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空の安全“急上昇”…JALが実感、航空整備DXの成果

航空機整備DX #1
空の安全“急上昇”…JALが実感、航空整備DXの成果

タブレット端末で情報を確認し事務仕事の時間を短縮。整備に集中できる時間を増やす

端末で事務作業効率化

航空機の整備士の働き方がデジタル変革(DX)で変わってきた。マニュアルなどの膨大な紙の資料はタブレット端末に変わった。量子コンピューティング技術を使い複雑な整備計画を一瞬で策定したり、部品の稼働状態のデータから不具合の予兆を見つけたりすることも可能になってきた。数年来のDXの取り組みの成果が出てきている。

専用アプリに動画、情報共有

「コロナ禍で国際線機材が減り、少ない機材でコロナ前とほぼ同じ便数を飛ばしているため、航空機が地上にいる時間は短く、整備機会は減っている」。JALエンジニアリング(東京都大田区)羽田航空機整備センター企画・計画グループの中谷浩彰グループ長は足元の状況をこう説明する。時間に対する緊張感は以前にも増して強まっている。

整備士の仕事は、航空機を点検して通常と異なる部分を見つけて対処して安全運航を支えることだが、これに付随する書類の整理やデータ入力などもかなり多い。そこで付随する仕事をデジタル技術で効率化し、「整備」に集中して航空機の品質を高めるためにJALエンジが始めたのが、「SMART」プロジェクトだ。

同社はまず2017年に整備士のオフィス業務を現場で行うためのモバイル端末の整備専用アプリケーションを導入した。各航空機の整備履歴をはじめ複数のシステムに格納されたさまざまな情報を一元的に表示でき、写真や動画の共有もできる。「必要な部品の依頼や仕事終了の連絡もタッチ一つだ」(ITデジタル推進部の高木哲マネジャー)。

モバイル端末でできる業務を少しずつ増やし、現在はメーカーのマニュアルも閲覧できる。航空機の飛行情報や不具合の修復情報などを記録するログブックを紙から電子データに切り替える認可を日本で初めて取得し、19年にエアバス350型機で利用を開始した。

従来は現場に出た後のオフィスとの連絡手段は無線だけ。急にマニュアルなどの書類が必要になった場合は、オフィスにいる整備士に連絡して印刷して届けてもらったりしていた。モバイル端末とアプリを活用すれば、時間を有効に使える。

「1人が1日に担当する整備の件数も増やしたい。コロナ禍の期間は便数が減って分かりにくかったが、今は効果が出てきた実感がある」と、中谷グループ長は手応えを語る。

今後、政府の目標通りにインバウンド(訪日外国人)が増加すれば、整備業務は今以上に繁忙感が増す。DXの効果を高める必要がある。

日刊工業新聞 2024年11月19日

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