インバウンド消費、化粧品各社が“爆買い”一辺倒から軌道修正
メーカーによって温度差。国内の個人消費も変調
国内個人消費に力強さなく
個人消費が低調に推移する中で、日用品メーカー各社は、「高付加価値・高単価」の製品戦略へと変化している。例えば、歯周病予防をうたった歯磨き粉など、価値を付けた製品は高い価格設定でも競争力が強く利益を確保しやすい。ライオンの16年1―3月期決算は一般消費財の営業利益が前年同期比9倍に伸長した。濱逸夫社長は「高価格帯が市場をけん引した」と話す。
消費者の満足感を満たす情緒的な価値を付け、高価格で販売する化粧品も利益率が高い。化粧品メーカー各社も高級化粧品が伸長し好決算が相次いだ。
小売り各社、外国人・富裕層に陰り
小売り業界にも消費の鈍さが影を落としている。三越伊勢丹ホールディングス(HD)の大西洋社長は13日の日本百貨店協会会長就任会見で、消費を取り巻く環境について「年明けから悪くなっている。(今後も)今の状態が続く」と述べた。この中で、百貨店のビジネスモデル自体の変革が必要だとの見方も示した。
百貨店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアの3月の売上高はいずれも前年同月を下回った。これまでの「中間層の消費は低調だが、訪日外国人と富裕層の消費は好調」という構図に変化が起きている。訪日客の購入者数は増えているが、腕時計などの高額品から化粧品などの消耗品に人気が移っており、購入単価は下落傾向だ。富裕層の消費も株安の影響を受け、陰りが出ている。
訪日外国人。4月は「花見」で単月最高
日本政府観光局(JNTO)が18日発表した4月の訪日外国人数は、前年同月比18・0%増の208万1800人になった。3月に続き、4月も桜のシーズンで花見の訪日需要が高まり、単月で3月を超えて過去最高を記録。中国は高水準で増加が続いているものの、韓国は熊本地震の影響により、同16・1%増の35万3700人となり、14年8月以来、伸び率が10%台にとどまった。田村明比古観光庁長官は「韓国は九州への観光客が多く、影響が大きい。早期に関係省庁で連携して対応する」と述べた。
国や地域別では、中国が同26・9%増の51万4900人でトップ。2位は台湾で同14・6%増の38万4200人、3月に2位だった韓国は3位。熊本地震を受け、九州各地への直行便が一時運休となったことが影響した。4位はタイで、同11・1%増の13万1000人。長らく上位4カ国は中国、韓国、台湾、香港だったが、香港も熊本地震の影響で伸びが鈍化し、タイが牙城を崩した。
単月では台湾、タイ、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、フランスが過去最高を記録した。
日刊工業新聞2016年5月19日