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経産省と航空機大手が業界参入の「参考書」

中小サプライヤーに自立を求める
経産省と航空機大手が業界参入の「参考書」

部品サプライヤーを底上げすることで航空機産業の活性化を図る(川重の名古屋第一工場)

 経済産業省は三菱重工業川崎重工業IHI、富士重工業などと共同で、航空機部品産業への新規参入やビジネス拡大を目指すサプライヤー向けの「参考書」を作成した。大手各社が実際に運用するサプライヤー選定基準をたたき台とし、加工外注工程を一括受注・管理できる中核企業の能力要件なども盛り込んだ。部品メーカーの新規参入のガイドとするとともに、既存サプライヤーも底上げし、航空機産業を振興する。

 4社に加え、住友精密工業、ナブテスコ、ティ・エフ・マネジメント(愛知県春日井市)の協力を得て「航空機部品産業における生産管理・品質保証ガイドブック」を編集した。また、生産管理や品質保証で大手各社が重視する項目をチェックリストとしてまとめた。経産省はホームページ上で開示するほか、大学や高専などの教材としての活用も検討する。

 新規参入に当たっては“航空機産業へのパスポート”とも言われる品質マネジメント規格「JISQ9100」相当の能力が不可欠。このガイドブックを使えば、取得済みサプライヤーも自社の運用体制を確認できる。製造方法を一度決めたら変えないという「工程凍結」など航空機産業独特の規律も掲載した。

 航空機の部品点数は約300万点。産業のすそ野は広いが、極めて厳しい品質管理を要求される。巨額の開発費や初期投資回収には長時間を要し、健全な財務体質など相応の企業体力が求められる。 国内のサプライチェーンは機体やエンジン、装備品分野の大手各社が下請け企業を指導し、検査・品質保証を肩代わりする形で維持、育ててきた。

 航空機需要が拡大する中、大手各社も自前の生産基盤を強化し、米ボーイングなどからのコスト削減要求に応えつつ、事業継続計画(BCP)強化を迫られる。各社はサプライヤーの管理負担を軽減したいという思惑が一致し、サプライチェーンの実力を底上げする参考書作りで連携した。
               
日刊工業新聞2017年3月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
色々書いていますがひとことで言えば「中小サプライヤーに自立を求めている」ということです。特に日本の機体メーカーの業績を支えてきたボーイングの大型機「777」が最近は減産傾向にあり(月8・3機→月7機)、上場大手の収益も圧迫しています。いま日本の機体メーカーはサプライチェーンの効率化に必死です。経産省もサプライチェーンの「高度化」という旗の下に各社をうまくまとめあげている印象です。

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