刊工業新聞第ニ産業部・高屋優理)
1100年以上の歴史を持ち、毎年7月に100万人もの見物客が訪れる京都の「祇園祭」。30基以上の山や鉾(ほこ)が市内の中心街をめぐる「山鉾巡行」が最大のハイライトである。
祇園祭山鉾連合会(京都市中京区)や山・鉾を出す34の町会は、警備会社に雑踏警戒を依頼し、見物客が事故で負傷した時に備えて賠償責任保険に加入する。見物客の安全を確保し、安心して祭りを楽しんでもらうためで、警備費や保険料を負担してきた。
費用負担は年々増えて、2016年に約4000万円に達し、行政の補助があっても維持が難しくなった。このため連合会はインターネットで出資者を募るクラウドファンディングを初めて導入し、専用サイト「Makuake」(マクアケ)で5月8日に募集を始めた。
1人3000円から10万円まで五つのコースがあり、手拭い、厄よけちまき、扇子、八坂神社本殿正式参拝など、出資額に応じて特典がもらえる。目標金額は300万円に設定した。
目標は翌日昼にあっさりとクリアした。13日には1000万円を超え、18日には約1100万円に達した。祭りの安全・安心に役立つ資金を広く浅く集めるこの仕組みは、京都から全国に広がる可能性がある。
既存薬などから別の病気の薬効を見つけ出す手法「ドラッグ・リポジショニング」(DR)の研究成果が相次いで報告されている。人間の体内での作用や安全性の検証が済んでいる既存薬を転用することで、薬の開発にかかる費用や時間を抑えられる利点がある。また、すでに開発を中止した薬剤候補物質(化合物)を再利用する例もある。大学組織が仲介役となり、DRの研究者による試料や資金調達を支援する事例も出始めた。
北海道大学大学院医学研究科の田中伸哉教授と篠原信雄教授らは、風邪薬の成分で一般的な非ステロイド系の抗炎症薬「フルフェナム酸」に膀胱(ぼうこう)がんの転移を抑える働きがあることを突き止めた。
ヒトの膀胱がん細胞を移植したマウスによる実験で、「アルドケト還元酵素」という物質ががん細胞の動きを高めていることを発見。この酵素の働きを抑える効果のあるフルフェナム酸を患部に投与したところ、がん細胞の動きを抑えられ、抗がん剤の効き目が回復した。
膀胱がんは進行して組織の深い部分に達すると、肺などに転移しやすくなる。安価な風邪薬成分のフルフェナム酸と抗がん剤を併用する治療法が確立すれば、患者の治療費軽減につながりそうだ。
一方、順天堂大学大学院医学研究科の横溝岳彦教授らは、細菌の一種「肺炎球菌」が引き起こす肺炎による死亡を、気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎の治療薬「モンテルカスト」で抑えられることを発見した。
この細菌の毒素をマウスの気道に投与すると、気管支の筋肉収縮などぜんそく時の症状が現れ、死に至ることが判明。モンテルカストを事前投与したマウスは致死率を下げることに成功した。
成人の肺炎のうち、4分の1から3分の1程度は肺炎球菌が原因とされ、すでに安全性が確立された既存薬モンテルカストの転用が期待される。
また、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の道上宏之助教らは、抗うつ薬の一種「フルボキサミン」に悪性脳腫瘍の治療効果があることを見つけた。
腫瘍細胞が周囲の正常組織へ広がる際、たんぱく質が多数連結した「仮足」と呼ばれる構造を形成する点に着目。仮足の形成を邪魔する成分を見つけるため、既存の抗うつ薬や抗けいれん薬、抗不安薬などを試し、フルボキサミンにたどり着いた。
DRとして有効性が確認された例では、狭心症治療薬として血管を広げる作用を持つ「シルデナフィル」が、男性器の勃起不全治療に転用され、「バイアグラ」として商品化されたケースが有名だ。頭痛薬や解熱薬として使う「アスピリン」は少量の投与で血液をさらさらにする効果があり、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞などの治療に使われている。
