山形県鶴岡市が世界有数のサイエンスベンチャー拠点となった理由
【連載】挑戦する地方ベンチャーNo.14 YAMAGATA DESIGN
「圧倒的にリスクを取り続けていく集団」
16年12月5日。同社はサイエンスパーク整備事業で宿泊滞在複合施設の建築工事に着手した。約14ヘクタールの用地のうち約3万4600平方メートル部分に木造を主体とした客室棟はじめ温泉施設などを整備する。今後は子育て支援施設などの着工も控え、2018年の街開きと同時の開業を目指している。
宿泊滞在複合施設「サイエンスパークヴィレッジ(仮称)」の延べ床面積は約7500平方メートル。同施設の設計は建築家の坂茂氏が担う。客室棟は木造・RC造、地上2階建てで、客室150室を設ける。宿泊滞在複合施設エリアの総工費は約40億円を見込んでいる。起工式後の昨年末には、山形銀行、荘内銀行、鶴岡信用金庫の県内3金融機関と日本政策金融公庫山形支店による総額22億円の協調融資も実施された。
「庄内・鶴岡には若い人の挑戦を応援する素地がある」という山中社長。サイエンスパークは持続可能な社会を目指す場所であり、完成形はないのかもしれない。ただ今後もYAMAGATA DESIGNは地域からの挑戦を続けていく。社会的価値創造に向けて、「圧倒的にリスクを取り続けていく集団」(山中社長)としてこの地に根ざしていく考えだ。
「ぶれない行政の姿勢が良かった」
17年1月現在、慶応先端研発のVBは5社誕生している。そのうちの1社、2015年設立のメタジェン(鶴岡市)技術顧問で、VB支援会社のリバネス副社長でもある井上浄慶大先端研特任教授も、鶴岡に魅了された1人。自らは免疫の研究者で、社長の福田真嗣慶大先端研特任准教授のビジネスプランに共鳴し、京都から鶴岡に移住した。今では「鶴岡で起業しよう」と熱く人を呼び込む。鶴岡でのサイエンスパークは「ぶれない行政の姿勢が良かったのではないか」と指摘する。
鶴岡からヘルスサイエンス産業の創出を目指すメタジェンは、腸内細菌の解析によって健康評価・疾患予防を事業とする。ビジネス展開とともに、井上技術顧問は「小・中学生ら次世代の研究者を地域から生み出す仕組みづくりも欠かせない」と持続的な発展への基礎づくりも地域で取り組んでいる。
大都会ではでてこない独創技術が地方で生まれる。そして人が集まり、街が広がる。20年、30年先をにらんで鶴岡からの挑戦はまだ始まったばかりでもある。
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