水素化物を1段階で生成、KRIが開発した新技術の仕組み
KRI(京都市下京区、重定宏明社長)は、有機化合物の基質を1段階のプロセスで低コストに水素化できる技術を開発した。バイオマスと固体触媒を活用し、100度C程度の水中で撹拌する工程のみで実現できる。ニトロ化合物の水素化など水素化物の生成コスト削減や、食品残さなどバイオマスの利用拡大が期待される。化学メーカーや食品メーカーなどと連携し、触媒性能を高める基礎研究を続けて実用化につなげる。
新技術はバイオマスの主要成分の一つであるセルロースを溶解した上で、特定の金属ナノ粒子と粘土鉱物を組み合わせた固体触媒とともに、100度C程度の水中で撹拌する。これによりセルロース中の水素が基質に移動し、水素化物となる。でんぷんなどでも適用可能。今後はキチンなどでも適用可能かどうか研究を進める。実用化できれば木材や古紙、衣類などの再利用促進が期待される。
水素化反応は、油の硬化や医薬中間体の製造など幅広く産業利用されている。近年、それらで使う水素を化石由来でなくバイオマス由来で調達する技術が注目されている。
一般的にバイオマスから水素を製造する場合、700度C超の加熱で炭化水素やタールにした後、加熱水蒸気と反応させるなど、複数段階のプロセスが必要となる。その過程では二酸化炭素(CO2)などの副生も伴う。
新技術は、より低エネルギーで実現でき、基本的にCO2も副生しない。類似事例もあるが2段階のプロセスが必要とされ、新技術ではこれより少ないプロセスで低コスト化が見込める。
KRIは大阪ガス子会社で、受託研究開発を手がける。バイオマスの溶解技術はKRIが独自開発し、すでに実用化されている。その溶解技術をベースに独自の固体触媒を用い、新技術を開発した。今後は企業から受託研究を募集し、触媒性能を高める研究を続ける。将来は、バイオマスから1段階のプロセスで水素を製造する技術の開発も目指す。