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「ジャンボ機」時代の終焉 ボーイングが747生産中止を検討

中・小型機に需要がシフト
「ジャンボ機」時代の終焉 ボーイングが747生産中止を検討

離陸する747(ボーイングのプレスサイトから)

米ボーイングが“ジャンボ”の愛称を持つ大型機「B747」の生産中止を検討している。既に生産規模は月1機だけで、9月には0・5機に減らすことを決めている。500人超を運ぶB747は、日本の航空機大手が大量購入するなど一世を風靡(ふうび)した。だが中・小型機に需要の中心は移っており、役割を終えようとしている。

 ボーイングは1―6月期業績に合わせて米証券取引委員会(SEC)に提出した資料に、十分な受注を今後獲得できなかった場合、生産中止を検討すると記した。

 B747は1970年に商業運航し、6月末時点で1522機を納入した大ヒット機種。両翼に二つずつ、計4機のエンジンを備えた2階建てで、世界の主要都市を結ぶ長距離路線で活躍した。日本航空(JAL)、全日本空輸(ANA)も主力機として就航させていたが、JALは09年、ANAは14年に運航を終えた。

 月1機まで生産が落ち込んだのは、格安航空会社(LCC)の台頭により、中・小型機が主力になったからだ。B747は、長距離路線で一度に大量の乗客を運びたいという航空大手の需要に応えた。だが、LCCは中・短距離路線にひんぱんに便を運航することを求め、中・小型機を発注した。

 欧エアバスも7月、“空飛ぶホテル”の異名を持つ2階建て大型機「A380」の生産ペースを落とすと発表。18年の納入目標は12機で、15年の27機から大幅に減る。ただ、将来はハブとなる大型空港が増え、A380の需要は回復するとの見方を示している。

 大型機は不振でも、両社とも中・小型機では大量の受注残を抱える。ボーイングは17年に量産初号機を納入する次世代小型旅客機「737MAX」の受注残が3218機(6月末時点)、エアバスは新型小型機「A320neo」の受注残が3388機(同)となっている。受注残を消化するための増産対応が焦点となっている。

貨物型の受注が焦点


 B747が生産中止を免れるには、貨物機としての受注拡大が条件になる。貨物機型も提供しており、新型機「747―8」の6月末までの受注実績125機のうち、74機は貨物機型だ。

 7月にはロシアのヴォルガ・ドニエプル航空から、貨物機型20機の受注が確定。747―8の6月末時点の受注残が21機と少ない中、朗報となった。20年には貨物機の更新が始まるとみられ、それに合わせた受注を獲得できるかが問われる。

(文=戸村智幸)
日刊工業新聞2016年8月2日 機械・ロボット・航空機面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
エンジンが4基もある747やA380は、信頼性がある一方、運用コストが高くつきます。空の旅は747が登場した当時の「ぜいたくなもの」から、どんどん一般的なものになっており、小型機へのシフトは自然な流れですね。

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