富士通・NEC…変貌遂げるIT業界の景観、本社移転・親子上場解消
“デジタル変革(DX)×人工知能(AI)”のうねりの中で、日本のIT業界の景観が変貌を遂げつつある。景観とは主戦場となるビジネス拠点やジョブ型人事などの働き方の変革から、親子上場の解消などの企業統治まで多岐に及ぶ。IT各社の多くは日本企業が抱えるデジタル化の遅れなどの「2025年の崖」に自らも向き合う中で、24年は積み残していた課題にけりを付ける1年でもあった。
景観の変化といえば司令塔である本社の移転。1月に日本IBMが虎ノ門ヒルズステーションタワー(東京都港区)に本社を移転した。先進ITを体感できる「イノベーション・スタジオ」には360度スクリーンによる没入型体験空間などもあり、近未来感が漂う演出が話題だ。
富士通は川崎工場(川崎市中原区)を「富士通テクノロジーパーク」として改修。9月末から本社機能を順次移転し、新たなスタートを切った。大手2社が本社を相次いで移転するのは珍しいが、背景にはリモートワークとオフィス勤務を融合したハイブリッドな働き方の定着がある。
NECは本社に変更はないものの、1部上場のNECネッツエスアイの完全子会社化を決めるなど経営改革を加速している。すでに日本航空電子工業も連結から外れており、25年中にはNECグループとしての親子上場問題はすべて解消する。
富士通も上場連結子会社の新光電気工業の売却を決めている。今夏とみられていた産業革新投資機構(JIC)によるTOB(株式公開買い付け)の時期がずれ込んだ格好だが、25年3月末までに完全売却する考えは崩していない。
こうした変化の中で注目されるのは富士通、NEC、日本IBMの経営トップの去就だ。就任したのは時田隆仁富士通社長と山口明夫日本IBM社長が19年、森田隆之NEC社長が21年。従来ならば次期候補が見えてくるころだが、景観の変化とは裏腹にその動きはなく、いずれも長期政権が続きそうだ。