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法規制をクリアしているのに倉庫火災急増のなぜ?

10年前の約3倍、アスクル事故受け国が調査
法規制をクリアしているのに倉庫火災急増のなぜ?

アスクルの火災は業界に新たな課題を投げかけた

 アスクルの物流センターであるALP首都圏の火災事故を受け、総務省・消防庁と国土交通省が全国の大規模倉庫の調査に乗り出している。ネット通販の急拡大で物流センターは増加する一方、大規模倉庫の火災もこの10年ほどで3倍に急増している。最新鋭の物流倉庫のリスク対策に死角はなかったのか、早急な原因の解明が求められる。

 総務省・消防庁によると、2011年―15年の5年間で起きた倉庫の火災件数は、年間約600―500件で推移し、15年に発生した倉庫火災は502件。総務省・消防庁と国交省が設置した有識者検討会が14日に開いた会議では、延べ床面積5万平方メートル以上の大規模倉庫の火災はこの10年で急増し、16年度は10年前の約3倍の150件となっていることが報告された。

 消防法ではスプリンクラーや消火器、自動火災報知設備の設置などを義務付けており、「倉庫の消防法令に基づく消防用設備等の設置基準の見直しは行っていない」(総務省・消防庁予防課設備係の担当者)。だが、アスクルの火災の原因究明の結果次第では、火災予防の仕組みの見直しが俎上(そじょう)にのぼる可能性もありそうだ。

 インターリスク総研の吉村伸啓(のぶひろ)上席コンサルタントは倉庫のリスク管理について(1)倉庫内に大量の可燃物を収容していることによる延焼(2)高積みした在庫による自動火災報知設備の散水障害(3)出入り口や窓などの建物の開口部が少なく消火しづらい建物構造(4)省人化による火災発見の遅れ―などの問題があると指摘する。その上で「日本は欧米に比べ、法令順守さえしていれば良いとの意識が産業界全体で強い」と警鐘を鳴らす。

 火災が発生したアスクルの物流倉庫も、スプリンクラーの設置など“法的にクリア”な倉庫。だが、初期消火できずに火災は延焼。窓や開口部が少ない建物構造によって直接の放水ができず消火活動が難航した。さらに倉庫に大量に保管していたスプレー缶に引火したとみられる爆発が起こり、鎮火までに12日間を要した。

 アスクルの火災を受けて総務省・消防庁と国土交通省は、全国の大規模倉庫を対象に防火対策の実態調査に乗り出した。全国の延べ床面積5万平方メートル以上の建物100カ所以上に立ち入り検査を行っている。調査を踏まえ、有識者検討会で対策を議論する方針だ。
日刊工業新聞2017年3月17日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
火災や事故によるリスクは、事業中断による自社の利益損失だけでなく、調達先や消費者などサプライチェーン全体にも影響をもたらす。依然、特定されていないアスクルの出火原因の早急な解明と再発防止策が待たれるととに、産業界で経営者自らが率先して事故対策に取り組むことが求められている。 (日刊工業新聞第ニ産業部・山下絵梨)

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