新薬開発の難易度の高まりなどを背景に、欧米では製薬会社や国が組織的にDR研究に取り組んでいる。そうした中、東京大学は、製薬会社から開発を中止した化合物を提供してもらい、DR研究に生かす活動を2016年10月に始めた。
「ドラッグ・リダイレクションプログラム」と名付けたこの活動では、東大の「東大トランスレーショナル・リサーチ・イニシアティブ」(TR機構)が仲介役となり、製薬会社と大学の研究者を引き合わせる。
研究者は薬の候補となる化合物の入手が容易になり、企業側は従来廃棄していた化合物を有効活用できる利点がある。同機構の加藤益弘特任教授は、「早ければ4、5年のうちに具体的成果が出るだろう」としている。
一方、徳島大学はインターネット上で不特定多数から資金を募る「クラウドファンディング」を利用し、DRの研究費を調達するユニークな取り組みを行った。
同大学が設立したクラウドファンディングサイト「OTSUCLE(おつくる)」を活用。既存薬から抗がん剤の副作用予防薬を開発する研究の資金を募り、16年11月からの2カ月間で目標の2倍となる約100万円の調達に成功した。
資金は細胞や動物を使った基礎実験や、解析ソフトウエアの購入に充てる。研究に使う試料や資金の調達ルートが多様化することで、DR研究の裾野がさらに広がりそうだ。
※内容、肩書は当時のもの
JVCケンウッドはインターネット上で資金を調達するクラウドファンディングを初めて活用し、新製品開発の活性化に挑んでいる。クラウドファンディングを通じて多様な意見を吸い上げ、マーケティングを強化するのが狙いだ。7月には、周囲の音とスマートフォンの音楽を同時に聴ける「マルチライブモニターイヤホン」を発表。約3カ月間で、目標の10倍以上の資金を集めた。支援する消費者の意見を採用して機能を拡張するなど、二人三脚のモノづくりに取り組んでいる。
「従来のやり方では製品の良さを直接伝えられず、顧客の反応もとらえきれなかった」―。メディア事業統括部AVC統括部新規事業推進室の江島健二室長は、クラウドファンディングを採用した理由をこう説明する。
マルチライブモニターイヤホンの企画が固まったのは、2016年の初頭だ。一般的にイヤホンを付けると周囲の音が聞きづらくなるため、状況に応じて付けたり外したりする必要がある。
開発現場では「いちいちイヤホンを外さなくても良いようにならないだろうか」との声が上がり、外部の音を取り込めるイヤホンを着想した。
開発に向けて、まずはメーンターゲットを音楽・楽器好きの30―40代男性に設定。スマホからの音楽と自分が弾く楽器の音をバーチャルでセッションできることを主なコンセプトにした。
しかし同室の鯨岡伸二シニアスペシャリストは「本当に需要があるかどうか、分からなかった」と打ち明ける。一般のユーザーは、どんな点に興味を持つのか―。そこで、支援者の数や製品への反応が分かるクラウドファンディングの活用を決めた。
しかし資金調達に使うクラウドファンディングを大企業の開発に採用する案は、当初なかなか受け入れられなかったという。「なぜその方法なのか説得するのが大変だった」(江島室長)。
議論を重ねて理解を深め、7月12日にクラウドファンディングサイト「マクアケ」への公開にこぎつけた。
公開後は約5時間で目標金額の100万円に到達。現在の支援額は1600万円以上になった。サイトには支援者からの意見が書き込まれ「製品ができる前に反応を得られるのは良い」(鯨岡シニアスペシャリスト)と効果を感じている。反響が見えるため、担当者のモチベーションにもつながっているという。
寄せられた意見を基に、機能を追加する新しい試みも進めている。このほど支援者が1000人に達したことを受け、電車の走行音などの騒音を抑える「ノイズキャンセリング機能」の搭載を決めた。
一方で開発陣には、これまでとは違った苦労が生まれた。公開前にどこまでコンセプトを固めるのか、性能や品質をどう保証するのか、などだ。
