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“柔らかいロボット”に効果、ブリヂストン社内ベンチャーが「ゴム人工筋肉」で切り開く市場

“柔らかいロボット”に効果、ブリヂストン社内ベンチャーが「ゴム人工筋肉」で切り開く市場

モーフではバーチャル森林浴などを組み合わせて「無になる時間」を提供した

ブリヂストン社内ベンチャーのブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズは、タイヤやホースの開発・生産で培ったノウハウを活用した「ゴム人工筋肉」でウェルビーイング(心身の幸福)市場を切り開く。ゴム人工筋肉を用いて利用者の体を包み込む“柔らかいロボット”として「Morph(モーフ)」「umaru(ウマル)」を展開。外部の企業などと連携して実証実験やサービスを展開する。暮らしの合間に心が和らぐ体験を提供し、ウェルビーイング実現に貢献する狙いだ。(間瀬はるか)

モーフでは7者と協業し「無になる時間」を体験できる専用店舗を東京・下北沢に期間限定で開業した。モーフはクリエーター集団のKonel(東京都中央区)と共同で開発。ゴム人工筋肉に生物の呼吸など約30種類の自然の動きを収録し再生する。利用者は布団のようにロボットに包まれ、身を委ねることで「無」の時間を過ごせる。

同店舗ではモーフ体験中を「無中」とし、その前後を「無前」「無後」としてコンセプト化。全体で30分前後の体験を利用者に提供した。体験の一例として「無前」では第一三共ヘルスケアのスペシャルドリンクを飲み、無を深める。「無中」ではNTT東日本などによるバーチャル森林浴の映像を投影し安らぐ空間を演出。「無後」では京王電鉄などが運営するワークスペースで作業に没入できるようにした。

ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズの音山哲一最高経営責任者(CEO)は「『無』をビジネスチャンスとして捉えてもらったことで体験価値をしっかりと作り込めた」と外部との共創の効果を語る。今後、体験する空間なども含めてさらに作り込む方針で共創を加速する。

一方、ウマルでは長谷工コーポレーションと組み、初めて一般の生活空間で実証実験を実施した。ウマルはゴム人工筋肉を編み込んだハンモック形状をしており、体が沈むように動く。3分半の体験で、手軽かつ気軽にリフレッシュやストレス解消ができる。

長谷工コーポが運営する共創型レジデンス「コムレジ赤羽」(東京都北区)の共用スペースに設置。ウマルの体験をきっかけに居住者同士の交流につながるかどうかを検証した。中間結果では帰宅時間帯の20―21時の体験者が多く、約95%が気分転換を実感。約55%が体験後に誰かと話したくなる「社交性の促進」の効果を感じたと回答したという。

共創型レジデンスに設置したウマル。心の和らぎと交流を生み出す効果を検証した

音山CEOは「心が和らいだ後に自然と会話が生まれる、活力を見いだすような体験にしたい」と狙いを説明する。今後も改良を進めるとともに、オフィスなど日常の中に「ふと現れる心のよりどころ」を目指して、さらなる実証を検討する。

ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズは今回のウェルビーイングのほか、ゴム人工筋肉を用いた柔らかいロボットハンドを製造現場や物流現場に提案する事業も展開。大企業の新規事業の立ち上げを伴走支援するコンサルティングにも力を入れ、ソフトロボティクスの本格事業化に向けて着々と歩みを進める。

日刊工業新聞 2024年12月23日

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