協働ロボット普及加速… 主要工作機械メーカー、提案力を世界に届けられるか
協働ロボットの普及への機運が高まっている。東京都内で5―10日に開かれた日本国際工作機械見本市(JIMTOF)では、ツールや加工対象物(ワーク)を機械に装着・回収するロード・アンロードの自動化として、主要工作機械メーカーが実機を並べて提案。ユーザーにとっては工作機械メーカーにシステム構築まで託せる。一方、メーカーにはロード・アンロードだけでは差別化が難しくなる。次の競争はどこか。(小寺貴之)
「ユーザーもシステムインテグレーター(SIer)も人手不足。工作機械メーカーが自動化を提案するのは時代の要請」。オークマの金本克己ソリューション&システム技術部長は断言する。JIMTOFでは各社がファナックの協働ロボ「CRX」を並べてデモを披露した。
いずれもCRXを搭載した台車を工作機械に横付けしてロード・アンロードを自動化する内容だ。完全自動化ではなく、負荷の高い装置を一時的に自動化する用途を狙う。昼は人手で一品モノを生産し、夕方から朝まで量産品を生産するなどの運用が可能になる。多品種少量生産と量産を両立させ、中小企業には自動化の入り口とも言える提案になった。
展示企業の大半が自社によるシステム構築を提案している点も特徴だ。大阪工業大学の井原之敏教授は「ユーザーにとっては楽になる。協働ロボのセットアップが簡便になった証拠」と目を細める。
一方で工作機械メーカーはどこで差別化していくのか。DMG森精機やオークマなどは複合加工機による工程集約を提案。工作機械複数台分を1台の複合加工機に代え、自動化と組み合わせて効率を高める。住友重機械ファインテック(岡山県倉敷市)は、研削かすなどのスラッジの処理も自動化。協働ロボが掃除用ブレードを持って研削ステージを清掃する。小松圭介担当課長は「現場の汚い部分も解決しないといけない。メーカーのノウハウを自動化できるかが勝負」と説明する。
ファナックは加工後の検査も自動化する。加工後のワークを洗浄し、ピンゲージに刺して穴径、マイクロメーターで外径を測るシステムを提案する。切り粉カートの搬出や複数台連携など、ラインビルダーを志向するメーカーもある。
工作機械にとって自動化は古くて新しい課題で目指すところは多様だ。共通するのは無人での稼働時間が延びるほど加工精度が重要になる点。オークマの金本部長は「人が見て調整しなくても精度を維持できなければならない。長時間安定して稼働するという工作機械の本質が問われる」と指摘する。自動化は国内工作機械メーカーの強みと相乗効果がある。この提案力を世界に届けられるか注視される。