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生涯正社員が不利になる時代

企業も従業員も国にも大きな足かせになる
生涯正社員が不利になる時代

今年の内定式


個人のライフステージに合わせた雇用選択に


 そうした中、個人としてはどのような働き方を目指していけばいいのか。それは自分のライフステージとマーケット環境から、最適な業界と雇用形態を選択できる仕組みとスキル得ることです。

 例えば新卒でまだビジネスのスキルや経験が低いうちは正社員として会社に所属し、業務の中で経験を積んでスキルを磨きます。ただ正社員なので会社から毎月の給与を保証される代わりに異動や転勤など会社からの要望にも答える必要があります。まだ単身者で若く伸びしろも、体力もある人が多いので、このような働き方が従業員、会社の利害が一致します。

 そして数年後、結婚し子どもが生まれたら、業務委託などの雇用形態に切り替えて子育てと仕事を行う。この頃には一定のスキルと経験があるので、会社も個人も成果物で握る業務委託での契約が可能になります。複数社と契約してもいいでしょう。

 そして、子育てが落ち着いたらまた正社員や契約社員として復帰するという選択肢や、起業という選択肢もありでしょう。子どもも独立し余裕が出てきたタイミングで親の介護が始まったらパートタイマーで働くのも有効かもしれません。

 この雇用形態の切り替え方はあくまで一例ですので、個人の能力や環境によって変わっていくと思いますが、リンダ・グラットンさんの言う人生100年の時代、20~80歳まで60年間働らき、それぞれライフステージも変化します。その変化に合わせて雇用形態をスイッチできることが人生の幅を広げます。

 この考え方の対極にあるのが、まさに高度経済成長時代に「大成功」した正社員として終身雇用で働くモデルでしょう。しかし人口構成が変化しマーケットの環境が一変した中、所属する一社に言いなりになって(家族や地域社会を顧みず)働き続けるのは人生全体でみると非常にハイリスクローリターンです。

 スキルや経験は無くとも単身である程度自由が効く若い頃は正社員の雇用形態がローリスク・ハイリターンですが、スキルも経験も溜まり、結婚・子育てや介護のなどライフステージが変化してくると、正社員の雇用形態から得られるリターンが少なくなってきます。

 企業側からしても、従業員のライフステージによってリスクとリターンのバランスは変化します。その変化に対応できるような柔軟な雇用形態を作れることが、これから迎える圧倒的な高齢化と労働力不足への対策なのだと思います。
(文=田鹿倫基)
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田鹿倫基
田鹿倫基 Tajika Tomoaki 日南市 マーケティング専門官
緩やかな人口増加と急速な生産年齢人口の増加社会だった日本の人口構造が大きく変りました。現在のゆるやかな人口の減少と急速な生産年齢人口の減少の日本において、個人の働き方、企業の雇用の形態は大きく変化を迫られてます。正社員の終身雇用制度が今後どのように変わっていくのでしょうか。

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