従来は製品が完成してからマーケティングし市場に投入する「プロダクトアウト型」が中心だったが、今回は進め方がまるで異なる。営業側とのやりとりは、これまで以上に濃密になっている。江島室長は「開発のあり方が変わる可能性がある」とする。
鯨岡シニアスペシャリストは「これまでは保守的なイメージがあったかもしれないが、攻めるマーケティングにしていく」と力を込める。同社の新製品創出現場に、新しい風が吹き始めている。
※内容、肩書は当時のもの
全日本空輸(ANA)は、クラウドファンディングの枠組み「WonderFLY」を立ち上げた。テーマを提示してアイデアを持つ人を募り、審査で選ばれたものをWonderFLYで調達した資金で支援する。
クラウドファンディングは、製品やサービスの開発、アイデア実現などのために、不特定多数の人から資金調達すること。ANAがテーマを示して参加者を募るWonderFLYでは、第一弾として「旅の常識を覆すモノ」を掲げた。先着順250人の参加者を11月15日まで募集し、12月上旬に受賞者を発表する。
11月3日にWonderFLYのロ-ンチイベントを、六本木で開催。受賞を目指す参加者のためのイベントで、チーム組成やアイデア応募に向けた会議などを開く。イベントには参加せず、アイデアのみの投稿も受け付ける。
今回の賞金は優秀賞90万円と特別賞10万円合わせて最大100万円。日本独自の伝統文化や技術を応援するとしており、伝統文化や日本の技術を織り交ぜたアイデアが優秀作品に選ばれ場合、特別賞を授与する。採用予定数は10アイデアまで。
クラウドファンディングサイト「キャンプファイヤー」で、6月24日まで資金を募集する。出資金はサンリオピューロランドで7月15日―9月3日まで開催する夏季イベント「夏祭り in サンリオピューロランド」の会場を飾る費用などに充てる。屋内型で国内最大級、50万球の電飾を使ったイルミネーションショーを開催。
記者ファシリテーター
お金出せば、特典があるとなると、財力に任せて、子どもより大人の方が優位になってしまう部分もあるかもしれませんが、テーマパークで、よい場所を取るために長時間並んだり、待ったりするのは、結構大変なので、選択肢を広げるという意味ではよいのかなと思います。
(日刊工業新聞第ニ産業部・高屋優理)
日刊工業新聞2017年05月30日
クラウドファンディングいろいろ
祇園祭の伝統守る
1100年以上の歴史を持ち、毎年7月に100万人もの見物客が訪れる京都の「祇園祭」。30基以上の山や鉾(ほこ)が市内の中心街をめぐる「山鉾巡行」が最大のハイライトである。
祇園祭山鉾連合会(京都市中京区)や山・鉾を出す34の町会は、警備会社に雑踏警戒を依頼し、見物客が事故で負傷した時に備えて賠償責任保険に加入する。見物客の安全を確保し、安心して祭りを楽しんでもらうためで、警備費や保険料を負担してきた。
費用負担は年々増えて、2016年に約4000万円に達し、行政の補助があっても維持が難しくなった。このため連合会はインターネットで出資者を募るクラウドファンディングを初めて導入し、専用サイト「Makuake」(マクアケ)で5月8日に募集を始めた。
1人3000円から10万円まで五つのコースがあり、手拭い、厄よけちまき、扇子、八坂神社本殿正式参拝など、出資額に応じて特典がもらえる。目標金額は300万円に設定した。
目標は翌日昼にあっさりとクリアした。13日には1000万円を超え、18日には約1100万円に達した。祭りの安全・安心に役立つ資金を広く浅く集めるこの仕組みは、京都から全国に広がる可能性がある。
日刊工業新聞2017年5月19日
既存薬の転用に
既存薬などから別の病気の薬効を見つけ出す手法「ドラッグ・リポジショニング」(DR)の研究成果が相次いで報告されている。人間の体内での作用や安全性の検証が済んでいる既存薬を転用することで、薬の開発にかかる費用や時間を抑えられる利点がある。また、すでに開発を中止した薬剤候補物質(化合物)を再利用する例もある。大学組織が仲介役となり、DRの研究者による試料や資金調達を支援する事例も出始めた。
