消防学校全55校にドローン配備、災害把握へ操作訓練
消防庁が今秋から無償で貸与
総務省消防庁は、地域の消防団が飛行ロボット(ドローン)を活用し、災害現場の状況を素早く把握できる体制を整える。秋以降に消防学校全55校にドローンを配備し、消防団員が操作訓練などを受けられるようにする。市町村による消防団向けのドローン購入も支援する。ドローンは迅速に稼働し、上空からの被災状況の映像などを伝送できる。消防団の情報収集体制を強化し、地域の防災力を高める。
消防団が災害時にドローンを活用し、上空から被災状況を素早く把握できる体制を整える。消防学校にドローンを無償で貸与し、消防団員がドローンの操作に慣れるよう訓練できる環境を整える。
無償貸与は秋にも始め、2019年度までに全55校に2台ずつ行き渡らせる予定。ドローンが災害現場で実際に利用できると市町村が判断した場合は、市町村が各消防団向けに購入する。総務省は地方交付税でその費用を支援する。
大規模災害時は道路が寸断され、消防署の消防士がたどり着けずに消防団のみで救助活動を始めるケースがある。地域の防災力を高める上で、消防団の災害対応能力の向上が不可欠となっている。
消防団には、地域に暮らす会社員などが参加する。災害時は自宅や職場から駆けつけ、消火活動や被災者の救助活動に当たる。全市町村が設置しており、全国で約2200団、消防団員は約86万人いる。
通信業界や自治体の間で、災害時における飛行ロボット(ドローン)の活用に向けて体制を構築する動きが広がっている。KDDIは携帯電話が不通になった地域で一時的に通話や通信を可能にするドローン基地局を開発した。また一部の自治体は企業と連携し、ドローンに搭載したカメラで被害状況を把握する体制を整備している。ドローンは迅速に稼働し、空路を利用できる。その特徴を生かした減災に対し、期待が高まっている。
KDDIのドローン基地局は、ドローンを中心に半径約1キロメートルの範囲で携帯電話を使えるようにする。陸路が寸断され、基地局を搭載した自動車がたどり着けない地域などでの利用を見込む。ドローンが継続して飛行できる時間は現在、30分程度にとどまるが「災害直後の安否確認に対応できる」(遠藤晃KDDI電波部マネージャー)。3月から全国10カ所に試験配備する。
災害が起きると、まず撮影用ドローンを使って基地局の被災状況を確認する。その映像を基にドローン基地局が必要と判断した場合、ドローン基地局を稼働する。将来は撮影用と基地局用のドローンを1台に統合する予定。また、ドローンが撮影した被災状況の映像は自治体に提供し、自治体の災害対応を支援する体制も整備していくという。
一方、三重県は災害時などにおけるドローン活用について、ブイキューブロボティクス・ジャパン(東京都渋谷区)と協定を締結。ドローンが撮影した映像を活用して被災状況を把握する体制の整備を進めている。2月には南海トラフ地震が発生した際に被害が想定される紀北町で実証実験を行った。
紀北町内の3カ所でドローンによる撮影を行い、その映像をウェブ会議システムを通じて紀北町や三重県の庁舎にリアルタイムに伝送した。
行政関係者が遠隔地から情報共有や意見交換を行い、即座に意思決定できることを確認した。三重県の鈴木英敬知事は「災害時は距離が離れた市や町の関係者と情報を共有し、次の対策を立てることが重要。(ドローンを活用した会議システムは)それに資する。4月以降に本格導入したい」と意気込む。
ブイキューブロボティクスは宮城県丸森町とも協定を結び、災害時におけるドローン活用の実証実験を行っている。今後は他の自治体にも同様の協定を広げていく。
国内では大規模災害が頻発しており、南海トラフ地震といった巨大地震の発生も想定されている。そうした災害による被害を少しでも抑制するためには備えを徹底することが肝要だ。ドローンはそのための重要なツールになりそうだ。
(文=葭本隆太)
消防団が災害時にドローンを活用し、上空から被災状況を素早く把握できる体制を整える。消防学校にドローンを無償で貸与し、消防団員がドローンの操作に慣れるよう訓練できる環境を整える。
無償貸与は秋にも始め、2019年度までに全55校に2台ずつ行き渡らせる予定。ドローンが災害現場で実際に利用できると市町村が判断した場合は、市町村が各消防団向けに購入する。総務省は地方交付税でその費用を支援する。
大規模災害時は道路が寸断され、消防署の消防士がたどり着けずに消防団のみで救助活動を始めるケースがある。地域の防災力を高める上で、消防団の災害対応能力の向上が不可欠となっている。
消防団には、地域に暮らす会社員などが参加する。災害時は自宅や職場から駆けつけ、消火活動や被災者の救助活動に当たる。全市町村が設置しており、全国で約2200団、消防団員は約86万人いる。
日刊工業新聞2017年3月7日
通信業界と自治体、連携体制の動き広がる
通信業界や自治体の間で、災害時における飛行ロボット(ドローン)の活用に向けて体制を構築する動きが広がっている。KDDIは携帯電話が不通になった地域で一時的に通話や通信を可能にするドローン基地局を開発した。また一部の自治体は企業と連携し、ドローンに搭載したカメラで被害状況を把握する体制を整備している。ドローンは迅速に稼働し、空路を利用できる。その特徴を生かした減災に対し、期待が高まっている。
KDDIのドローン基地局は、ドローンを中心に半径約1キロメートルの範囲で携帯電話を使えるようにする。陸路が寸断され、基地局を搭載した自動車がたどり着けない地域などでの利用を見込む。ドローンが継続して飛行できる時間は現在、30分程度にとどまるが「災害直後の安否確認に対応できる」(遠藤晃KDDI電波部マネージャー)。3月から全国10カ所に試験配備する。
災害が起きると、まず撮影用ドローンを使って基地局の被災状況を確認する。その映像を基にドローン基地局が必要と判断した場合、ドローン基地局を稼働する。将来は撮影用と基地局用のドローンを1台に統合する予定。また、ドローンが撮影した被災状況の映像は自治体に提供し、自治体の災害対応を支援する体制も整備していくという。
一方、三重県は災害時などにおけるドローン活用について、ブイキューブロボティクス・ジャパン(東京都渋谷区)と協定を締結。ドローンが撮影した映像を活用して被災状況を把握する体制の整備を進めている。2月には南海トラフ地震が発生した際に被害が想定される紀北町で実証実験を行った。
紀北町内の3カ所でドローンによる撮影を行い、その映像をウェブ会議システムを通じて紀北町や三重県の庁舎にリアルタイムに伝送した。
行政関係者が遠隔地から情報共有や意見交換を行い、即座に意思決定できることを確認した。三重県の鈴木英敬知事は「災害時は距離が離れた市や町の関係者と情報を共有し、次の対策を立てることが重要。(ドローンを活用した会議システムは)それに資する。4月以降に本格導入したい」と意気込む。
ブイキューブロボティクスは宮城県丸森町とも協定を結び、災害時におけるドローン活用の実証実験を行っている。今後は他の自治体にも同様の協定を広げていく。
国内では大規模災害が頻発しており、南海トラフ地震といった巨大地震の発生も想定されている。そうした災害による被害を少しでも抑制するためには備えを徹底することが肝要だ。ドローンはそのための重要なツールになりそうだ。
(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2017年3月3日