花見酒、訪日外国人の参戦で食品メーカーも需要喚起にひと工夫
エア花見まつりやスマホで出前も
各地でサクラが満開を迎えている。花見酒の定番と言えばビールだが、最近は需要が缶チューハイやワインなどに流れているとの指摘もある。訪日外国人客の急増で膨らむ“花見市場”に関心を寄せるのは、ビールメーカーばかりではない。飲料や乳業、食品メーカーも需要取り込みに意欲をみせている。
日本人が古代から親しんできたサクラの花見の季節は、ビールメーカーや飲料・食品メーカーにとって稼ぎ時。さらに近年は訪日外国人客の観光の目玉として人気を集めている。
観光庁によると、2016年4月の訪日外国人数は208万1697人で、夏休みの7月(229万6451人)、中国の国慶節がある10月に続き年間3位(213万5905人)。また、16年の訪日外国人客の旅行消費額を見ると、花見シーズンの4―6月は9534億円で、7―9月の9716億円に次ぐ規模。メーカー各社の営業にも力が入る。
アサヒビールはサクラの開花時期に合わせて全国の10地区ごとに発売日を変えた特別デザイン缶やキャンペーンパックを発売。3月末までの売上数量は74万ケース(1ケースは大瓶20本換算)に達し、4月末の目標70万ケースを上回った。上野駅などサクラの名所に通じるターミナル駅にラッピング広告も展開してアピールする。缶チューハイや第三のビール商品も好調という。
キリンビールは電子商取引大手のアマゾンと組んで、インターネットで「エア花見まつり」を実施。花見には行きたい、でも寒かったり雨に降られたり、トイレに並ぶのは嫌だ。
こんな人のために桜並木のタペストリーやイルミネーションサクラ、お花見気分に浸れるパラソル、ちょうちん、花吹雪などの室内グッズを販売し、家での仮想花見に「一番搾りビール」を飲んでもらう仕掛けだ。
花見需要に関心を寄せるのは、ビールメーカーばかりではない。緑茶飲料大手の伊藤園は主力商品「お〜いお茶」で、サクラパッケージの期間限定商品を発売。濃い茶や絶品ほうじ茶など他商品でもサクラパッケージを展開。日本さくらの会が選定した“さくら名所100選の地”を紹介している。「花見も緑茶も日本人の習慣というイメージが強い。販売増につなげたい」(同社)と意気込む。
明治は“おつまみ”や“弁当”に着目。酒を飲むと塩味が強い食品を食べたくなるのは、アルコールの利尿作用で塩分が体外に排出されるため。同社の「明治北海道十勝スマートチーズ」はうまみ成分を強めて、少ない塩分でも塩味を感じられ、「ヘルシーなおつまみでお勧め。花見期間中、ホームページでスマートチーズ活用レシピを公開している」(同社)。
夢の街創造委員会(大阪市中央区)が運営する出前総合研究所では、スマートフォンの高度化を背景に花見客による出前注文が増えている。花見客への出前は、客のいる場所がわからない、代金でトラブルがあるというイメージが強かったが、全地球測位システム(GPS)の発達や「出前業者がクレジット決済サービスを導入しているため、スマホ決済できる利用例が増えてきた」という。
(文=嶋田歩)
日本人が古代から親しんできたサクラの花見の季節は、ビールメーカーや飲料・食品メーカーにとって稼ぎ時。さらに近年は訪日外国人客の観光の目玉として人気を集めている。
観光庁によると、2016年4月の訪日外国人数は208万1697人で、夏休みの7月(229万6451人)、中国の国慶節がある10月に続き年間3位(213万5905人)。また、16年の訪日外国人客の旅行消費額を見ると、花見シーズンの4―6月は9534億円で、7―9月の9716億円に次ぐ規模。メーカー各社の営業にも力が入る。
アサヒビールはサクラの開花時期に合わせて全国の10地区ごとに発売日を変えた特別デザイン缶やキャンペーンパックを発売。3月末までの売上数量は74万ケース(1ケースは大瓶20本換算)に達し、4月末の目標70万ケースを上回った。上野駅などサクラの名所に通じるターミナル駅にラッピング広告も展開してアピールする。缶チューハイや第三のビール商品も好調という。
キリンビールは電子商取引大手のアマゾンと組んで、インターネットで「エア花見まつり」を実施。花見には行きたい、でも寒かったり雨に降られたり、トイレに並ぶのは嫌だ。
こんな人のために桜並木のタペストリーやイルミネーションサクラ、お花見気分に浸れるパラソル、ちょうちん、花吹雪などの室内グッズを販売し、家での仮想花見に「一番搾りビール」を飲んでもらう仕掛けだ。
花見需要に関心を寄せるのは、ビールメーカーばかりではない。緑茶飲料大手の伊藤園は主力商品「お〜いお茶」で、サクラパッケージの期間限定商品を発売。濃い茶や絶品ほうじ茶など他商品でもサクラパッケージを展開。日本さくらの会が選定した“さくら名所100選の地”を紹介している。「花見も緑茶も日本人の習慣というイメージが強い。販売増につなげたい」(同社)と意気込む。
明治は“おつまみ”や“弁当”に着目。酒を飲むと塩味が強い食品を食べたくなるのは、アルコールの利尿作用で塩分が体外に排出されるため。同社の「明治北海道十勝スマートチーズ」はうまみ成分を強めて、少ない塩分でも塩味を感じられ、「ヘルシーなおつまみでお勧め。花見期間中、ホームページでスマートチーズ活用レシピを公開している」(同社)。
夢の街創造委員会(大阪市中央区)が運営する出前総合研究所では、スマートフォンの高度化を背景に花見客による出前注文が増えている。花見客への出前は、客のいる場所がわからない、代金でトラブルがあるというイメージが強かったが、全地球測位システム(GPS)の発達や「出前業者がクレジット決済サービスを導入しているため、スマホ決済できる利用例が増えてきた」という。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2017年4月7日