北海道大学大学院医学研究科の田中伸哉教授と篠原信雄教授らは、風邪薬の成分で一般的な非ステロイド系の抗炎症薬「フルフェナム酸」に膀胱(ぼうこう)がんの転移を抑える働きがあることを突き止めた。
ヒトの膀胱がん細胞を移植したマウスによる実験で、「アルドケト還元酵素」という物質ががん細胞の動きを高めていることを発見。この酵素の働きを抑える効果のあるフルフェナム酸を患部に投与したところ、がん細胞の動きを抑えられ、抗がん剤の効き目が回復した。
膀胱がんは進行して組織の深い部分に達すると、肺などに転移しやすくなる。安価な風邪薬成分のフルフェナム酸と抗がん剤を併用する治療法が確立すれば、患者の治療費軽減につながりそうだ。
一方、順天堂大学大学院医学研究科の横溝岳彦教授らは、細菌の一種「肺炎球菌」が引き起こす肺炎による死亡を、気管支ぜんそくやアレルギー性鼻炎の治療薬「モンテルカスト」で抑えられることを発見した。
この細菌の毒素をマウスの気道に投与すると、気管支の筋肉収縮などぜんそく時の症状が現れ、死に至ることが判明。モンテルカストを事前投与したマウスは致死率を下げることに成功した。
成人の肺炎のうち、4分の1から3分の1程度は肺炎球菌が原因とされ、すでに安全性が確立された既存薬モンテルカストの転用が期待される。
また、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の道上宏之助教らは、抗うつ薬の一種「フルボキサミン」に悪性脳腫瘍の治療効果があることを見つけた。
腫瘍細胞が周囲の正常組織へ広がる際、たんぱく質が多数連結した「仮足」と呼ばれる構造を形成する点に着目。仮足の形成を邪魔する成分を見つけるため、既存の抗うつ薬や抗けいれん薬、抗不安薬などを試し、フルボキサミンにたどり着いた。
DRとして有効性が確認された例では、狭心症治療薬として血管を広げる作用を持つ「シルデナフィル」が、男性器の勃起不全治療に転用され、「バイアグラ」として商品化されたケースが有名だ。頭痛薬や解熱薬として使う「アスピリン」は少量の投与で血液をさらさらにする効果があり、脳梗塞や狭心症、心筋梗塞などの治療に使われている。
新薬開発の難易度の高まりなどを背景に、欧米では製薬会社や国が組織的にDR研究に取り組んでいる。そうした中、東京大学は、製薬会社から開発を中止した化合物を提供してもらい、DR研究に生かす活動を2016年10月に始めた。
「ドラッグ・リダイレクションプログラム」と名付けたこの活動では、東大の「東大トランスレーショナル・リサーチ・イニシアティブ」(TR機構)が仲介役となり、製薬会社と大学の研究者を引き合わせる。
研究者は薬の候補となる化合物の入手が容易になり、企業側は従来廃棄していた化合物を有効活用できる利点がある。同機構の加藤益弘特任教授は、「早ければ4、5年のうちに具体的成果が出るだろう」としている。
一方、徳島大学はインターネット上で不特定多数から資金を募る「クラウドファンディング」を利用し、DRの研究費を調達するユニークな取り組みを行った。
同大学が設立したクラウドファンディングサイト「OTSUCLE(おつくる)」を活用。既存薬から抗がん剤の副作用予防薬を開発する研究の資金を募り、16年11月からの2カ月間で目標の2倍となる約100万円の調達に成功した。
資金は細胞や動物を使った基礎実験や、解析ソフトウエアの購入に充てる。研究に使う試料や資金の調達ルートが多様化することで、DR研究の裾野がさらに広がりそうだ。
※内容、肩書は当時のもの
日刊工業新聞2017年1月10日
JVCケンウッド、開発に新風
JVCケンウッドはインターネット上で資金を調達するクラウドファンディングを初めて活用し、新製品開発の活性化に挑んでいる。クラウドファンディングを通じて多様な意見を吸い上げ、マーケティングを強化するのが狙いだ。7月には、周囲の音とスマートフォンの音楽を同時に聴ける「マルチライブモニターイヤホン」を発表。約3カ月間で、目標の10倍以上の資金を集めた。支援する消費者の意見を採用して機能を拡張するなど、二人三脚のモノづくりに取り組んでいる。
