NTTから取得「通信鉄塔」外資流出の懸念受け説明、JTOWER「安定利用確保」
JTOWERの中村亮介副社長はNTTグループから取得した通信用鉄塔について「長期の設備利用契約を結んでいる。我々から設備の撤去や解約ができない」と述べ、安定的な継続利用が契約で確保されているとした。米デジタルブリッジグループによるJTOWERへのTOB(株式公開買い付け)成立で、NTTが持っていた鉄塔が外資に流出する可能性を懸念する意見が一部の通信大手から出ていたが、「株主が外資に変わるから運営体制も変わるわけではない」と指摘する。(編集委員・水嶋真人)
デジタルブリッジグループは世界有数のデジタルインフラ投資会社。中村副社長は「10カ国弱の鉄塔会社などに出資しており、日本を含む各国で外資規制をクリアしている。そうした面も含めて今回のTOBに至った」と話す。
通信設備の共用サービスを手がけるJTOWERは2012年に創業。18年に鉄塔シェアリングサービスに本格参入。24年9月末までにNTTドコモから7002本、NTT東日本とNTT西日本から87本の鉄塔の移管を終えた。このため、例えばNTT東西の局舎の屋上にJTOWERの鉄塔があった場合、外資が局舎に立ち入るといった「日本の重要インフラが外資による脅威にさらされないよう(NTT法などの)制度の強化が必要だ」(高橋誠KDDI社長)との意見が出ていた。
これに対し、中村JTOWER副社長は「局舎はNTT東西の資産で彼らの管理下にある。鉄塔がある屋上に立ち入る際はNTT東西からの許可や立ち会いが必要となる。当社が自由に屋上に出入りすることはできない」と説明した。
一方、デジタルブリッジグループ入りを決めた理由については「屋内通信インフラシェアリング(IBS)の需要が急増している。国内の鉄塔も万単位で存在する。携帯業界の競争の軸がフィンテック(金融とITの融合)や人工知能(AI)になる中で拡大する通信インフラ共用需要を取り込む投資が必要になる」と指摘。さらに「シェアリング領域の高度化に向けた技術開発や人材への投資に向けても安定した資金提供パートナーが必要だった。デジタルブリッジグループが国際規模で持つ鉄塔会社の運用に関する知見も取り入れたい」とした。
IBS事業は、商業施設やオフィスビルなどにある第4世代通信(4G)用通信設備の更新案件を中心に案件獲得から受注までのパイプラインを新たに約300件獲得。鉄塔シェアリング事業でも「KDDIと7月に通信インフラの安定的な運用と効率的な維持管理に向けた共同検討に関する覚書を結んだ。人口減が進む中、共用による統廃合で鉄塔運用の効率化を中長期的に進める」(中村副社長)。26年度までに4G設備の国内IBS事業で導入物件1000件、タワー1万本の取得を目指す。