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脱石油の“抵抗勢力”と見られてきた中東で開催、「COP28」は大きな転換点になるか

脱石油の“抵抗勢力”と見られてきた中東で開催、「COP28」は大きな転換点になるか

COP28のジャベル議長は、世界全体の再生エネの導入量を30年までに3倍にすることを提唱している(イメージ)

国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)が30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで始まる。2035年の温室効果ガス排出量の削減目標が議論の中心となりそうだ。石油会社の経営者でもあるCOP28の議長は、30年までの再生可能エネルギー導入3倍の目標合意に意欲を見せる。脱石油の“抵抗勢力”とも見られてきた中東での開催が、脱炭素社会に向けた大きな転換期となる可能性を秘める。(編集委員・松木喬)

1.5℃達成へ目標強化要請

COP28は21年に開催されたドバイ万博の施設で開く。会場は東京ドーム93個分の438ヘクタールと広大。12月1―2日に首脳級会合(サミット)を開催する。会期は12日まで。

世界全体の温室効果ガス排出量削減の進捗(しんちょく)を点検する作業「グローバル・ストックテイク(GST)」が初めて実施される。温暖化対策の国際ルール「パリ協定」は、5年ごとに排出削減目標を更新する決まりがある。各国はGSTの結果を受けて自国の目標を再検討し、25年中に目標を再提出する。日本は30年度までの13年度比46%削減の目標を修正するのか、判断を迫られる。

COP28の主な注目ポイント

すでにGSTの結果が公表されており、21世紀末の世界平均気温は産業革命前と比べ2・2度―3・5度C上昇すると予測する。COP28では、GSTの結果を政治的な文書としてまとめる交渉となる。世界目標である「1・5度C」とかけ離れているため、各国に目標強化を求めるメッセージを書き込むが、どこまで踏み込むかが焦点だ。

科学者が温暖化を評価する国連機関「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、1・5度C達成のために35年には19年比60%削減する必要があると分析する。文書に強制力を伴う表現で「35年60%減」と書き込むと“事実上の世界目標”となるため、各国の駆け引きが予想される。

主な国・地域の削減目標

5月に広島市で開かれた先進7カ国首脳会合(G7サミット)では「35年60%削減の緊急性が高い」と確認された。エネルギー政策に詳しい国際大学の橘川武郎学長は「『35年60%減』は、G7議長国の日本が国際公約した数値」と解釈する。だが、国内事情で言えば削減目標の根拠となるエネルギー基本計画は30年度しか決まっていない。35年度の計画を持たない日本が「35年60%減」に賛同できるのか不透明だ。

30年「再生エネ3倍」、各国に合意迫る

また、COP28のスルタン・アル・ジャベル議長(UAE産業・先端技術相)は、世界全体の再生エネの導入量を30年までに3倍にすることを提唱している。各国に合意を迫ると思われるが、エネルギー基本計画は30年度までに再生エネを倍増させる計画なので、日本の対応が試される。

“防戦”が予想される日本だが、交渉に参加する政府関係者は「排出量を13年度比20%削減した日本は、1・5度C達成に必要な削減ペースに乗っている。高い野心(目標)だけ掲げ、目標を達成できない国とは違う」と実績を主張。その上で、すべての国が25年までに排出量を減少に転じさせることや、新興国にも1・5度C達成と整合した目標設定を呼びかける。念頭にあるのが、排出ゼロ達成時期を60年にしている中国だ。

また、日本国内では23年度中に次期エネルギー基本計画策定に向けた議論が始まる見通し。「35年60%減」や「再生エネ3倍」が事実上の世界目標となると、国内の議論にも影響を与える。企業は対策の強化が要請されることを前提とした経営戦略を練る必要がある。

【ジャベル議長とは…】異例、石油会社の経営者

COP28は、ジャベル議長の経歴にも視線が集まる。再生エネで電力を賄う最先端環境都市「マスダール」の創設者であり、政府の要請でアブダビ国営石油会社の最高経営責任者(CEO)に就いた人物だ。石油会社トップが議長を務めることで気候変動対策が停滞するという批判があったが、「再生エネ3倍」や「エネルギー効率2倍」を提唱し、賛同を求める書簡を各国に送るなど精力的に準備してきた。

また、フランシスコ・ローマ教皇のCOP28への招聘(しょうへい)にも成功した。ローマ教皇のCOP出席は初めてであり、世界各国の首脳も会場に駆けつけると思われる。

インタビュー/サウジ連携で成果大きく

ジャベル議長の人物像や中東で開催するCOP28の見通しについて、UAE政府に勤務経験を持つ元国連気候技術センター・ネットワーク副所長の待場智雄氏(ゼロボード総研所長)に聞いた。

―産油国のUAEにとって、脱炭素は逆風では。

「UAEの国内総生産(GDP)に占める石油の比率は3割。産業を多様化して金融や高度な加工貿易の比率を高めてきたため、脱炭素を恐れていないのでは。日本は輸入する原油の4割をUAEに依存しており、COP28の動向にもっと関心を持ってよいのではないか」

元国連気候技術センター・ネットワーク副所長の待場智雄氏

―ジャベル議長はどのような人物ですか。

「スピーチがうまく、行動力がある。CEOを務める石油会社は国の命運を担う。UAEの貧しい首長国の出身でありながら、手腕が評価されてトップに就いたのだろう。COP28でも大統領から全権を任されている可能性がある」

―気候変動の国際交渉ではサウジアラビアが中東の産油国のまとめ役です。COP28を成功させるには、サウジとの関係もカギでは。

「サウジの皇太子とUAEの大統領は親密と言われている。また、サウジも再生エネを導入した巨大都市を開発中だ。中東の国同士であり、サウジを引き込めると他国の議長ではできなかった大きな成果を上げられるかもしれない」

―日本への期待は。

「日本はG7議長国としての発言となる。各国の首脳級も参加する中で、岸田文雄首相が出席した場合、新しい発信に期待がかかる。ジャベル議長は『再生エネ3倍』の合意にこだわっており、日本の対応に注目だ」

日刊工業新聞 2023年11月28日

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