「従来のやり方では製品の良さを直接伝えられず、顧客の反応もとらえきれなかった」―。メディア事業統括部AVC統括部新規事業推進室の江島健二室長は、クラウドファンディングを採用した理由をこう説明する。
マルチライブモニターイヤホンの企画が固まったのは、2016年の初頭だ。一般的にイヤホンを付けると周囲の音が聞きづらくなるため、状況に応じて付けたり外したりする必要がある。
開発現場では「いちいちイヤホンを外さなくても良いようにならないだろうか」との声が上がり、外部の音を取り込めるイヤホンを着想した。
開発に向けて、まずはメーンターゲットを音楽・楽器好きの30―40代男性に設定。スマホからの音楽と自分が弾く楽器の音をバーチャルでセッションできることを主なコンセプトにした。
しかし同室の鯨岡伸二シニアスペシャリストは「本当に需要があるかどうか、分からなかった」と打ち明ける。一般のユーザーは、どんな点に興味を持つのか―。そこで、支援者の数や製品への反応が分かるクラウドファンディングの活用を決めた。
しかし資金調達に使うクラウドファンディングを大企業の開発に採用する案は、当初なかなか受け入れられなかったという。「なぜその方法なのか説得するのが大変だった」(江島室長)。
議論を重ねて理解を深め、7月12日にクラウドファンディングサイト「マクアケ」への公開にこぎつけた。
公開後は約5時間で目標金額の100万円に到達。現在の支援額は1600万円以上になった。サイトには支援者からの意見が書き込まれ「製品ができる前に反応を得られるのは良い」(鯨岡シニアスペシャリスト)と効果を感じている。反響が見えるため、担当者のモチベーションにもつながっているという。
寄せられた意見を基に、機能を追加する新しい試みも進めている。このほど支援者が1000人に達したことを受け、電車の走行音などの騒音を抑える「ノイズキャンセリング機能」の搭載を決めた。
一方で開発陣には、これまでとは違った苦労が生まれた。公開前にどこまでコンセプトを固めるのか、性能や品質をどう保証するのか、などだ。
従来は製品が完成してからマーケティングし市場に投入する「プロダクトアウト型」が中心だったが、今回は進め方がまるで異なる。営業側とのやりとりは、これまで以上に濃密になっている。江島室長は「開発のあり方が変わる可能性がある」とする。
鯨岡シニアスペシャリストは「これまでは保守的なイメージがあったかもしれないが、攻めるマーケティングにしていく」と力を込める。同社の新製品創出現場に、新しい風が吹き始めている。
※内容、肩書は当時のもの
日刊工業新聞2016年10月14日
「旅の常識を覆すモノ」
全日本空輸(ANA)は、クラウドファンディングの枠組み「WonderFLY」を立ち上げた。テーマを提示してアイデアを持つ人を募り、審査で選ばれたものをWonderFLYで調達した資金で支援する。
クラウドファンディングは、製品やサービスの開発、アイデア実現などのために、不特定多数の人から資金調達すること。ANAがテーマを示して参加者を募るWonderFLYでは、第一弾として「旅の常識を覆すモノ」を掲げた。先着順250人の参加者を11月15日まで募集し、12月上旬に受賞者を発表する。
11月3日にWonderFLYのロ-ンチイベントを、六本木で開催。受賞を目指す参加者のためのイベントで、チーム組成やアイデア応募に向けた会議などを開く。イベントには参加せず、アイデアのみの投稿も受け付ける。
今回の賞金は優秀賞90万円と特別賞10万円合わせて最大100万円。日本独自の伝統文化や技術を応援するとしており、伝統文化や日本の技術を織り交ぜたアイデアが優秀作品に選ばれ場合、特別賞を授与する。採用予定数は10アイデアまで。
2016年10月19日