コロナワクチン不安解消…米モデルナ、日本での接種向上へ対話強化
米モデルナは日本でのワクチン接種率向上を目指し、医師など専門家との対話を強化する。新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが高いとされる高齢者などを対象に、日本でも10月から65歳以上の人らを対象とした定期接種が始まった。モデルナは医師をはじめとした専門家を通じてワクチンへの不安解消に取り組み、日本での感染拡大の予防、さらには事業成長につなげる狙いだ。
モデルナが7日に発表した2024年第3四半期決算によると、改良型の新型コロナワクチンの売り上げが想定を上回り、純損益が1300万ドル(約20億円、前年同期は36億3000万ドルの赤字)に黒字転換した。特にグローバルの売上高18億ドルのうち12億ドルを占める米国では、医療体制の整備や65歳以上が無償接種の対象といった国策も後押しし、米国での市場シェアを40%に伸ばした。
一方、日本の接種率は伸び悩む。モデルナ・ジャパンが1242人を対象に実施した調査では、70%が新型コロナ感染症を脅威に感じているものの、ワクチン接種意向は21%に留まるという。
モデルナは新型コロナ流行株への対応やインフルエンザとの混合ワクチンの開発など継続的な開発投資を実施する。患者との関わりが深い医師に向けた情報発信の強化でワクチンに対する不安解消に取り組むことが、日本でワクチン事業の長期的な成長のカギとなる。
インタビュー/チーフ・メディカル・アフェアーズ・オフィサーのフランチェスカ・セディア氏 mRNA技術で治療ニーズに選択肢
モデルナでチーフ・メディカル・アフェアーズ・オフィサー(CMAO)を務めるフランチェスカ・セディア氏に、日本での方針などを聞いた。(安川結野)
―ワクチン接種の重要性をどう捉えていますか。
「ワクチン接種の推進には、より良い理解が必要だ。新型コロナ患者の急増は起きていないが、感染のピークを迎えたときに、ワクチン接種が進んでおらず重症化のリスクから患者が守られていないという状況を避けたい。日本は高齢者人口も多く、ワクチンによる予防は特に重要だ」
―日本でどのようなことに取り組みたいですか。
「患者個人とのコミュニケーションで重要な役割を担うのが医師だ。患者の疑問に対して正しい情報を伝えられるよう、医師など専門家へ働きかけたい。専門家のワクチンに対する価値の認識が深まれば、一般の方にも浸透していくと期待している」
―新型コロナワクチンに続く開発品は。
「呼吸器領域の開発優先度は継続して高い位置付けにある。また、グローバルで開発中のサイトメガロウイルス(CMV)感染症ワクチンについては、第3相試験の中間解析の結果が25年にも発表できるとみている。メッセンジャーRNA(mRNA)はがん領域での活用にも期待は高く、皮膚がんを対象とした米メルクとの共同研究も進んでいる。治療ニーズを満たしていない疾患に対して、mRNA技術活用の可能性はあると考えている」