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原油の国際相場、一進一退…「不確実性の高い材料が混在し、方向感を欠く」

原油の国際相場、一進一退…「不確実性の高い材料が混在し、方向感を欠く」

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2024年の原油の国際相場は需要が振るわない中、中東の地政学リスクや石油輸出国機構(OPEC)と非加盟国から成る「OPECプラス」の減産が相場を支えた。米国産標準油種(WTI)先物は4月上旬に年初来の最高値を付けた一方、9月上旬に最安値を付けた。日本総合研究所の松田健太郎副主任研究員は「不確実性の高い材料が混在し、方向感を欠く相場だった」と総括する。

原油の国際相場

イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海での商船攻撃やイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘激化、ロシアとウクライナ双方によるエネルギー施設の攻撃などが供給不安となり相場に上昇圧力をかけた。だが、中国の経済回復の遅れや米国の利下げ期待後退が需要減速懸念となり、年初から一進一退の展開となった。

4月上旬には中東の地政学リスクへの警戒感が高まり、バレル当たり87・67ドル近辺と年初来最高値を付けたが、米連邦準備制度理事会(FRB)の高官らが利下げに慎重な姿勢を示し相場の重しとなった。

6月以降も強弱の材料が混在する状況が続いた。OPECプラスの閣僚級会合で協調減産は25年末まで、自主減産の延長も決定し上昇圧力がかかった。ただ、8月と9月は中国と米国の経済指標が弱く、需要の伸び悩みが意識され9月10日に同65・27ドル近辺の年初来最安値を付けた。国際エネルギー機関(IEA)が24年の石油需要の伸びの見通しを下方修正したことも下押し圧力となった。

FRBが9月に続き11月も金利を引き下げると需要増加期待を生んだが、中国の景気刺激策期待が徐々に剥落し上値を同72ドル台後半に抑えた。11月後半からは同68―70ドル近辺で推移している。

松田氏は「25年にかけて米国の利下げは継続するだろう。ただ、米国も中国も力強い景気回復は見えにくい」と指摘。米国による対中関税引き上げで中国経済の鈍化懸念も予想され、「目先は下押し圧力がかかりやすい相場になるだろう」とみている。

日刊工業新聞 2024年12月25日

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